因縁の対決
はいどうもニノハジです〜
今までの更新頻度に戻ってしまいました泣
楽しみにしてた方には申し訳ございません!
本来はこれくらいの頻度なので気長に待ってもらえると助かります泣
観戦場から試合場へ飛び降りるルエル。
結構な高さが有るにも関わらず、重力を感じさせない様子で降り立った。
それに沸き立ち、大歓声が巻き起こる。
「ルエル様ー!」
「国を守ってくれー!」
「悪魔達に正義の鉄槌を!」
その声に手を振りながら応え、更に声援が増す。
そのルエルの一挙手一投足をレイは見逃さまいと注視し、周りの声も全く耳に入っていない様子だった。
(良い集中状態です)
怒りで我を忘れ、冷静さを欠いていないか少し心配だったニイルは、その様子を見て安心する。
どうやらこの2年で、精神的にも少し成長したらしい。
多少の忍耐強さは獲得した様だ。
「では貴方達の相手は私が引き受けましょう。どうぞ好きな様に掛かって来なさい。あぁ、ご安心を。ちゃんと手加減してあげますからね?」
復讐相手を弟子に任せ、ニイルは残りの5人に向き直る。
「あ゛あ゛?」
「舐めてんのか!?」
慇懃無礼な物言いに、5人が一斉にニイルを睨む。
(あっさり挑発に乗って来たな……コイツら本当にルエルの部下か?)
レイの方へ意識を向けさせない為に敢えて挑発したのだが、あまりにも上手く行き過ぎた結果に苦笑しそうになるニイル。
この状況でルエルの味方をする彼等をルエルの部下と思っていたのだが、どうやら違うのかもしれない。
「なら、殺さないでおいてあげますか」
その言葉に堪忍袋の緒が切れたのだろう。
罵声を発しながら、5人が一斉にニイルに襲いかかった。
「二流共が」
まんまと挑発に乗った5人が飛び掛るのを見て、吐き捨てるように呟くルエル。
利用価値が有ると思い大金を積んだが、どうやらあまり使えそうにない様だ。
それでもあれだけの人数差だ。
いくらニヒルと名乗るあの男が強くとも、流石に負けはしないだろう。
そう考え、ルエルはレイへと問い掛ける。
「良いのですか?彼1人で5人を任せてしまっても?流石にあの人数差では厳しいのでは?」
揺さぶりのつもりで発した挑発だったが、それに全く動じず剣を抜くレイ。
「あの程度、何人来ようが彼の敵じゃないわ。」
それどころか向こうを一瞥もせず、ルエルに全神経を集中させている。
(こっちの小娘の方が余程優秀だな)
その様子に今までの試合を思い出す。
レイと良い勝負が出来たのは先程のスノウと名乗る女騎士だけで、それ以外の相手では全く歯が立たなかった。
彼女はその機動力を活かした近接戦闘を主とし、更に魔法も使用したオールラウンダーな戦い方をしていた。
自身を雷と化すあの魔法は厄介だが、少なくとも……
(近寄らせなければなんて事は……)
レイへの対策と、その為の魔法を展開しようとした矢先、一瞬で身体強化魔法を完成させたレイが間近に迫っていた。
「くっ!?」
ギリギリの所で回避し、こちらも略式による身体強化魔法を発動させる。
移動速度も、魔法発動速度も、どうやらこちらが考えるより大分速いらしい。
むしろ略式による魔法発動の早さは、通常のルエルより早いかもしれない。
少しレイに対する認識を改めなければならないと思うルエルだった。
「その年齢でそれだけの実力とは……さぞ苦労したのでしょうね?」
迫り来る剣閃を避けながら、さらなる揺さぶりを掛けるルエル。
それには動じず剣を振るい続けるレイであったが……
「あの幼かった少女が、良くここまで成長したものです」
「……っ!」
その一言に、一瞬動きが鈍ってしまう。
その隙を狙って様々な属性の魔法を作り出し、レイへと飛ばすルエル。
全て回避し事なきを得るが、またしてもレイとルエルとの間には距離が出来てしまった。
しかしそれよりも、レイにとって看過出来ない事が1つ。
「私を覚えているのか……?」
それに邪悪な笑みを浮かべ、ルエルは嬉々として叫んだ。
「もちろん!あの邪悪な国を、そしてそこに住んでいた貴女達の事は良く覚えていますよ!何せ世界征服を目論む悪の一大国家でしたからねぇ!」
それに観衆からの声援が増し、レイに対する罵倒も増えていく。
それにも全く動じず、今度はレイがルエルへと問い掛けた。
「何故私達を狙った?お前達の本当の目的は何だったんだ?」
レイの動揺を誘っていたルエルだが、一切動揺しないレイに内心舌打ちしつつ答えた。
「そんなもの、決まっているじゃないですか!貴女達が悪魔に与する世界の敵だったからですよ!」
大歓声に答えるように叫ぶルエル。
ルエルへの声援の中、それに紛れるように声量を落として続けた。
「何より貴女達一族が受け継いできたあの魔法、その技術が欲しかったんですがね。最後まで彼等は口を割らなかった」
その言葉に目を見開き、驚愕の表情を露わにするレイ。
震えそうになる声を我慢しながら、それでも何とか言葉を紡ぐ。
「たった……たったそれだけの為に、私達の国は滅ぼされたの?」
その様子に嘲笑いながら答えるルエル。
「私達にとってはそれだけの事だったのですよ」
その言葉に愕然とするレイ。
たったそれだけの理由で、国1つを滅ぼすこの男の方がよっぽど……
「悪魔じゃないか……」
そう呟くレイに、その隙を逃さず魔法を打ち出すルエル。
今の精神状態なら対応出来まい、そう考えていたルエルだが、あわや命中する寸前全ての魔法を剣で切り払った。
「ちっ……」
予想以上にレイへの揺さぶりが効いていない事、そして魔法を切り裂くという芸当に思わず舌打ちするルエル。
それを全く気にせずレイは口を開いた。
「なら見せてやる。お前が知りたかった魔法を」
脳内で魔法陣を瞬時に展開、そして魔力を流し込みレイは叫ぶ。
「『雷装』!」
瞬間雷鳴が轟き、レイの体の周りを雷が迸る。
この2年間で学んだ事を思い出す。
どんなに熱くなろうとも頭だけは冷静に。
相手のペースに乗らずに状況を判断し、そして……
「殺す!」
叫ぶと同時に雷と化し、瞬時に近付くレイ。
その剣がルエルを切り裂く寸前、地面からせり出してきた土壁が盾となり、剣を受け止める。
「はぁ!」
それも一瞬の事、裂帛の気合いの元土壁を切り裂くが、その頃にはルエルはレイから距離を取っていた。
それに油断無く剣を構え直すレイ。
その様子に笑みを浮かべながら、ルエルは口を開く。
「流石、自身を魔法と一体化する魔法。まさか雷と一体化出来る人間が居るとは思いもよりませんでした」
手を叩きながら、明らかに賞賛していない態度で更に続ける。
「しかしどれ程強力でも使い手は人間。思考や判断力等は人間のソレに準じている。ならいくらでも手は有ります」
そう言うと、ルエルは先程以上の魔法を生み出し、レイへと打ち込んできた。
しかし魔法の速度は先程と変わらず、数が多いだけ。
今の状態ならばレイは易々と避け、ルエルに肉薄出来るだろう。
最短距離のルートを見つけ、一瞬で弾幕を回避しながらルエルへと接近するレイ。
「この様にね」
「ぐっ!?」
ルエルに間近に迫った時、突然目の前に炎弾が生み出され、それに突撃する形になるレイ。
ギリギリの所で回避し後ろへと下がるが、左腕に当たり動かなくなってしまった。
油断無くルエルを見据えながら、略式にて治癒魔法を発動するレイ。
その様子を眺めながら、ルエルは答え合わせだと言わんばかりに口を開く。
「何が起こったか分からないと言った表情ですね?簡単な事です。わざと貴女が辿るであろうルートを作り出し、そこに魔法を生み出しただけ。タイミングさえ合えば、貴女が自分で魔法に突っ込みに来るという寸法です」
要はカウンターです、と続く言葉に2年前を思い出すレイ。
初めてニイル達と出会い、そしてランシュと戦った時、あの時もレイはランシュのカウンターに敗れた。
あの時よりスピードも精度も上がったと自負しているが、それでも変わらない点が有る。
「人間の脳は雷の速度に付いて来れない。いくら貴女自信が速くなろうと、貴女の脳がそれに反応出来て無いのですよ」
人間の体を動かしているのは脳である。
いくら脳を経由しない反射が有ろうとも、全ての動きを反射で行えない人間には、見て、思考し、判断して、動作する。
この一連の動きが必ず行われる。
その脳が体のスピードに付いてこれなければ、咄嗟の動きが出来ないのは必然。
ルエルはその弱点を一瞬で見抜き、的確にそこを突いてきたのだ。
「来る場所さえ分かれば、後は容易い」
レイの奥義はあまりにもあっさりと、破られてしまったのだった。
如何でしたでしょうか?
遂にレイにとってのラスボス戦が始まりました!
相手の実力は未知数ですが、一体どうなるのでしょうか!?
1番の不安は私がちゃんと分かりやすく伝えられるかという点です!泣
頑張りますので皆様どうか暖かい目で見守っていてください!
では次回もお楽しみに!




