花街の歴史
はいどうもニノハジです〜
1週間ぶりの更新となります。
本来のペースはこれくらいとなりますので皆様ゆっくりと待っていただければ幸いです!
さてでは今回もお楽しみください!
正式に合格判定を貰った事で、ニイルとフィオはその日から自警団の仕事を手伝う事となった。
改めて軽く自己紹介をした後、団長のミリーから仕事内容についての説明がされる。
「この国は知っての通り花街として栄えた国だ。ここに住んでる奴らは良い奴らだが、お国柄どうしても悪い奴らが普通の国よりも多く居る。そういった市民同士の問題や荒事等の対応をするのが私達自警団の仕事だ。今回君達には武力での解決の手伝いをして貰いたい。なので君達の主な仕事は何か問題が無いか街を見廻り、有ればその対応、住民から請われればその応援へと向かう、という事になる」
ギルドで聞いた内容とほぼ大差無い説明をされる。
頭を使う仕事だったのなら、荒くれ者が多い冒険者では難しいかもしれないが、腕っ節を求められているのなら冒険者でも問題無いのだろう。
ただ、勝手に暴れられても困るので入団試験を行ってはいるのだが。
その辺りはどこの国でも一緒なので特に不思議では無い。
2人が頷き、ミリーが続きを話す。
「本来なら君達の先輩が指導役として教えるのだが、今日は特別に私が就く事にする。明日からは専属の者を宛てるので今後はソイツに聞くと良い」
本来なら団長も忙しい身なのだが、2人へ関心を持つ者達が大量に居た為、2人を守る意味を込めて団長直々に指導役を行う事となった。
当の本人達はその事実を全く知る由も無いのだが。
「君達はこの国に来てまだ日が浅いのだろう?丁度良い、今からこの国を見廻りつつ色々と教えてやろう」
そうして3人は夜の花街へと繰り出す事となったのであった。
「この国、というかこの街はかつては奴隷達や金が無い者達、或いは身寄りの無い者達が集まっていたスラム街だったんだ」
ミリーが大通りを案内しながら説明する。
夜という事もあって通りは人で溢れ返っていた。
3人はそれを少し離れた所から眺め、ミリーが説明を続ける。
「かくいう私も捨てられた身でね。生きる為に色んな悪事を働いたが、そんな時とある冒険者に出会ったんだ」
この国にはかなりの数の冒険者が集まる。
それはギルドからの依頼だったり、日々の疲れを癒す為であったり。
或いは労働力の為の奴隷を買いに来たり、悪事を働きに来たり……
どうやら今も昔もそれは対して変わってはいない様であった。
「彼はかなりの強者でね。私は生きる為に彼に付いて回っては色んな事を教えて貰った。何時しかそんな子供達や奴隷達が集まり1つの組織の様な形になった。それがこの自警団の前身だな」
ミリーは歩き出し、2人もそれに付いて行く。
尚も説明は続いた。
「その頃はまだ奴隷商や貴族達が好き勝手やってたからバレない様に皆各々で行動してたんだ。人種も年齢も様々だったから集まったら目立ってしまうからね。そしてその時に居た少女がスコルフィオ様だった」
今でもこの国には様々な人種が滞在している。
こうして大通りを歩いているだけで、獣人族や森人族の亜人族や人間等様々な人が歩いているが、薄汚れてボロボロな、如何にも奴隷といった格好の人はほとんど見受けられなかった。
「スコルフィオ様もこの街で生まれ育った人でね。私の少し年上だったが、その時はまだ少女だったんだ。でもとある出来事をきっかけに不思議な力に目覚めたんだとか。そしてその力と私達皆が協力して、この街を変えていく事にしたんだ」
その言葉にニイルとフィオが、気付かれない程度に反応した。
その力とは恐らく彼女が『柒翼』と呼ばれる所以の力だろう。ニイル達はその力の事を別の名で呼ぶが、やはりスコルフィオが探していた人物で間違い無いと確信する。
ニイルとフィオがアイコンタクトを取り、互いに頷く。
「この街は小さいから、他人から見たらそうでも無いんだろうけど、私達にとってはあの日々は革命の日々だった。悪は排除し、それ以外の人達とは共存関係を築き、或いはスコルフィオ様の不思議な力でもって相手を支配し、1つの国として認められる程に迄なった」
そのままミリーは2人を伴って大通りから外れ、裏道へと入る。
1本外れただけなので、人通りもそこそこ有る通りへと出た。
「昔はどこの通りも犯罪が横行していた。物乞いの子供達や捨てられた奴隷等、見るに堪えない光景が広がっていたんだ。そんな状況を私達が壊し、スコルフィオ様が整え、今も守ってくれている」
懐かしい物を見るかの様な目をしながらミリーは話す。
恐らくまだ数十年しか経っていないであろう出来事の筈だが、その濃密な日々はどこか遠い過去の様に、語るに足る出来事だったのだろう。
「今では様々な文化が集まる花街として栄え、スコルフィオ様はこの街、いや、フィミニアの女王になり、私達もあの冒険者からこの組織を受け継ぎ、自警団としてこの国を守る為に活動しているのさ」
そうしてミリーは遠くにそびえる城を見上げる。
その目には深い感謝と尊敬の念が込められていた。
「って済まないな?関係の無い話を長々しちゃって」
ミリーが2人に振り返り、照れ笑いを浮かべながら言う。
「質問いーい?」
辺りをキョロキョロ見回していたフィオが手を挙げてミリーへと問う。
「何だ?」
「この国に奴隷みたいな格好した人達が少ないのはなんで?あんまり言いたくないけど、他の国では奴隷の扱いは大抵酷いじゃない?この国ではそんな人達が少ないなって思ったの。もしかしてこの国では奴隷制度は無いの?」
フィオの質問に、ニッコリ笑ってミリーが答える。
「この街にも奴隷制度は残っているぞ。それで経済が回ってる事は否定出来ないからな。でも、だからと言って不当の扱いをして良い訳じゃない。だからここでは、奴隷にもちゃんと人権や保障といったサポートを徹底しているんだ」
「ほう……」
それまで黙っていたニイルが感嘆の声を漏らす。
それ程迄にこの国が行っている事は異質であり、何より画期的であった。
世界各地を旅してきたニイル達だが、現在奴隷に人権を与えている国は恐らくこの国だけだろう。
大抵の国は奴隷は使い潰して当然の扱いであり、丁重に扱っていたとしても、所有物としてしか認識していない者達がほとんどである。
国を挙げて奴隷に手厚い制度を設けているのは、やはりこの国の歴史が特殊だからであろうか。
「私からもよろしいですか?先程奴隷商を認めているかの様な発言をされていましたが、この国では例えば闇商人や闇取引、所謂裏社会で行われている様なものも行われているのですか?」
確かに世界には奴隷に人権を持たせている国は存在しない。
しかし奴隷自体を禁止している国は少ないが存在する。
このズィーア大陸では不明だが、もっと東の国ではいくつか有るのは確認していた。
故に奴隷自体を認可しているのであれば、その他にも何かしら存在しているのではないかというニイルの推察だったのだが。
「あぁ、まぁ……その通りだ」
その考えは正しく、苦笑と共に肯定が帰ってきた。
「この国の成り立ちや、まだ小国という事もあって、よっぽどのものじゃ無い限りはそういう事も認可しているのは否定しない。強大な悪はその身を蝕むけど、制御出来るのであれば、悪は自分達を守る盾にもなる。私達の身を守る為なら使える物は何だって使うさ」
それに、と少し諦めを滲ませながらミリーは続ける。
「そういう人達がお客さんになるんだ。切っても切り離せないさ」
なるほど、とニイルは納得する。
少なくともこの国は、勧善懲悪の夢物語を夢想する国では無く、必要悪だと割り切れる理性と、それを制御出来る実力を持った国という事が分かった。
仮にどこかの国と戦争になったとして、財力や武力が無ければ残るのは蹂躙される未来。
そもそも相手の隠している内容を掴めば、戦争すら回避する事も可能かもしれない。
その事をきちんと理解している。
理想だけを追い続けても国は立ち行かない。
しかし、現実だけを見続けていてもその先にあるのは停滞だけである。
この国はその折り合いすらも冷静にこなせる判断力と、それを実行に移せる実力を兼ね備えている、とニイルは感じた。
(それがこの国の歴史から来るものなのか、それとも指導者の賜物なのか……)
「そういえば君達も暫くはこの街に滞在するんだろう?他に何か有れば何でも聞いてくれたまえ」
そう言うと案内を再開し、歩き始めるミリー。
「えぇ、そうですね……」
ニイルもそう言ってミリーの後を追う。
(恐らく後者だろう。国民の理解が有ろうと、たったの数十年でここまでちゃんとした国を作るのはかなり難しい筈。流石裏社会を支配するだけの事はある)
表裏関わらず人を操れるカリスマ性と手腕。
そしてそれを行えるだけの力も兼ね備えている。
ルエルの時もそうだったがやはり今回の相手も……
「一筋縄ではいかないな……」
と、そう独りごちるのであった。
如何でしたでしょうか?
結構特殊な場所故掘り下げた回となりました。
この回が上手く機能してくれれば良いのですが…
構想はあってもそれを上手くアウトプット出来ないのは、まだまだ実力不足という事ですね…
日々精進していく所存です!
ではまた次回お楽しみに!




