反撃開始
はいどうもニノハジです〜
お待たせしました…
良い所で待たせてしまって申し訳ないです…
またお付き合い頂ければ幸いです…
ではどうぞ!
「なんだと!?」
聞き慣れた、しかし有り得ざる言葉を聞き動揺を隠せないルエル。
彼の聞き間違いで無ければ、目の前のレイはこう言ったのだ。
『神性付与発動』と。
それは裏社会ですら、まことしやかに囁かれる都市伝説。
しかしその中でも上位の権力者や実力者は存在を知り、その存在になるべく関与しないという暗黙の了解が出来ている程の禁忌である。
そしてルエルもその存在を知る人物の1人であり、その部下であるベルリが実際に使っていた事から、普通の人間より身近な存在だった。
しかし先に述べた通り『神性付与』、及び『神性付与保持者』にはなるべく関与しない、というか各組織がその存在を徹底的に隠蔽している為、誰が『神性付与保持者』でどんな能力を持っているか、詳細を知り得てはいなかった。
(先程のスノウという女、奴も私の情報網には引っ掛かっていなかったが故に、その存在に気付かなかった。しかしあの能力からどこの所属かは大体検討がついてはいた。だがこの女は……)
自分の記憶をよく思い返しても、かつて自分が滅ぼしたあの国の人間に『神性付与保持者』が居たという報告は受けてはいないし、そもそも『神性付与保持者』の存在自体を知らない人間しか居なかった。
(という事はあの出来事以降、更にギリギリ迄発動しなかった事を考えるに、最近獲得したに違いない)
かつてベルリが、『神性付与』を授かって間も無い頃に言っていた言葉を思い出す。
曰く、『神性付与』は慣れるまでかなり扱いが難しい、と。
それはそうだろうとルエルも思う。
あれ程強大な力だ、それを制御出来る様にするにはかなりの労力を要するだろう。
実際、ベルリも使いこなせる迄にかなりの年月を費やしていた。
(あれは発動しなかったのでは無く、出来なかったと考えるのが妥当)
ならば多少の驚きはあれど、脅威に感じる事は無い。
確かにあの力の出処は気になるが、ニイルが神性付与保持者で有る以上、奴が授けた線は無い。
つまりこの場に自分を脅かす脅威は無いとルエルは判断する。
そもそもの話……
(何故あんな格下の小娘相手に、私が本気を出さなければならないのだ!)
「そんな付け焼き刃の力を得た所で、なんの意味も成さないという事を、教えてやりましょう!」
先程と同じ様に、大量の魔法を生み出し、レイへと向けるルエル。
彼女のルートを予測し、そのルート上に魔法を準備する。
これまでと同様にカウンターでの迎撃態勢を整えたルエルだったが、その準備していた魔法が消えた事により浮かべた笑みが消える事となる。
「は?」
その時本能が最大級の警鐘を鳴らす。
それに従って左へ回避行動をとれば、ルエルの右頬に剣によって付けられたであろう傷が出来ていた。
振り返ればレイが剣を振り抜いた状態で、肩越しにこちらを見据えている。
(何故だ!?)
再び攻撃態勢に移ろうとしているレイを見て、今度は自身に防御魔法を展開するルエル。
一瞬の内に5重の防御魔法を展開したその技量は凄まじいものだったが、次の瞬間その内の2つが突然消えて無くなってしまった。
「な……ッッッ!?」
魔法が消えたと認識した瞬間、とてつもない衝撃に襲われ後方へ吹き飛ばされるルエル。
場外ギリギリで何とか止まったが、腹部を見れば横一文字に剣閃が刻まれていた。
「がふっ!……一体……これは……!?」
血と共に疑問を吐き出すルエル。
腹部の傷については分かる、これはレイに切られた物だろう。
その証拠に全身に僅かな痺れを覚え、切られた傷は雷による高温で焼かれ、出血は止まっていた。
問題はその前だ。
(完壁に発動していた筈の魔法が掻き消された!?しかも2つも!?)
そう、レイの攻撃直前に展開した魔法防壁は確かに5つ。
しかし実際にレイの攻撃を防いだのは3つ、残り2つはレイの攻撃前に消えてしまったのだ。
まるで魔法陣が消え去ったかの様に。
(でなければここまでの深手は負わなかった!)
ルエルの魔法防壁の強度、そしてレイの攻撃力。
全てを加味した結果、5重の防壁なら完璧に防げると踏んでいた。
しかし結果は3重での防御となってしまったのだ。
致命傷は避けられたが受けた傷は大きい。
(治癒魔法で治したい所だが……)
「くっ!?」
傷の治療を行うべく、安全確保の為張った魔法障壁。
今度は10重で展開したそれが完成した瞬間、間一髪のところでレイの攻撃を防いだ。
しかし、今度は3つもの障壁がまたしても掻き消され、そしてレイの攻撃により5つの障壁を破壊される。
そうして残り2つとなってようやく止まった。
(奴自身が人には見えない速度で攻撃し、更には見えないナニカで魔法を消してくる。これでは治癒魔法を使う暇が無い!)
常に防御に専念しなければ間に合わない状況下で、治癒魔法を行う余裕は今のルエルには無かった。
(高速戦闘を行う相手に、防御に周るのは悪手だな!)
今でこそ何とか防壁で防いで居るが、それを突破しようとレイが力を込めているのが分かる。
その証拠に防壁が音を立ててひび割れて来ていた。
攻撃を防げている今の内に、少しでも回復しようと治癒魔法を構築し始めたルエルだが、目に映った状況にまたしても驚きの声を上げる事となる。
「馬鹿な!?」
攻撃を防いでいた筈の2つの障壁の内、1つがまたしても音も無く消えてしまったのだ。
そして残る1つの障壁はここで遂に……
「く……だ……け……ろぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「くそっ!」
レイの渾身の叫びと共に粉々に砕け散る。
間一髪横に飛び退いて斬撃を回避したルエルだったが、そこでレイは止まらなかった。
「逃がすかぁぁぁぁ!」
剣を振り抜いた状態から左手を伸ばして来るレイ。
ルエルは突然の行動に反応出来ない。
伸ばした左手がルエルの体に触れる直前、作成途中だった治癒魔法の魔法陣に触れる。
雷で加速された左手が、瞬く間に魔法陣を書き換えていく。
ルエルが距離を取った時には、新たな魔法が完成されていた。
「これは……ぐふっ!?」
自分に刻まれた魔法を確認しようとしたルエルだったが、再び訪れた嘔吐感に吐血し、中断を余儀なくされてしまう。
(焼かれて塞がった筈の傷が、また開いている!?)
自分の腹部を確認し、再度出血している事に気付くルエル。
更に全身に広がる違和感は……
「気に入ったかしら?」
その言葉にハッとして顔を上げるルエル。
声の主であるレイが不敵な笑みを浮かべながら、しかし目や鼻から血を流しながら続ける。
「これも貴方へのとっておきでね?魔法陣を書き換えて別の魔法にしてプレゼントしてあげたの。効果は身を持って感じているでしょう?貴方の魔力を常に喰らいながら、受けた傷を治癒させ辛くする、言わば呪いね」
確かにレイの言う通り、塞がっていた傷は開き、更に常に魔力が減り続けているのを感じる。
確かにその効果はとてつもない程恐ろしい、しかしそれ以上に恐ろしいのが……
「そんな魔法、見た事も聞いた事も有りませんね?」
「その通り、だから言ったでしょう?とっておきだって。これはかつて失われた魔法、あまりに強大で無慈悲、そして使い勝手の悪さから禁呪とされ闇に葬られた闇魔法よ」
「馬鹿な!?」
レイの言葉に声を荒らげるルエル。
確かに失われた魔法というのは数多く存在する。
それはあまりに危険だったり、無意味だったり、伝承者がおらず歴史が途絶えてしまったり。
様々な理由から、現代に伝わらなかった魔法は確かに有る。
それが他の属性ならルエルも納得出来た。
しかし闇魔法だけは別だった。
「私の知らない闇魔法等、存在する筈が無い!」
その動揺っぷりに訝しむレイ。
理解出来ないのも無理は無い。
しかしとある理由から、ルエルは闇魔法に絶対の自信を置いていたのだ。
そんな彼が知らないとなると一体……
「そんな魔法、それこそ数百年では利かない程前に失われた物の筈だ!一体貴様はどこでそれを知った!」
最早口調も崩れ、明らかに動揺しているルエルにふらつきながらもレイは答える。
「知らないわ、私も教えてもらったから。でも視れば使えるのよ。今の私なら」
その言葉に益々混乱するルエル。
(視れば使える?そんなデタラメな力が存在して良い筈が無い!)
それは魔法を扱う者にとって最大の侮辱である。
長い年月をかけて培った研鑽を一瞬で無に帰す力。
他人の事は言えないが、世界を揺るがす力であると言えよう。
「これこそが、貴方への復讐の為に得た力よ」
血が滴り落ちる凄絶な笑顔を浮かべ、レイはそう言い放つのだった。
如何でしたでしょうか?
今回はレイミスのターンでした。
前回散々やられたのでこれくらいしないとね!
という事で今回もまた期間が少し空いてしまいましたが、待っていてくださった方には感謝してもしきれません。
次回はなるべく早く上げたいな〜…と考えてはおります!
ので温かい目で見守り下さい…
ではまた次回!




