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バケモノが愛したこの世界  作者: 一一
第3章 色欲花柳編

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それぞれの日常

はいどうもニノハジです〜

早いものでもう1月も終わりですね。

今年は例年に比べ雪が少なかったイメージです。

まぁ地域差も有るでしょうが笑

そして今年も変わらずこの作品は書き続けていく所存ですのでどうぞよろしくお願いします!

 レイ達一行がフィミニアに到着してから、約2週間程が経過した。

 その間仕事の依頼をこなしつつ、レイの能力向上を目指し、空いた時間は修行に明け暮れる日々が続く。


「では、私達は行ってきます」

「また後でね〜」


 この日も、ニイルとフィオは自警団の仕事を行う為に午後から出掛けて行く。

 最早見慣れた光景だった。


 この国はとても小さい。

 故に噂等はすぐに広まり話題になりやすいのだが、ニイルとフィオも例に漏れず、入団テストでの話が広がり、数日でかなりの有名人となっていた。

 更にフィオはその可愛らしい見た目と、愛嬌のある性格から特に人気になり、この2週間近くでかなり顔が広くなった。

 今では遊女に誘われる事も有るらしい。

 本人達曰く……

「目立ち過ぎてしまいました」

 と、反省の弁を述べていたのだが。


「は〜い……行ってらっしゃい……」

 午前の修行を終え、息も絶え絶えで返事をするレイ。

 かく言うレイ達も顔馴染みが増え、この街に馴染んできていた。

 きっかけはギルドの依頼で向かった初日、娼館での警備を行った時の出来事だった。

 その日はそこそこ忙しく、客の人数も多かったそうだ。

 人の数が増えれば、それだけ問題が起きる確率も上がるというもの。

 この日は運悪く、酔っ払った冒険者パーティがやって来たのだ。

 店にイチャモンを付けたり、他の客や従業員に迷惑を掛ける始末。

 終いには怒鳴り散らし、暴れ出す寸前だったのだが……

 レイ達が一瞬にして組み伏せ、外へと追い払ったのである。

 それを見ていた従業員や客達から噂が広まり、今では色々な店から警備を依頼される等、ちょっとした有名人になっていた。


「お互い様ね……」

 そう皆で苦笑し合ったのは記憶に新しい。


 そんな訳で当初の目的でもあった、スコルフィオとの面会は、4人が有名になる事に、着実に現実味が増していっていたのだった。


「じゃあ私達もそろそろ出掛けましょうか」

 特訓から一休みし、時間は昼を少し過ぎた頃。

 頷くランシュを伴いやって来たのは、依頼初日に訪れた娼館であった。


「おや2人共いらっしゃい。今日もよろしく頼むよ」

「店長さん、おはようございます。今日もよろしくお願いします」


 出迎えたのは初日に色々と説明してくれた中年の女性。

 後々知ったのだが、どうやらこの女性がこの娼館の店長らしく、挨拶を返すレイ。


「そういえば前紹介した店の子達がとても喜んでたわよ?とても優しくて頼りになるって。正式にウチで働いて欲しいって言ってたから、あの子達はウチのさね!って言ってやったわ」

「アハハ……恐縮です」


 そしてこの女性、この国ではかなり顔が広いらしく、他の店からの依頼等の斡旋も彼女がしてくれていた。

 こちらとしては名が売れるし稼げるしで良い事なのだが、ギルドを介さずの直接依頼なので最初は不安だったレイ。


 しかし怪しげな依頼は弾いているのだろう。

 未払いだった事は1度も無く、寧ろほとんどの依頼で色を付けてくれた。

 そして何よりこっちの方が手間も無いし早いから、とは本人達の弁である。


 そんな訳で2人にとってこの女性は、この国に来てから1番世話になっている人であり、この国での活動の1番の拠点として使わせてもらっているのである。


「じゃあいつも通り、ウチの寝坊助共を起こして来てくれるかい?」

 と、早速店長から仕事を頼まれる。

 初めは意味が分からず戸惑ったのだが今では慣れたもので、ランシュと手分けして寝ている娼婦達の部屋へ赴き、起こしに行った。

 商売柄、夕方以降がメインとなる業界の為、そこで働く人達は夜遅く、果ては朝方迄働く者が大半である。

 故に昼過ぎ以降も寝ている者が多いのだが、レイ達の最初の任務はその者達の目覚まし係となる事だった。

 もちろん、最初は何故そんな事をしなければならないのかと思ったものだが、よくよく確認すれば依頼内容は店の営業の手伝いであり、その分も報酬が発生する事から渋々引き受けていた。

 今では様々な年代の同性と仲良くなれる事から、少し楽しみになってきているのは秘密である。


「ん〜……すぅ……すぅ……」

 しかしあられも無い格好で寝ている姿を目にするのは、同性と言えど少し刺激が強いのが玉に瑕だ。

 最初の部屋に入り、そのプロポーションを惜しげも無く披露している姿に少し照れつつ、レイは早速その女性を起こしにかかった。

「おはようございます。そろそろ時間ですよ、起きてください」


 何度か声を掛け、体を揺らした所でようやく反応が返ってくる。

 しかし今にも夢の中へ帰って行きそうな気配を感じ、今度は少し大きな声で呼び掛けた。

「ほら起きてください!お仕事の時間ですよ!」

「ん〜……レイちゃんが添い寝してくれたら起きる……」


 しかし寝言なのか冗談なのか、よく分からない返事をするだけであった。

 その後も何度か呼び掛けるが、一向に目を覚ます気配は無い。

 レイは諦めて奥義を繰り出す事を決意した。


「ほら、店長さん来ましたよ」

「ヒェッ……!」

 短い悲鳴と共に、勢い良く布団から起き上がる女性。


「おはようございます。そろそろ準備してくださいね」

 完全に起きた事を確認し、次の部屋へ行く為踵を返した。


「レイちゃんひど〜い〜」

 女性の怨嗟の声を置き去りに部屋を去り、こうして次々と娼婦達を起こして回るのだった。


 全員を起こし終わった後、次に訪れたのは子供達が集まっている部屋。

 そこではこの時間、教養を学ぶ為の教育が行われていた。

 この国は様々な人種、色々な文化が集まった多様な国である。

 しかし花街としての一面が濃い為、芸等の知識や教養を学ばせる事を、国を挙げて奨めていた。

 なのでこの国の識字率は意外と高い。


「お疲れ様です。そろそろ次の準備をお願いします」

「あ、お疲れ様です。分かりました、では皆さん、今日はここまで」

 教師役の娼婦に声を掛け解散させるレイ。

 娼婦が部屋を去ると、残った子供達が一気にレイへと押し寄せて来た。


「お姉ちゃんだ!」

「レイお姉さん、今日もお仕事?」

「レイ姉ちゃん!今から遊ぼ!」

「お姉様……」


 一瞬で取り囲まれるレイ。

 困り果ててランシュを見ると、そちらにも子供達の輪が出来上がっていた。


(最初は無口だから怖がられてたのに……やっぱりお姉ちゃんなのね)

 最初の頃とは大分違う光景に、驚嘆と納得を覚えるレイ。

 フィオはもちろんの事、レイや気のせいでなければあのニイルでさえ、ランシュには逆らい難い印象を受ける。

 それはやはりあの溢れ出る包容力のなせる技なのだろうか。

 などと考えつつ、仕事をこなす為思考を切り替え、子供達に言い聞かせる様に話し始めるレイ。

「お姉ちゃんも皆も、これからお仕事なので遊ぶのはまた今度ね。店長さんが呼んでるから皆行きましょう」


 途端に不満の大合唱が始まるが、それを上手く受け流しつつ全員を誘導するレイとランシュ。

 何だかんだでレイも長女だっただけに、年下の扱いは心得ているのだった。


(あの頃は、(あの子)もこんな風に無邪気だったっけ……)

 そして思い出す。

 かつて自分達もこの様に無邪気に、そして家族や国民から愛されていた時の事を。


(もし、私達がこの国に居たのなら……こんな風に笑い合えていたのかな……)


 それは有り得ざる仮定の話。

 しかしそう思わせる程の笑顔に羨ましさと、この現状を作り出した元凶の国と言う事を思い出し、複雑な感情を抱くレイなのであった。



「おい、本当にこの国に居るんだろうな?件の犯人達は」

「さ〜?それを確認する為にここまで来たんだもん。そもそもなんの関係も無い可能性も有ると説明したでしょ?」

「関係が有るにしろ無いにしろ、ここまで来たならば戦争の火種に成りうる。慎重に事を運べよ?」


 こうしてそれぞれの思惑を孕み、夜は更けてゆく。

 動乱は、すぐそこまで迫って来ていた。

如何でしたでしょうか?

いよいよ話が動き出しそうな感じですね!

新たな人物も登場し、より一層盛り上がるようにしたいと思いますので是非お楽しみに!

ではまた次回お会いしましょう!

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