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バケモノが愛したこの世界  作者: 一一
第4章 ???編

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69/100

束の間の休息

はいどうもニノハジです〜

タイトル通りお休み回となります!

話はあまり進みませんが楽しんでもらえたら嬉しいです!

ではどうぞ!

「暑い……」

 デミーラ共和国に降り立って、レイが最初に抱いた感想がこれであった。

 ズィーア大陸やテデア大陸の気候に合わせた服装のままだったレイ。

 そんな彼女の額に汗が滲む。


 ここオスウェルド大陸は今までの大陸と違い、温暖な気候が常に続く場所である。

 乾燥する程気温が高い訳でも無く定期的に雨も降り、実際樹海に足を踏み入れればかなりの蒸し暑さに襲われる。

 しかし沿岸部の開発された場所では快適な環境が広がり、カラッとした気候に気分も晴れやかになる、そんな空気感が出迎える。

 リゾート地として栄えたのも頷ける環境であった。


 しかし現在は浜辺で遊ぶ人は見受けられず、よく見れば立入禁止の文字と共にビーチ周辺は封鎖されている。


(例のバケモノの影響かしら。観光していると思しき人も見受けられない。皆()()に集まって来ているわね)

 そんな事を考えながら振り返るレイ。

 視線の先には積荷を運ぶ人々、そしてそれ以上の観光客と思われる人々が乗船場所に集まっていた。


「ちょっと!割り込まないでくださる!?」

「うるさい!私達はもうここに1週間も滞在させられているんだぞ!?一刻も早く帰らなければ!」

 そんな喧騒(けんそう)がレイの耳に届いてくる。


(向こうに送る積荷の分、乗員の制限の所為で暴動が起きかけてる。何とかしたいけれど……)

 今も乗船場所には人がどんどんと集まっており、人で溢れかえりそうになりつつある。

 このままでは怪我人も出てしまう、そうした懸念から引き返しそうになるレイだったが。


「行きましょう。このままでは人の波に呑まれて動けなくなる。今、完全な部外者である私達にはどうする事も出来ません」

「……そうね。今は私達の出来ることをやりましょう」

 ニイルの言葉で再び歩き出す。


 たった今この地に降り立った自分達が何を言おうと、火に油を注ぐ事になりかねない。

 暴力沙汰になっているのならまだしも、そこまでの事態に陥っていない以上、当事者間の話し合いで解決するのが1番早いだろう。

 そう考え、レイ達はその場を後にするのだった。



 レイ達一行が最初に足を向けたのは冒険者ギルドだった。

 この付近に何が有るのかすら知らない状態である。

 情報収集も兼ねてディード・ホグウェルの所在を訊こうとの考えだった。


「失礼。今日この地にやって来た者なのですが、少々お話よろしいでしょうか?」

「あら、()()()()なのね。ようこそ!冒険者ギルドデミーア共和国支部へ!」

 受付に座っていた獣人の女性に話し掛けるニイルに、受付嬢は笑顔で対応する。

 しかしその言葉の中に気になる単語があったのを、ニイルは聞き逃さなかった。

「も?も、と言うのは?」


 それに受付嬢はあぁ、と先程の事を思い返す様に話す。

「えっとですね、今朝の便でやって来たっていうパーティが、もう既に何組かここに来られてましてね?私達としてもとても助かっているんですよ」


 その言葉にレイは思い出す。

 自分達が乗ってきた船にも、何組か冒険者らしい格好の人物が居た。

 彼等も様々な思惑はあれど、レイ達と同じ様な考えだったらしい。


「ここ最近は魔獣の出現頻度も上がってたので、人手が欲しいと思ってたところなんです。お金稼ぎで来ているとしても、それで助かってるのは事実なんですよ」

 受付嬢も察しているのか苦笑いでそう話す。

 純粋にこの国を助けようと考えているのは、レイ達含め極小数だと分かっているのだろう。

 それに思うところは有るが、今は言っても詮無き事と気持ちを切替えるレイ。


「確かに、海での魔獣討伐の依頼がかなり来ていますね。いつもこんな調子なのですか?」

 ニイルが依頼書の一覧を見てそう問い掛ける。

 レイも見れば確かに、海関連での討伐依頼の数がかなりの量寄せられていた。

 それに困惑した表情を浮かべ受付嬢が答える。

「いえ、普段はそんな事は無いんですが……丁度バケモノ騒動が出た辺りから一気に増えたんですよ。一部ではこれが原因なんじゃないかとも噂されてる位多いらしくて……」

「なるほど……」


 その返答に何か思案するニイル。

 そのまま黙り込んだニイルを置いて受付嬢が話を進める。

「でも!こうして皆さんが来てくれたお陰で少しは状況も好転すると思います!今日は他の皆さんがもう討伐に向かったので大丈夫ですけど、ここ最近は毎日出現しますので!皆さんには明日から依頼をこなしていただければと思います!」

 なので今日はゆっくり観光を楽しんでください、とにこやかに(つげ)られるのだった。



「ここね」

 ギルドで得た情報を元に次に向かったのは住宅街。

 その中でも一際大きい屋敷の前に来ていた。


「まさか一国の主が城じゃなく、こんな所に住んでいるなんてね」

 レイが周囲を見回してそう呟く。

 確かにこの辺りでは1番大きい建物だがそれでも屋敷の範疇に収まり、到底城と呼べる物では無い。

 小さい国だったフィミニアでも立派な城が有りスコルフィオが住んでいた事から、ここもてっきり城が存在するとばかり考えていたのだ。


「しかしどうやら場所はここで合っている様ですね。中からかなりの人数の気配を感じます」

 歩を進めながらニイルはそう答える。

 レイも改めて気配を探れば、屋敷内でのそこかしこで人の気配を感じる。

 それは屋敷内だけに留まらず屋敷外、いわゆる庭にあたる部分でも感じられた。


「あの、どちら様でしょうか?」

 その内の1人、庭掃除をしていた如何にもメイドという風貌の女性がレイ達に話しかけてくる。

 それに代表してニイルが口を開いた。

「私達は本日この地にやって来た冒険者なのですが、ディード・ホグウェル氏はいらっしゃいますか?」


 そのニイルの問に呆れ半分、困惑半分といった表情を浮かべメイドが答える。

「申し訳ありません。ディード様は数日前から失踪していまして、今はどこにいらっしゃるのか分かりかねます」

「し、失踪……ですか?」

 これには流石のニイルも困惑の声をあげる。

 しかしそれも当然とばかりに苦笑を浮かべながらメイドは答えた。

「えぇ、ディード様が突然居なくなるのはよくある事ですので誰も気にしておりませんが、しかしいつ帰ってくるのかは誰にも分からないのです。あ、でも……」

 と何かに思い至ったかの様にメイドは続けた。

「ベスタ様なら何かご存知かもしれません」


 詳しく話を聞くとベスタとはディードの腹心で、自由奔放なディードに代わり内政を担当している人物だという。


(これは……)

(そうですね、この国のNo.2。恐らく神性付与保持者(セルヴィ)でしょう)

「?」

 レイとニイルが通話魔法で意思疎通を図る間、不思議そうに首を傾げるメイド。


 ならそのベスタに会いたいと申し出たのだが、彼は今この騒動で忙しくしている為、会えるとしても夜になってしまうという。


「ではこの手紙をその2人のどちらかに渡していただけませんか?」

 そう言ってメイドにスコルフィオからの手紙を渡し、屋敷を後にするのだった。



「さて、本来ならここで情報収集に徹するのですが……」

 ギルドに戻って来た後、そう切り出したニイルがレイに目配せをする。

 レイはその視線を受けて小さく頷き……

「でも船でニイルが言っていた様に観光しないなんて勿体ないわ。情報収集しながら色々回りましょうよ」

 そう答えた。


 レイがこう答えたのには理由がある。

 それはこの国に来てから、いや、船に乗る時からフィオの元気が無いからであった。

 船内での話を気にしているのだろう。

 いつも明るい彼女が目に見えて沈んでいるのだ。

 どうやらランシュよりもフィオの方がこの国との禍根は大きいらしい、レイはそう感じた。

 だからこそニイルの意図を汲み、こんな提案をし出したのである。


「珍しい物も沢山有る様だし、少し楽しみだったのよね」

 そう言ってフィオの手を取り歩き出すレイ。

 ニイルとランシュもそれに反対すること無く2人の後を追う。

 それに一瞬驚いた顔を浮かべたフィオだったが、次第に笑顔に代わり……

「ありがとう」

 そう呟くのだった。


 その後、日が沈むまで街を見て回り、観光を楽しむ4人。

 今までの人生でこんな経験をした事が無かったレイは殊更(ことさら)にはしゃぎ、楽しんだ。


 2人の姉も一緒に楽しんでもらえます様に。

 そんな願いを込めながら……

如何でしたでしょうか?

戦い詰めだった彼女達のつかの間の日常を描きました。

描写を敢えて少なくしたので、どんな風に楽しんだのか、それは皆様の想像にお任せしたいと思います!

そんなまったり回でしたが、次回は皆さんお待ちかねのお話の予定です!

お楽しみに!

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