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バケモノが愛したこの世界  作者: 一一
第3章 色欲花柳編

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夜の女王、その真の力

はいどうもニノハジです〜

前回で続くと思った英雄達との戦い、意外にも今回も続きます!

でもタイトルからして何かちょっと様子がおかしい…?

そんなお話です!

ではどうぞ!

 土煙の中から姿を現すマーガ。

 今にも倒れそうな様相で意識も朦朧としているが、その瞳には確たる意志を宿していた。


 横で倒れているブレイズに目を向けるマーガ。

 意識は無いが呼吸は辛うじてしている状態だった。

 しかしその状態も長くは続かないだろう、最早一刻を争う状態であろう事は傍から見ても理解出来た。


(魔法障壁のお陰で、何とかお互い一命は取り留めた。敵の増援が来た以上本来なら部下を呼んで撤退するべきなんだろうけど……)


 周囲に意識を向けるが戦闘の音が全く聞こえない。

 最後に見たのは、部下全員がたった1人を相手に向かって行った時。

 それから一向に助けに来ないところを見るに、想像したくは無いが全員やられたのだろう。


(敵の増援が来た以上、早々にこの場を切り抜けなければならない。僕の魔力ももう空だけど、何とか君だけは逃がしてみせるよ)


 内心でブレイズに語り掛けるマーガ。

 彼を喪う事はセストリアの、いや世界にとっての損失だ。

 それ程この『剣聖』は人類にとっての希望なのである。

『魔王』と呼ばれるマーガもそんな人物の1人だとは露知らず、そんな事を考える。


 だからこそ彼はここで命を使い果たす覚悟で立ち上がったのだ。



「まさか立ち上がるなんて……」

 苦悶の表情を浮かべながらレイが呟く。

 正直なところレイも限界が近かった。

 身体の傷もそうだが何より激しい頭痛と、魔力切れを起こしかけている状態のせいで思考が纏まらない。

 ニイルがこの場に来たとはいえ、最後の最後に彼に頼る事はしたくなかったレイ。

 何とか力を振り絞り剣を構える。


「確かにあの状態で立ち上がるのは流石としか言えませんが、しかし彼にはもう魔力は殆ど残っていません。このまま逃げるのであれば見逃すのも手では有りますよ?」

 ニイルが漆黒に輝く眼でマーガを観察し言う。

 その温情はあの2人に対する物では無く、非情さを捨て切れない優しい弟子に対する思慮であった。


 しかしレイは険しい表情のままマーガを見つめる。

「ここで逃げ出すなんて選択、彼等がするとは思えないのよ」


 マーガのその瞳、その奥に宿る激しい炎に見覚えがあるレイ。

 そう、それはかつて祖国を滅ぼされ、復讐を誓ったあの日の自分の瞳によく似ていて……


 その時、マーガが懐から何かを取り出す。

 遠目からではハッキリとは見えないが、それは小さな塊のように見えて……

「あれは……!」

「させない!」


 ニイルとレイが、それが()()に気付いた瞬間同時に声を上げる。

 そして2人が想定している最悪の行動を阻止すべく、レイは雷魔法を撃ち出した。

 込めた魔力は少なくとも速度は優れた雷属性魔法である。

 一瞬でマーガの元に辿り着くが一歩遅く、マーガはその塊を飲み込んでしまう。

 そしてそれと同時に魔法障壁を展開、雷魔法を弾いてしまった。

 しかしそれで全ての魔力が尽きたのだろう。

 彼は前のめりに倒れ動かなくなった。


(間に合った……?)


 警戒しながらも様子を伺うレイ。

 その間も微動だにしないマーガに漸く警戒を解こうとした時、変化は起きた。

 微かにだが、何かが脈動する音が2人の耳に届く。

 その音は次第に大きくなり、そして同時に吹き荒れる魔力が2人を襲う。

 その発生源は、倒れたままのマーガからであった。


「な、何!?」

「間に合いませんでしたか……!」


 レイは叫び、ニイルの声にも焦りが滲む。

 流石のニイルもこの展開は想定していなかったのだろう。

 まさかあれ程の魔法師が()()()()()()()()などと。

 それは世界で最も忌み嫌われた研究の1つ。

 数多の人体実験の末に産まれ、そしてその危険さから姿を消した負の遺産。


「じゃあまさかあれは!」

 実物は初めて見るがザジから話は聞き、噂程度は知っていたその存在を目の当たりにしレイが叫ぶ。


「ええ……あれは()()です」

 そう答えるニイルを尻目に、まるで重力に逆らう様な動きで立ち上がるマーガ。

 その表情は虚ろで、まるで正常な意識があるのかさえ判断出来ない。

 しかしその身から迸る魔力の波動は脅威そのもの。

 物理的な圧力を伴って襲い掛かり、レイは思わず後ずさる。


「魔薬って一時的に魔力を増やす代物でしょう!?なんで魔力切れを起こした彼の魔力がこんなにも膨れ上がっているのよ!」

 暴風から顔を腕で庇いながらニイルへと叫ぶレイ。

 レイの認識では飲み込んだ時点での魔力を増やす効果が有る、と認識していたのだが、それでは目の前の現象に説明が付かない。


「魔薬は!服用した者の生命力を魔力に変換する劇薬です!本来ならその魔力に身体が追い付かず自壊するか、生命力を削り過ぎて死に至るのですが!『魔王』と称される彼程の者が使用すれば生命力も魔力貯蔵量も並大抵ではありません!本来なら数十分で自滅しますが、彼の場合はこのままのペースなら一日中は持つでしょう!そうなればこんな小さな国など、すぐにでも消し飛んでしまいます!」

「な!?」


 ニイルの説明に驚愕を露にするレイ。

 レイが聞いて想定していたものよりも、遥かに凶悪な代物だったらしい事を知り、改めてマーガを見る。


「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!」

 大声を放ち、一際膨大な魔力の波動を放つマーガ。

 それだけで付近の建物は崩れ、地面にもヒビが生まれる。

 確かにこの惨状を見れば、存在を消されるのも無理は無い。

 使う者によって変わるのだろうが、これでは最早一種の災厄である。

 まるで御伽噺の『魔王』の様な彼を見てレイは叫んだ。

「彼を助ける方法は!?」

「……っ!生命力を変換しているのです!その生命力が無くなる、つまり殺してしまえばこの現状は収まります!」


 レイの問いに、一瞬言い淀むも答えを返すニイル。

 それはレイが求める答え等では無く、そして()()()()()()()()()()()()()()()()からこその逡巡であった。


「違う!私が聞いたのは彼を()()()方法よ!どうやったら元に戻せるのかと聞いているの!」

「そんな方法有りません!」

 レイの方を向き、ハッキリと告げるレイ。

 厳しい表情で尚もニイルは続ける。

「いえ、()()()彼を戻す方法は有りません!意識を奪って進行を遅らせる事は出来ますが、それでも溜め込んだ魔力量に耐えられなくなり身体が自壊するのが先です!」

 何故か少しだけ文言を変え、言い直すニイル。

 それに気になりはしたが、その後の言葉を聞き決意を固めるレイ。


「なら!その時間稼ぎをすれば良い!その後に治す手段を考えるのよ!」


 案の定()()()()()()()()、マーガを助けると言って聞かないレイ。

 こうなると予想出来ていたニイルだが、それに付き合いここに留まる訳にいかない理由が有る。

 それを告げようとしたその時、2人の耳に聞き慣れた声が届く。


「やっと見つけた!もう2人共!早く逃げないと大変な事になってるよ!?」

 屋根伝い越しに飛んでやって来た声の正体、それはランシュに抱き抱えられたフィオであった。

 どうやら住民の避難を終え、2人を探していた様だ。

 ランシュの方も見掛けないと思っていたが、敵を無力化した後フィオの元に行っていたらしい。

 そんな二人を見て安堵するレイだったが、焦りを浮かべながらフィオが早口で捲し立てる。


「この騒ぎで街は大変な事になっててね!?それでどうやらこの騒動が城まで伝わったみたいで!そこでアタシ見たの!凄い数の軍隊がこっちに向かって来てるのを!」

「チッ……!」

 ニイルにしては珍しく舌打ちをし辺りを見回す。

 まだ付近には到達していないが、かなり接近している膨大な数の魔力が視える。


 そう、これがここに長く留まれない理由。

 もう間もなく、レイの標的であるスコルフィオの軍勢がここにやって来るから。

 彼女達を打倒する為に鍛えては来たが、今はまだ時期尚早過ぎた。


「どちらにしろ時間切れです!今のままでは『夜の女王』達にはまだ勝てません!今は一刻も早くこの街から脱出しなければ!」

 そうレイを説得しようとするニイルだったが、それに怒りの表情を浮かべレイが反論する。


「ふざけないで!そうしたらこの街はどうなっちゃうのよ!その軍隊が来る前にここがめちゃくちゃになっちゃうでしょ!街の人を見捨てる訳にはいかないわ!」

「ここは貴女の国では有りません!ここは他人の、ましてや敵国です!彼等は貴女に関係無く、そして彼等を守るスコルフィオ(もの)も居ます!貴女が出しゃばる必要は無いのです!」


 レイの腕を掴み、そう説得するがその手を振り払いマーガへと向き直るレイ。

 魔力の波動に押されながらも一歩踏み出し、自身に()()()()()()()()叫んだ。

「それでもここで見捨てたら……!私は!」

「わからず屋め……!」


 尚も言い募ろうとしたニイルだったが、それ以上言葉にする事が出来なかった。

 何故ならマーガの周囲に数え切れない程の魔法陣が展開されたから。

 その数は序列大会で見せたニイルやルエルよりも何倍も多く、視界を埋め尽くす程だった。


「くっ!……っ!?あう!」

「クソっ!」

 論争を止め『神威賦与(ギフト)』の力で消し去ろうとするレイ。

 しかし最早限界であり、激しい頭痛により能力の使用を中断させられる。

 そもそもこの量の多種多様な魔法を消す事など、今のレイには出来ない。

 故にニイルが代わりに『神威賦与(ギフト)』を使い、一瞬で全てを消し去る。


「ぐっ!流石に数が多い!」

 しかし流石のニイルでもこの数は堪えたのだろう。頭を押え苦悶の声を上げる。

 そのニイルをカバーする様にレイが雷魔法、フィオが炎魔法を撃ち出し、そしてランシュが接近戦に持ち込もうとするのだが、その全てを分厚い魔法障壁により阻まれてしまう。


「うっそ!?」

「硬すぎるわね!」


 フィオとレイが驚きの声を上げながらも魔法を撃ち込むが、全て阻まれてしまう。


(そろそろ魔力が……)

 レイの魔力が底を突きかけたその時、ニイルが突然あらぬ方向を見つめ、忌々しげに呟く。

「くそ……もう来たか!しかも本人直々とはな!」


 直後ニイルは手を地面に着け魔法陣を浮かび上がらせる。

 それはレイが見た事の無い複雑な文様を描いており、効果が何なのか判断出来ない。

 そうしてニイルは顔を上げ三人へと叫んだ。

「良いか!?この魔法陣から絶対に外へ出るなよ!出た瞬間死ぬと思え!」


 突然の事に混乱するレイ。

 訳も分からずにニイルの視線の方を追ってみると、そこには絶世の美女と誰もが呼ぶであろう程の女性が佇んでいた。

神威賦与(ギフト)』を使わずとも分かる。

 明らかに常軌を逸した雰囲気を漂わせるその人こそ。

 レイの探し求めたスコルフィオ本人だという事を。


「よく見ておきなさい、アレが貴女の敵、『柒翼』と呼ばれる『神性保持者(ファルサ)』達です」


 そうしてスコルフィオは詠う様に……


「『神性(アルカヌム)』『発動(オープン)』」


 その神秘の名を告げるのだった。


「『惑わす淫魔(アスモデウス)』」

如何でしたでしょうか?

この作品の最初に出た伏線を回収出来ました!

そして薄々気付いてた方もいらっしゃるでしょう、敵の真の力もお見せ出来ました!

その力の正体とは!?

それは次回のお楽しみという事でwww

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