追手
はいどうもニノハジです〜
遂にこの話からこの章の戦闘パートに入っていきます。
それに比例し文字数も多くなると思いますが、お付き合い頂ければ幸いです笑
ではどうぞ!
「2人共!今日はもう終わりだから上がっていいよ!」
客も捌けた頃、店長が店の手伝いをしていたレイとランシュに声を掛ける。
現在は夜も更け、夜の街と言われるこの国でも、流石に店仕舞いする光景が広がり始めていた。
「分かりました。じゃあ皆さんお疲れ様です」
従業員達にもそう挨拶し、レイとランシュは店を後にする。
「また報酬金額より多く入ってる……有難いのだけれど何だか申し訳無いわね」
帰り道、ランシュと二人で今日の報酬を確認中、レイは苦笑しながら言った。
帰り際に店長から渡されたそれは、通常の相場金額より2倍近く多い金額が入っていた。
最初の頃は受け取れないと遠慮していたのだが、曰く。
「最早警備以外の仕事の方がメインだからねぇ。これで払わなきゃ女が廃るってもんさ」
と、言われれば受け取らざるを得ない。
実際、日に日に警備の仕事は減り、裏方の仕事が増えてきていたので、今では申し訳なく感じつつ、有難く受け取るようにしているのであった。
実は2人の名が広まるにつれ彼女達の功績も広まり、実際は客から恐れられている存在になりつつ有るという事は、2人はまだ知らない。
2人が居る店では格段に治安が良くなり、警備中に暇を持て余す事が多いのは、そういった事情が有るからなのであった。
「少しお腹減ったわね。ニイル達もそろそろ終わるだろうから、空いてるお店でも探しに行く?」
そんな事は露知らず、食事の提案を持ち掛けるレイ。
ランシュもそれに同意を示し、2人で空いている店を探す事にする。
時間が時間だけに、飲食店も同様に閉店し始めているのが目立つが、街が特殊なので普通の街より遅い時間までやっている所も多い。
お陰で閉店時間まで余裕のある店を発見し、そこに入る事を決める2人。
「じゃあ私はここで待ってるから2人を連れて来てくれる?」
レイのそのお願いに首肯し、ランシュは再び雑踏へと消え、レイは店内へと進んだ。
幸いにも店内は空いていて、見渡す限り3人組のパーティが2組と、8人のパーティの1組しか店内には居なかった。
(多いわね……合同かしら?)
その8人を一瞥だけして店内を進むレイ。
基本、普通のパーティは3〜4人程で1パーティ。
それ以上になると、高難易度のダンジョンや強力な大型モンスターの討伐が主となる為、この国では珍しい事だった。
この国ではどちらもそんなクエストはほとんど来ないので仕事中に仲良くなり、その懇親会だろうと結論付けてレイは店員に話し掛ける。
「この後3人合流するから広めの席に案内して貰えるかしら?」
「かしこまりました!ではそちらのテーブル席へどうぞ!」
ウエイトレスの女性が笑顔で対応し、その席へと向かう。
途中先程見た8人組のパーティを横切り席へ着こうとして……
「見つけた」
そんな声がレイの耳に届いた。
瞬間、自身に掛けていた偽装魔法が破られるのを感じるレイ。
「……!?」
反射的にそのパーティから距離を取り、手を剣の柄に伸ばしながら彼等を見据える。
彼らの内6人は突然の出来事に驚いた顔をしていたが、少し小柄な男とやたらと長身の男だけは、動揺無くこちらを見つめ返していた。
「突然あの女の見た目が変わったがお前か?」
小柄な男が長身の男に問いている。
「うんそうだね。そして間違い無い、あの子が目標の人物だ。目撃情報と同じ見た目。そして僕が視た色と同じ色をしている。どうやら僕の直感は正しかったみたいだ」
そう長身の男は答え、2人が席から立ち上がった。
一拍遅れ、残りのメンバーが立ち上がり臨戦態勢に入る。
しかしレイには彼等との面識は無く、困惑する事しか出来ない。
「いきなり失礼じゃないかしら?私は貴方達とは会った事が無い筈なのだけれど?」
全身を警戒させながら彼らに問うレイ。
彼女の本能が、理性が。
全てが警告して来ていた。
彼等が強大な敵であるという事実を。
(6人も中々の手練だろうけど、何よりあの2人がヤバイ。彼等を一気に相手にするには分が悪すぎる)
現在レイは修行と称して魔力と、そして脳を酷使しながら生活している。
大分慣れたとは言え、午前中にはニイルとの修行、その後依頼をこなして現在に至るので、魔力をかなり消費していた。
そんな状態の今、彼等と事を構えるのはかなり危険な状態なのである。
そんなレイの葛藤も知らず、長身の男が口を開く。
「悪いね。僕達は君を探して来いって言われて来たんだ。だから初対面で悪いんだけど、一緒に来てくれるかな?」
何故だろうか、世の女性の大半が見蕩れるであろう爽やかな笑顔を浮かべているのだが、裏がある様な顔にしか見えない。
悪く言うなら腹黒そう、と形容出来るであろう表情にレイは更に警戒を強めた。
「あれ?」
「チッ……」
想像していた反応と違ったのだろう。
困惑した声を漏らす長身の男を見かねて、舌打ちしながら小柄な男が進み出た。
「だからお前の腹黒い顔は余計警戒されると言っているだろうが。それにハナから付いてこないだろう。最悪死んででも構わないと言われてるんだから、さっさと殺ってしまおう」
そう言いながら、男は腰に提げていた2本の剣を抜いた。
右手の剣は普通の剣なのだが、左手の剣はその半分程度の長さしかなく違和感を覚える。
「……っ!」
それを見た刹那、この狭い室内で8人を相手取るのは無謀、何よりこの街の住民に被害が及ぶ、そう一瞬で判断し外へと飛び出すレイ。
しかし飛び出したは良いが、外にも人の往来がそれなりに有り、つい顔を顰めてしまう。
(せめて人気の無い所に!)
そう判断し、略式にて身体強化魔法を付与、町外れの方へと飛び上がろうとするレイ。
しかし店内から飛び出してきた氷弾がレイへと襲い掛かり、回避行動を余儀なくされる。
「今のは略式魔技かい?その若さでそれ程使いこなすとは……危うく逃げられるところだったね」
言葉とは裏腹に焦りを感じさせぬ、にこやかな顔で店内から出てくる長身の男。
後に続いて残りのメンバーも外へとやって来て、各々武器を構える。
「お前達、奴が逃げられない様に足止めと、それと人払いをしておけ」
「はっ!」
小柄な男の号令に、後ろで控えていた6人が返事をする。
すると3人が、魔法で炎弾をレイの周りに放ち始める。
「な、何を!?」
様子を見守っていた周りの人間が、その魔法で蜘蛛の子を散らす様に逃げて行く。
幸いにも怪我人は居なかった様だが、1歩間違えれば大惨事になり得たかもしれない行為に、レイが声を荒らげる。
「なんだ?邪魔だったから追い払っただけだ。安心しろ、ここは他国だからな。無用な殺しはしない」
そう小柄な男が答えている間に、残りの3人がレイを取り囲む様に配置に着く。
(流れる様な連携に、洗練された動き。それに他国……ルエルの差し金かとも思ったのだけれど……)
「貴方達、セストリアの人間?ルエルの指示でやって来たの?」
一連の流れからそう推察し、そう判断したレイ。
時間稼ぎの意味も込めての質問だったのだが、どうやら相手もそれに乗ってくれた様だった。
「半分正解という所かな?ルエル殿はあれ以来行方不明でね。君、いや君達は国家転覆罪の容疑で内密に捜査していたんだ」
と、長身の男が答えた。
どうやらあの事件以降、ルエルはあの国と繋がっていないらしい。
彼等は純粋な、あの国所属の人間なのだろう。
しかしそれでも分からない事が有る。
「それでわざわざこんな所に迄やってきたというの?たまたまにしては運が良い様に思えるのだけれど?」
そう、ここは連邦国という意味で見ても隣国。
更に言えばその中の1つの国家であるフィミニアである。
あの事件から2ヶ月近く経つというのに、どうやってレイ達の居場所を突き止めたのか。
何かタネがある筈、そう予測しての問いに、長身の男は嬉しそうに答え出した。
「もちろんたまたまじゃ無いよ?2週間位前にセストで君と同じ色を視たんだ。その痕跡を追って、今日ここに来たんだよね。いや〜運が良かったよ。いくら君が珍しい色をしているといってもこのズィーア大陸は広いからね。もっと探し回る羽目になるかと思ってビクビクしてたんだ」
などと言い、更にその後も喋り続けている。
どうやらこの長身の男はかなりのお喋りらしい。
しかし、お陰で気になる言葉を聞くことが出来た。
(さっきから私の色って言っているけれど、何かの比喩?意味が分からな……)
その時レイは思い出した。
2年間の修行の時に、ニイルが語っていた言葉を。
(一流の魔法師がその才能を、更に経験で磨いた時、ごく稀に普通とは違う、魔法の感覚を得る事が有るそうです。例えば、魔法の発動を匂いで感じ取れる、相手の得意な魔法が直感で分かる。この様に人それぞれによって能力は異なりますが、それ等を総称して『魔感』と呼びます)
恐らくこの長身の男が視ているモノが『魔感』なのだろう。
それでここの場所がバレたというのだったら、未だに信じ難いが、納得せざるを得ない。
それよりも恐ろしいのは……
(ニイルは、一流の魔法師が経験を積んだ末に手に入ると言っていた。ならば、彼は確実に油断して良い相手では無いという事)
そしてそんな男と一緒に居る小柄な男もまた……
「おい!何時まで喋ってるつもりだ!こちらの準備はもう出来た。時間稼ぎはもう良いから早く終わらせるぞ。早くしないと、この国の奴らに目を付けられる」
小柄な男の言葉に我に返り、意識を現実に引き戻す。
今考えるべきは、この状況をどう打開するかである。
「そうだね、名残惜しいけど、さっさと済ませよう」
そう言い、長身の男も喋るのを止める。
恐らく長身の方が魔法でサポートし、小柄な男が二刀流を用いて前衛を務めるのだろう。
レイも剣を抜き、どう切り崩すか思案しようとした時。
「……!」
小柄な男が、消えた。
直感のままに体を動かせば間一髪、ギリギリの所迄迫っていた二刀の剣を防ぐ事に成功するレイ。
「速……!」
「おぉ!」
そして一瞬の均衡も、男が裂帛の声と共に力を込めれば、レイは軽々と後方へ吹き飛ばされてしまった。
(重……!)
派手な音と共に建物へ衝突し、そのままその建物が崩れ去っていく。
土煙の中へ消えたレイを、油断無く見据える男達。
こうして、窮地は突然としてやって来たのであった。
如何でしたでしょうか?
ようやく出せたこの2人...
前章からのちょっとした伏線回収になりますので、もしかしたら正体が分かる人も居るかもしれません笑
その正体は次で明らかになると思いますのでそれ迄お楽しみに!
ではまた次回お会いしましょう!




