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バケモノが愛したこの世界  作者: 一一
第3章 色欲花柳編

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少女の決意

はいどうもニノハジです〜

前回に引き続き、ニイル達の事が少し明かされます。

伏線回収するのは楽しいですが、矛盾を発生させないようにするのが難点ですね・・・

楽しんでいただけたら幸いです!

ではどうぞ!

「だからレイもお兄ちゃんを嫌わないであげて。本当はお兄ちゃんも、レイの事大切に思ってるから」


 そう語り終えたフィオは、いつもの雰囲気に戻りレイへと笑いかける。

 しかしそれを経ても尚、レイの心の中には不安の種が(くすぶ)っていた。


「でもそれが本当だと、そう言えるのかしら……実の所は私の事なんて、利用価値が有るとしか思ってないのかも……」


 フィオが語った話が、嘘だとはレイも思っていない。

 しかし、ニイルの心情はフィオにも分からない筈である。

 故にそう易々とその言葉を信じる事が出来なかった。

 だがそのレイの不安を、フィオは一笑に付した。

「分かるよ。それだけ長い間一緒に居て、見てきたんだもん」


 その言葉にはなんの証拠も無かったが、不思議と信じられるだけの確証を持ってレイには届いた。

 それに、とフィオは続ける。

「ザジとの約束だって、本当だったらあの序列大会の時で終わらそうと最初は思ってたんだよ?でもお兄ちゃんがレイを放っておけなくて、今でもレイとの関係が続いてる。その証拠にお兄ちゃん、アタシ達にレイは大切か?って笑いながら聞いてきたんだよ?ちょっと嫉妬しちゃった」


 とことん身内に甘いんだから、と付け加えるフィオに、レイは目を丸くする。

 あんな話を聞いてから、ニイルがレイと行動を共にしてる理由は自分達の目的の為なのだという考えが、どうしても拭えないでいたレイ。

 そんなレイを置いて更にフィオは続ける。

「お兄ちゃんはあんな考えを持ってるから、物腰が柔らかそうに見えても実際には他人に全く興味を持ってなくて、敵には必要以上に苛烈に対応するけど……その分家族だと思った相手にはとことん甘いの。その甘さはどうやっても変えられなかった。だからその甘さこそがお兄ちゃんの本当の芯の部分なんだよ」


 呆れを含ませた苦笑を浮かべフィオは言う。

 それはまるで出来の悪い()を見る様な表情にも見えた。

 その表情から察するに、まだ語っていない兄妹以外の側面も有るのだろう。

 だがそれを感じても、もう不安に思う事など無かった。

 いつか全てが終われば語ってくれるだろう、そう思えるから。

 故にレイは最後に1つ、フィオへと問い掛けた。


「じゃあフィオは、ううん、ランシュとフィオ(ふたり)は、あんな事を言われても尚、ニイルについて行くのね?」


 あの時フィオ達が浮かべた悲しげな表情、あれは自分達が利用価値でしか見られていないと分かっていたから浮かべていたのでは無く、ニイルの事を思って浮かべていたのだと今なら分かる。

 それ程ニイルの事を考え、その上でニイルの考えを否定し一緒に居るのかと、そう言外に問う。

 その内容を明確に察したフィオはいつも通り、いやそれ以上の笑顔を浮かべレイへと答えた。


「もちろん!()()()、アタシ達がお兄ちゃんと居ることを決めたのは、()()()()()お兄ちゃんを支えると、そう決めたから!お兄ちゃんがそうして欲しいと望んだ訳じゃない、アタシ達の意思で選んで決めたの!だからもし今後、お兄ちゃんから必要とされなくなっても、アタシ達はお兄ちゃんについて行くよ!」


 確固たる意思をその瞳に宿して、眩しい程真っ直ぐに答えるフィオ。

 その輝かしさに少し目を細めながらレイは……

「ありがとう」

 1つの決心を固めるのだった。



「では貴女達は『過去の遺物』を所持してはいない、そう信じてもよろしいですね?」

「えぇ〜。絶対に〜私達()集めていないと〜そう誓うわ〜」


 ニイルの問いに対し、真っ向から受け止めるスコルフィオ。

 その応対は誠実そのもので、嘘をついている様には思えなかった。


(どうやら本当の様だな)

 問答中、ニイルはスコルフィオを観察していたが、その時も(いぶか)しむ点は見られなかった。

 ランシュにも目線を送るが首を横に振り、嘘はついてない様だと伝えてくる。

 これで『柒翼』全員が『繁栄の証(ディーサイド)』を持っているかもしれない、というニイルの読みは無くなった。

 しかしその分色々な事も判明した。


(流石花街なだけあって情報が集まるのだろう。スコルフィオ(ヤツ)の能力の高さも相まって、想像以上に収穫があった)


 得た情報を脳内で整理するニイル。

 スコルフィオの話では、最近『繁栄の証(ディーサイド)』持ちが狙われる事件が、ズィーア大陸中で頻発していたらしい。

 未だ犯人の手掛かりすらないが、恐らくルエルの差し金だろうとスコルフィオは推理していたそうだ。

 その話を聞いてニイルも同じ感想を抱いた。


繁栄の証(ディーサイド)』は現在、過去の遺物と呼ばれ、あまり一般的では無いもののダンジョンから発掘される事から、高ランクの冒険者を中心にそこそこ知れ渡っている。

 しかしその能力も様々で、国を1つ滅ぼせる様な物から用途の分からない物まで数多く存在し、その製造工程や理由は未だに未解明のままだった。

 にも関わらず、今回の騒動では特に価値が無さそうな代物まで奪われたそうだ。

 それはつまり、犯人は『()()()()()()()()に価値を見出し、強奪していると考えられる。

 その様な理由と、大陸全土で活動している点からかなりの力を有する存在、つまりルエルが最有力候補だと考えたのだ。


 実際、ランシュとフィオがルエルから奪ってきた『繁栄の証(ディーサイド)』はかなりの数だった。

 そして序列大会以降、その様な事件が全く無くなったとなれば、ルエルが犯人で確定だろう。


(流石にスコルフィオ(ヤツ)をもってしても大陸外の事までは分からなかったが、それでも十分な成果を得られた)


 最後にスコルフィオが放った言葉、『私達()集めていない』。

 つまり、スコルフィオ以外の『柒翼』は集めている可能性があると、そう伝えてきたのだ。

 ならば他大陸でも似た様な事件があれば、『柒翼』が関係している可能性が高い。

 今後も『柒翼』と『繁栄の証(ディーサイド)』探しはセットで行う必要が有ると、ニイルは考えた。


 だが、とニイルは内心で溜息を吐く。

レイ(あのこ)はもう、ついて来てはくれないだろうな……)


 部屋を出ていく時の、レイの表情が脳裏に焼き付いて離れない。

 ニイルが語った事は本心で、その言葉通りレイとの関係も利用価値の有無でしか無い。

 そう思っている筈なのに、そう割り切る事が出来ず複雑な感情がニイルを支配する。


(いつになっても、捨て切れないものだな……)

 長い年月が過ぎようと、未だに非情になり切れない自分に苦笑を浮かべそうになるニイル。

 そんなニイルを置いてスコルフィオは口を開いた。


「とりあえずは〜聞きたい事は〜それだけですか〜?」

「そうですね、後はあの子が戻って来てから、後日改めて聞きましょう」


 ニイルの聞きたいことも聞き終わり、『柒翼』の情報はレイにも関わる話である。

 故にレイが来てからという事になり、今日のところは解散する流れとなった。


「申し訳ありませんが、あの子を見掛けたら先に戻ったと伝えて……」

 スコルフィオに、レイへの伝言を頼みつつ立ち上がろうとしたニイルだったが、その言葉は大きな音に掻き消された。

 音の方を見れば部屋の扉が開け放たれ、そこに2人立っているのが見える。

 先程飛び出して行ったレイと、その後を追って出て行ったフィオであった。


 タイミング良く帰ってきた2人に、内心安堵するニイル。

 それに自分が想像している以上に内心で2人の、特にレイの事を心配していたのだとようやく気付いた。

 そんなレイの表情を見ると真剣そのもので、真っ直ぐにニイルを見据えている。

 この短い間に何があったのかは分からないが、恐らくフィオと何か話したのだろう。

 そのフィオは後ろでいつもの笑顔を浮かべていた。


 そのまま無言で歩を進め、真っ直ぐニイルの元へと辿り着いたレイ。

 改めてニイルも向き直り、レイの視線を真正面から受け止める。


 そして暫くの逡巡の後、意を決した様にレイは深呼吸をし……


「ニイル、話が有るわ」

 と、そう言うのだった。

如何でしたでしょうか?

タイトル通り何かを決意したレイですが、その内容は次回に判明します。

今後どうなっていくのか、次回をお楽しみに!

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