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バケモノが愛したこの世界  作者: 一一
第4章 ???編

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66/88

幕間〜這い寄る悪夢〜

はいどうもニノハジです〜

今回から第4章が始まります!

そのプロローグという形になりますが、楽しんでいただければ幸いです!

ではどうぞ!

 激しく打ち付ける雨の中を進む1隻の船。

 日も沈み、暗く荒れた海を突き進むその船内は、外の気候とは打って変わって大きな賑わいを見せていた。


 かなり大き目なこの船に乗っているのは、如何(いか)にも荒くれ者と呼ばれる様な見た目の男達。

 正にその通りで彼等はこの辺りを縄張りとする、所謂(いわゆる)海賊と呼ばれる者達だった。


 ここは近年、観光地として大きな発展を遂げて来た国の近海であった。

 とある()()()の男が100年ほど前に建国し、そして今では世界でも有数な観光地、そして貿易の中心となった国である。

 その影響は凄まじく、他種族を嫌う貴族が多い中、この国だけは例外として別荘を建てたり観光に訪れたり、更には別の国の王族すらもお忍びで訪れる等、地位に関係無く人気が高い国として名を馳せる程。

 そんな国であれば金の流れも大きくなり、様々な国や団体、企業からの援助も増え、貿易も盛んとなるのは必然だった。

 今ではこの国の物流が滞れば、世界の物流にも多大な影響を及ぼすとすら言われる程にまで成長を遂げていた。


 だからこそ様々な思惑も交錯する。

 特に比較的歴史の浅い、更に亜人族の国である。

 華やかな面も有れば、普通の国よりも闇の深い面も存在した。


 この海賊達も、その闇の部分の一部であった。

 彼等はこの国にやってくる商船を襲い、食料や金目の物を奪うだけでなく、近隣に住まう亜人族を攫い奴隷商に売り付けて金を稼ぎ生活していた。


 もちろん、亜人族の国がそんな事を許す筈も無い。

 過去に何度もこの一団を捕らえようとする動きはあったのだが、上手い事立ち回り彼等の手から逃げ延びていた。

 お陰で今ではこの周辺で一番の大きな一団となり、国すらも迂闊に手を出せなくなる程にまで勢力を拡大するに至った。


 そんな彼等だからこそ本日の仕事も簡単に事が進み、朝には大きな商船を襲う事に成功。

 更につい先程この近辺に住まう、世間ではマーメイドと呼ばれ高値で取引される若い魚人族(マーフォーク)の女性を3人捕らえていた。

 それ故に食料も潤沢、当分の資金にも余裕が出来たとあれば浮かれるのも仕方の無い事だろう。

 船内は男達が酒を飲み交わし、宴会の様相を呈していた。


「いや〜今日は大当たりでしたねお頭!まさかあんなにデカイ商船だけじゃなく、恰好の獲物が3匹も手に入るなんて!」


 その内の1人、やや中年の男が少し酔っ払った顔で椅子に座る男に話し掛ける。

 お頭と呼ばれた男は話し掛けてきた男より少し年上、しかしこの海賊団の船長であり、今やかなり大きくなったこの一団を纏める存在であった。


 そんな彼も今日の成果に大変満足している様で、暴力と恐怖でこの集団を支配している彼にしては珍しく、酒に酔い上機嫌に答える。

「最近は俺らを捕まえようとする動きがまた活発化して動き辛かったからな。久しぶりの大きな成功だが、まさかこんなオマケも付いてくるなんざ、確かに今日は運が良い」


 そう言って男は部屋の隅へ視線を向ける。

 その先には鎖に繋がれた魚人族(マーフォーク)の女性3人が身を寄せあい、震えながらこちらの様子を伺っていた。


 その見た目は誰の目から見ても美しく、ただでさえあまり市場に出回らないマーメイドという事も合わさり、かなりの値段で取引されるであろう事を予感させる。

 明らかに怯えた様子も相まって、男達のテンションは更に上がっていく。


「馬鹿だよなぁ?あんな所に無防備で居るなんざ、間抜けにも程があるだろうが!」

 別の男が彼女達に近付き、笑いながらそう話す。

 それに一段と怯え、身を寄せ合う事しか出来ない魚人族(マーフォーク)達。

 その様子に更に満足そうに男は笑う。


 本来なら魚人族(マーフォーク)を捕らえるのは容易な事では無い。

 人間では上手く動く事の出来ない水中に住まい、逆に彼等は水中でならとても機敏に動く事が出来る。

 更に魚人族(マーフォーク)のほぼ全員が水魔法に高い適性を持ち、水場が有る場所、特に水中での戦闘力は他の追随を許さない。

 故に彼等を捕獲するのは困難を極め、その希少性から高値が付きやすい。


 しかし今回捕まえた彼女達は浜辺に気を失った状態で打ち上げられており、運良く簡単に捕獲する事が出来たのだ。

 希少な魚人族の、更に見目麗しい3人を何の被害も、(むし)ろ労力すらも無く捕らえる事が出来たのは、長年海賊業を生業としてきた船長でさえも初めての経験だった。


「亜人の国の庇護下で平和ボケしたのか?恨むんなら己の油断を恨むんだな」

 と、船長の男も笑いながらそう言い放つ。


 亜人族はその個体数の少なさからか仲間意識が強い。

 そこには当然魚人族(マーフォーク)も含まれており、この魚人達を探して他の魚人が大騒ぎしているだろう事は想像に難くない。

 しかし幸いにも荒れた天候が味方をし、捜査は難航している事だろう。

 今の内にアジトへと急ぎ、ほとぼりが冷めた後馴染みの奴隷商の元へと船を向かわせる。

 そんな想像に胸を躍らせ、(はや)る気持ちを抑えながら船長の男は酒を流し込む。


(これだけの上玉だ、売れればかなりの額になるだろう。その金で更にここをデカくすれば、いよいよ陸の()()()()も捕らえる事が出来るかもしれねぇ……)


 亜人の国は、陸地の大部分を森と山が占めている。

 人が住むには過酷な環境では有るが、代わりに自然豊かな為様々な亜人族が暮らしていた。

 労働力として重宝される獣人族(ビースト)鉱人族(ドワーフ)、そして種族全員が美男美女で有名な森人族(エルフ)等、高値で取引されている種族も多く住んでいる。

 彼等を捕らえるのはかなりの危険を要するが、そのリスクに対するリターンも大きい。

 今までは手を出せなかった陸地への進出も、今回の金で可能となるかもしれない。

 そうなればいよいよ世界的にも有数の海賊団として、名を知らしめる事が出来るであろう。

 酔いも合わさってそんな輝かしい未来を夢想する船長の男。


「なぁお頭〜!こんな上玉中々お目にかかれねぇし、ちぃっとばかし味見しても良いですかい?」

 だからだろうか、普段なら取り合わないそんな部下の声にも耳を傾ける。


「なんだお前?こんな魚に興奮すんのかよ?」

「うるせぇなぁ!上は人間と同じ見た目なんだし良いだろうが。文句言うならテメェは参加すんじゃねぇよ」

「え!?今回はつまみ食い出来るんですかい!?それなら俺も参加させてくださいよぉ!」


 などと部下達が騒ぎ出すのを眺めながら酒を煽る。

 普段なら商品価値を下げる行いは禁止しているのだが、今回ばかりは気が大きくなっている事もあり、まぁ良いか、なんて思考に至ってしまう。

「傷は付けんじゃねぇぞ。価値を下げた奴は殺すからな」

「イヤッホ〜!流石お頭!話が分かる〜!」


 船長の返答に喜んだ数人が魚人族(マーフォーク)へと近付いて行く。

 下卑た笑みを浮かべながら迫る男達に後ずさろうとする3人だったが、繋がった鎖がそれを許さない。


 震えながら身を寄せ合う3人に沸き立つ男達だったが、彼等は気付くべきだったのだ。

 何故、水中が領域である魚人族(マーフォーク)が浜辺で気絶していたのかを。

 若い女性だろうと3人とも魚人族(マーフォーク)であり、水場では高い戦闘力を有する事を。


 そして、船の上であろうと()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 男達が魚人族(マーフォーク)に触れようとしたその時、船の外から爆音が聞こえ、同時に船が激しく揺れる。


「な、なんだぁ!?何が起こった!?」

 バランスを崩し倒れ込む者が続出する程の揺れ。

 流石の船長の男も正気を取り戻し、事態を把握しようと叫ぶ。


「き、来た……()()()が……」

 答えは意外な所から帰ってきた。

 魚人族(マーフォーク)の3人が先程以上の恐怖を浮かべ、うわ言の様にそう呟く。


「何が来るって……」

「お頭!大変だ!」

 船長の男が3人を問い詰めようとした時、外で見張りをしていた部下が叫びながら部屋に入って来る。

 その男も恐怖からか顔は青白く、全身が震えている。

 声すらも震わせながら泣きそうな形相で、船長の男へと尚も叫ぶ。

「海中から巨大なナニカが大量に現れて!この船を取り囲んでいます!」

「は!?何言ってんだ!?訳分かんねぇ事言ってんじゃねぇぞ!?」


 要領を得ない部下の報告に叫び返しながら立ち上がる。

 そのまま部下を押し退け確認の為に外へと出ると。


「な、なんだありゃあ……」

 そう呟き、上空を見上げる船長の男。

 後から付いてきた部下達全員も、全く同じ反応を行う。


 彼等の視線の先に映るもの、それは巨大な柱が何本も海中から生えているという光景だった。

 ここら辺は海賊達も良く通る海域である。

 しかしこんな巨大な建造物は見た事が無かった。

 そして先程の音と揺れ、まさかとは思うが……

「突然生えてきたって、事か……?」

 船長の男がそう呟く。


 更にそれを裏付けるかの様に柱に変化が起きる。

 雨と暗闇で見えにくいが、よく見ると柱が動いているのだ。

 まるで生き物の様に、例えるなら触手の様な動きをしている。

 そしてその触手には、無数の吸盤らしき物も付いている様に見えて。


「まさかコイツは……海の怪物……」

 船長の言葉も、それ以降は紡がれることは無かった。

 多数の触手が船目掛けて倒れ込み、あまりにもあっさりと、大きな船が海の藻屑に変わり果ててしまったが為に。


 それは御伽噺に出てくる存在。

 人々を恐怖に陥れ、そして英雄に討ち取られる怪物。


 しかし今の時代に……

 その怪物を討伐した者は、存在していない。

如何でしたでしょうか?

第4章での伏線を張り巡らせておきましたwww

ちゃんと回収出来る様に頑張りますwww

そんなお話ですが引き続きお楽しみいただけると嬉しいです!

ではまた次回!

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