アスモデウス
はいどうもニノハジです〜
タイトル通り、これがやりたくてこの作品を書いてるまでありましたが、漸くここまで来れました!
まぁ流石に今までの伏線でこれはバレてましたよねwww
それでも楽しんでもらえると嬉しいです!
「『神性』?それに『惑わす淫魔』って……」
聞き慣れない単語を耳にし、1人呟くレイ。
だがその圧力はどこか身近で、しかしその何倍も大きくて……
「『神性』とは、簡単に説明するならば神性付与の上位互換です。かつて存在した神の権能、その半分程が人間と混ざり合い新たに名を得たのが『神性』、その保持者達を『神性保持者』と呼びます」
ニイルの説明に愕然とするレイ。
かつてレイが勝てなかったベルリや、序列大会で会ったルヴィーネ、レイが出会い戦った相手はどちらも尋常では無い強さを有していた。
しかしその『神性付与保持者』達でさえも、『神性保持者』の前では劣るのだという。
にわかには信じがたいが、そもそもレイはこの力の事をよく知らない。
いくら聞いても、ニイルが詳しく説明してくれなかったのだ。
なので自身の『神威賦与』の事についても、ほとんど何も知らないというのが現状である。
何故『神性付与』では無く『神威賦与』なのか、神の権能とは何なのか。
そしてかつて存在した神とはどういう事なのか……
「それって一体……」
どういう事なの?
そう続く筈だったレイの言葉はしかし、それ以上続ける事が出来なかった。
何故なら、一瞬にして目の前の光景が変わってしまったから。
あまりにも理解が出来ない、そんな異常な光景に。
魔薬を飲んでから、マーガの意識は暗い水中に沈む様にどんどんと薄れていっていた。
自分の身体が自分の物では無くなって行くかの様な、身体と意識がどんどん切り離され、意識だけが闇に飲まれて行くかの様な、そんな感覚。
実際、現実で暴れているマーガに意識は既に無く、本能で暴れているだけの獣と化していた。
そんなマーガの前に突然現れたスコルフィオ。
桃色の髪をしたその女性を見た時、マーガの生存本能が悲鳴を上げた。
見た目は普通の、いや、絶世の美女なのにも関わらず、スコルフィオからは死の恐怖しか感じ取れない。
その恐怖心は、消え掛けていた意識すら少し戻る程。
自身を構成する全てで持って、彼女の死の恐怖から逃れようとしていた。
しかしあまりの絶望に本能でさえ動けなくなる中、先に動いたのはスコルフィオだった。
『惑わす淫魔』
そう唱えただけで彼女の周り、いやそれだけでは無い。
辺り一面を覆い尽くすほどの甲冑の騎士達が、突然現れたのだ。
最早意識もほぼ無く、正常な判断を下せないマーガだったが、突然目の前に現れた集団を脅威と見なし襲い掛かる。
しかしそれはスコルフィオとは反対方向に向かって。
逃げ道を確保する為に、生存本能が行った咄嗟の行動だった。
本来のマーガであれば、その様な短絡的な行動はしなかっただろう。
しかし今の彼は獣と成り果てた存在。
理性は無く、ただただ狂戦士の様に暴れ回るのみだった。
しかし、その様な状態になろうと戦闘力は未だ健在。
いや、寧ろ魔力が溢れ、破壊を撒き散らす今の状態の方が周囲に対する危険度は格段に増していた。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!」
周囲の騎士達に向けて魔法を放つマーガ。
それはごく普通の、簡単な魔法。
理性を失った今、魔法陣が複雑な高度魔法や魔技を使う事が出来なくなっている。
本来なら魔法全てが発動出来なくなってもおかしくない状況にも関わらず、そんな中でも発動した魔法はマーガの日々の努力の賜物か、それとも生存本能が為せる業か。
しかし何より問題なのがその量である。
まるで大軍に対抗するかの様に生み出される魔法の数々。
大地に騎士、宙に魔法。
どちらも覆い尽くす程の物量同士がぶつかり合う。
密集しているからか、避けれずに魔法の直撃を食らう騎士達。
更に周りも巻き込み倒れていくが、他の者はそれを全く意に介さずマーガへと突き進む。
ある者は味方を盾にし、ある者は仲間を踏み越え、そしてマーガへと剣を振りかざす。
それが一人だけだったのなら、今のマーガでも難なく処理出来ただろう。
しかしあまりにも数が多過ぎた。
対処する為の魔法を展開しようとするが間に合わない。
そんな中、全方向からほぼ隙間無く迫る剣を対処するのは難しい。
ある剣は避け、しかし回避しきれない剣は急所を避けて甘んじて受け入れる。
更に迫る大量の刃は、ようやく完成した風魔法により持ち主諸共吹き飛ばし、マーガの周囲に空間を空けた。
意識は無くとも戦闘経験は残っているのだろう。
騎士達との距離を空け、その隙に体制を立て直すかの様に魔法を展開……
「まだ続けるんですか〜?」
「!?」
しようとしていたマーガの耳元で、女性の声がそう囁く。
咄嗟に振り返るとどうやって移動したのか、スコルフィオがにこやかな笑みを浮かべて立っていた。
「確かに〜、貴方の魔法は凄い数でしたけど〜?それで逃げられると思ってるんですか〜?」
間延びした、庇護欲を掻き立てられそうな喋り方と仕草でそう尋ねてくるスコルフィオ。
男なら誰もがそれだけで恋に落ちてしまいそうだが、マーガの本能が感じるのは得体の知れない恐怖だけだった。
そもそもおかしいのだ。
突然何も無かった場所に多数現れたこの騎士達も、その騎士で埋め尽くされていた筈のマーガとの距離を一瞬で縮めた事も。
何よりまるで人とは思えない機械的なこの騎士達も……
その時マーガの本能がある事に気付く。
最初の魔法でそれなりの人数を減らしたと思っていた筈なのに、明らかに人数が減っていない。
それどころか、遠くを見ればどんどんと騎士達が押し寄せてきているのが見える。
「気付きました〜?そうですよ〜?いくら貴方に魔力が有ろうと〜、この子達からは逃げられませ〜ん」
微笑みながら言うスコルフィオ。
その間にも騎士は増え、マーガへと迫りつつある。
しかし、最早マーガには周りの状況を見る余裕は無かった。
あるのはただただ目の前の女性に対する恐怖、それだけ。
意識があったのなら何かしらの手を考えるか、失意に飲まれて発狂するかだったであろう。
唯一の救いと言えば、意識が無いからこそこれ以上発狂する事は無い、という事だろうか。
「ガア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!」
出鱈目に魔法を作り出し、その全てを目の前のスコルフィオに向けるマーガ。
数多の魔法が飛来する中、しかし笑みを絶やさないスコルフィオだが、その間に割って入るように騎士達が入り込み自らを盾としていく。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!」
それに業を煮やしたのだろうか。
マーガは叫び、スコルフィオの周囲に大量の魔法陣を展開する。
流石に全方位に作られれば騎士達も守りきれない。
「きゃああああああ!」
数種類の魔法を浴び最後に炎弾が直撃、スコルフィオは燃えながら吹き飛ばされた。
ぐったりと横たわり、動くこと無く燃え続けるスコルフィオ。
普通であれば確実に死んだであろう攻撃を受けて尚。
騎士達は、それを意に介さずマーガへと進軍し続ける。
スコルフィオだったモノを踏みにじり、その炎が自身に引火、更に周囲の騎士達に燃え移りながらもそれでも尚進むのを止めない。
傍から見れば明らかに異常で、吐き気を催す光景だった。
理性を持たないマーガはそれに忌避感を示す事は無いが、生存本能が危機感を知らせ続ける。
そう、未だに消えず迫り続ける騎士達よりも、死んだ筈のスコルフィオに未だに恐怖していた。
それが何故なのか分からなければ、考える事も無い。
ただ本能に従って迫り来る騎士達を魔法で吹き飛ばし続けるマーガ。
気付けば全軍に火が回っており、マーガの周囲の騎士達も軒並み燃え周囲を明るく照らしている。
それでも進み続ける彼等のペースは衰える事を知らず、いかに豊富な魔力を誇るマーガといえど、迎撃する為の魔力が足りなくなって来ていた。
その一瞬の隙を突き、背後からマーガを羽交い締めにする騎士。
もちろん、その騎士も燃えておりその日はマーガにも引火する。
「ギャアアアアアアアア!」
熱さに悶えながら背後の騎士を振り払おうと藻掻くマーガ。
しかし一向に振りほどけず、更には周囲の騎士達も加わり身動きが取れなくなった。
1つの炎塊となり更に炎の勢いが増す中、抜け出そうと必死のマーガは目の前に黒い塊が立っているのを見た。
炎に包まれたそれは、よく見ると騎士達よりも細く身長も低い。
ともすれば女性の様なフォルムのそれが言う。
「つ〜かま〜えた」
スコルフィオと同じ声のそれがマーガへと抱きついてくる。
そして周囲の騎士達はそのスコルフィオごとマーガに剣を振り下ろし……
「ああああああああああああああああ!?」
あまりの恐怖と痛みに消え掛けた意識が戻り、叫ぶマーガ。
荒い呼吸のまま確認すれば自身の身体は燃えておらず、傷もひとつも無い。
しかしあの時受けた痛みは紛れもなく本物だった。
お陰で意識を取り戻すことが出来たのだから。
「は?」
だがマーガが確認出来たのはそこまで。
次の瞬間目の前に立っていた騎士に首を切り落とされ、宙を舞ったその口から発する事が出来たのは。
その一言のみだった。
如何でしたでしょうか?
ホラーちっくな感じになってしまいましたwww
どういう事だってばよってなってると思います…
それは次回説明すると思いますのでその時までお待ちいただけると幸いです!
ではまた次回!




