立ちはだかる絶望
はいどうもニノハジです〜
遂に始まったラスボス戦!
今回の話は中々に難産でした泣
文章おかしくないですかね?
楽しんで頂けたら幸いです泣
それではお楽しみください!
様々な色の魔法の弾幕の中を、一条の閃光が進む。
しかしまるで未来が見えているかの様に、雷の行く先々に魔法を撃ち込まれる。
見える者が見れば、レイが自ら魔法に突っ込んで行く様にも見えるだろう。
そもそも雷速を見切れる者等そうそう居ないので、その心配は皆無だが。
「くそっ!」
雷速による反射の、その常軌を逸した速度で無理やり回避するレイ。
今は何とかそれで致命傷は避けているが、その重なったダメージ、更に常に『雷装』状態による肉体的疲労、魔力消費、そして全く太刀打ち出来ない事による精神的焦りが動きを鈍らせつつあった。
(まるで奴の掌の上ね!)
新たなルートを見出そうと弾幕が薄い箇所を狙い魔法を切り払い進むが、それすらも読んでいるかの様に防がれるのだった。
この世界ではほとんど使い手の居ない、魔法を切る技術。
剣聖が得意とし、それを受け継いだレイ。
魔法が主流のこの世界において万能の様にも思える技術だが、使い手が少ない理由、デメリットもちゃんと存在する。
まず魔法の知識をしっかりと持ちながら、剣の腕も一流である事が前提の時点で、扱える者が少ないのは当然の話である。
魔法への知識が有るなら魔法師に、腕に覚えが有るならば剣士に。
どちらかに偏るのが普通で、その両方を極めようとするのは途方も無い努力と、類まれな才能が無ければ出来る事では無い。
幸いレイはその両方を兼ね備えた、いわゆる天才と呼ばれる人間であり、『雷装』状態での使用等戦闘スタイルに合致したのでこの技術を多用しているが、本来ならば効率の悪い技術なのである。
そもそも魔法とは魔法陣にて魔力を制御し、事象を改変する物である。
魔力の塊を火、水、風、土、雷の5属性のいずれかに変換、あるいは光、闇の原初属性を付与させ制御する、それが魔法である。
例えるなら魔力の塊を火属性に変換すれば炎魔法に、光属性を付与させて魔力を流せば回復魔法になる、という感じである。
つまり元をたどせば、魔法とは魔力の塊なのである。
そして魔法を切る技術とは、魔力を纏わせた剣でその魔力の塊を霧散させ、無力化させるという物なのだ。
なので当然、この技術にも魔力を使う。
相手の魔法を打ち消すだけの魔力を、魔法装填というマイナーな技術を使い、剣に込めて切る。
故にこの技術を扱うには、相手の魔法以上の魔力を剣に込める魔法の才と、それを正確に振るう事が出来る剣の腕が必要不可欠なのだ。
更に魔法には火は水で消える、という様な弱点属性が存在する。
上級魔法ともなるとそんな物は関係無い程の威力になり弱点属性は意味をなさなくなるが、それ以外の魔法に弱点属性の魔法をぶつけると、通常よりも少ない魔力で魔法を打ち消す事が出来る。
つまり弱点属性さえ突けば、魔法を切り裂くよりも少ない魔力で、安全に対抗策を生み出す事が出来るのだ。
この様な事実から、この技術は段々と廃れて行ったのである。
もちろん、この技術にもメリットは存在する。
まず剣に流すのが純粋な魔力という点である。
魔法適正がある者は、自身の得意な属性を1つ以上備えて産まれてくる。
それ以外の属性を使うとなると、得意属性よりも多く魔力が消費される。
もし仮に相手の弱点属性が自分の得意属性で無い場合、長期戦になると魔力切れを起こす可能性が高いのだ。
その点、この技術は単純な魔力であっても使用可能である。
相手の属性に関係無く、流れている魔力量が相手の魔法より上回っていれば、理論上どんな魔法も切り裂く事が可能だった。
そしてこの魔力量も、剣の腕が上がるにつれ消費を減らす事が出来る。
成長すれば純粋な剣技のみで魔法を断ち切ることが出来る、とザジは言っていた。
実際、かの剣聖は魔法装填を行わずこの剣技を披露していたが、生憎レイはまだその領域に至ってはいない。
少し逸れてしまったが、つまるところこの技術は万能では無く、扱いが非常に難しいという事である。
今の場合、レイは『雷装』状態で常に魔力を消費している。
この上、更に魔法を切り続けていたら魔力消費が馬鹿にならない。
またルエルから指摘された通り、現状レイの脳内構造は人間のソレである。
いくら体を高速で動かす事が出来るとしても、脳の処理がそれに追いつかないのだ。
ただでさえ高速で迫ってくる魔法、それ以上の速度でもって移動するレイが、大量の弾幕を切り払いながら進む。
弾幕が薄い所ならまだしも、一度に大量の魔法を処理する事は脳の処理的にも、そして肉体的にも現状不可能なのである。
もし仮にそれを行えば腕の筋繊維はズタボロになり、致命的な隙を生む事になる筈だ。
ルエルもそれが分かっているのだろう。
敢えて弾幕の薄い所を作りそこを破らせたり、突破出来ない様に弾幕を厚くしたりして、レイの道筋を限定しているのである。
(賭けに出ようにも、それすら読んでそうよね……)
一旦距離を置き、現状を打破する為思案するレイ。
まだ体が動く内に敢えて弾幕の厚い所に飛び込み、反射による回避が出来る事を祈りながら進む。
そんな案も思い浮かんだが、そもそも反射でそこまで動けるならここまで追い込まれていない。
(なら……)
こちらも魔法による、撃ち合いに持っていこうかとも考えるが、こんな細かな調整をしつつこの量の魔法を生み出している時点で、恐らく魔法技能については向こうの方が上だろう。
ニイルのお陰で知識は付いたが、まだそれを十全に発揮出来る程の技能を、レイは身に付けていなかった。
(そもそもアイツの魔力量がおかしい……)
これだけの魔法を撃っておきながら、魔力切れどころか全く息が上がってすらいない。
ルエルの部下のベルリが神性付与を使った際も、魔力消費が減っていた様に思う。
ルエルも同じ様に何かしらのタネが有るのだろう、レイはそう考えた。
相手を思い通りに動かす頭の回転の早さ。
精密な魔法操作と圧倒的な魔力量。
依然として余力を残しているこの状態で、更に奥の手も隠している可能性が有る。
「これが、私が越えなければならない壁……」
思わず口をついて出てしまうレイ。
伊達にかつて1人の力で国を滅ぼし、その後何年にも渡って裏で国家を支配してきた訳ではないらしい。
ベルリ以上の実力を持っているとは思っていたが、まさかこれ程とは……
決して折れる事は無いと思っていた決意が揺れるのを感じる。
「そろそろ分かったでしょう?貴女に勝ち目は有りませんよ?」
それを狙ったかのように、ルエルがレイに問い掛けて来た。
意識を現実に戻し、ルエルを睨みつけながらレイは口を開く。
「この程度で勝ち誇るなんて、随分見通しが甘いのね?」
その明らかな強がりの挑発も、嘲笑しながら受け流すルエル。
「私は単に事実を述べた迄ですよ?これだけの力量差を見せつけられてもまだ抗うのは、愚か者のする事です」
確かに体は傷だらけで、魔力もかなり減ってしまっている。
現状を覆すのは、今のままでは難しいだろう。
しかし敢えてレイは不敵に笑い、ルエルを挑発する。
「ハッ!それは貴方の考えが甘いだけよ!その油断が、貴方にとっての命取りだわ!」
その言葉に、どうやら無策で挑んでいる訳では無いらしいと思考するルエル。
恐らく時間稼ぎだろう。
仲間が5人を突破し、こちらに向かってくるま迄えようというのか。
しかしそれはあまりにも無謀だと、思わず失笑してしまうルエル。
なにせあのニヒルと名乗る男が相対しているのは、裏社会で活躍している者達なのだ。
実際に命のやり取りをしている、力こそが全ての世界。
そんな世界の住人たちを、一度に5人も相手にしている事実。
あの男がどれだけ強かろうとも、敗北するのは目に見えている。
チラリとそちらを伺うと、あの男は5人に取り囲まれながらも、未だに善戦していた。
それに少し驚きつつも、しかし決着にはまだ時間が掛かるだろうと考えるルエル。
「油断もしたくなりますよ。こんな雑魚相手ではね。しかしそろそろお遊びは終わりです。飽きたので貴女には死んでもらいましょう」
相手が2人になろうと自分なら勝てるだろうが、面倒な事に変わりない。
故にすぐにでも決着をつけるべく、新たな魔法を略式にて生み出すルエル。
「ガハッ!?」
瞬間レイが見えない何かに押し潰されたかのように、地面に這い蹲る。
起き上がろうにも、あまりにも強い圧力に身動きが取れない。
「これは……!?重力魔……」
「さようなら」
押し潰されているレイへと向けて、数多の魔法弾が降り注ぐ。
その後、轟音を響かせながら大爆発を起こした。
例えどんな相手がどんな力を持ち、何人居ようとも。
真っ向からねじ伏せ、叩き潰す。
それだけの実力を持っていると自負している。
故に……
「最強の私に、敵う筈無いでしょう?」
その傲慢さこそが彼の本性であり、そして力の源泉でもあった。
如何でしたでしょうか?
絶望を感じさせる程の圧倒的実力差。
これを表現するのに大分苦労しました。
上手く伝われば幸いです。
この後どうなってしまうのか!
そろそろ佳境になる予定ですので、今後の展開にご期待ください!




