風雲急を告げる
はいどうもニノハジです〜
何とか書き終えました!
意外な展開へとなってきますので是非お楽しみください!
では、どうぞ!
試合場に集められた選手達を見て、レイは違和感に気付く。
(1人足りない?)
そう、本来であれば8人が勝ち残っている筈が、ここには7人しか集まっていない。
(このタイミングで棄権?それとも別の……)
何か嫌な予感がする。
直感ではあるがそう感じた時、それが正しかったと知る事になる。
「この大会をご覧の皆様、お待たせしました」
「っ!?」
選手達7人は、デューレル王からの言葉を賜わる為に呼ばれた筈。
それが本当とは考えていなかったが、それでも何故……
「お前が……ここに居る……?」
囁く様にレイが呟く視線の先。
来賓席より姿を現したのは、因縁の相手ルエル・レオ・ナヴィスタスであった。
開会式の時、彼は姿を表さなかった。
その為レイはこの場には居ないのだと判断、その後は大会に集中していたのだが、どうやらそれは早計だったらしい。
あまりにも突然の邂逅に、様々な感情が溢れ出るレイ。
目の前が赤く染まり、今にも飛び掛ろうとした瞬間、横から肩を捕まれハッとする。
見ればニイルが首を横に振っていた。
フードを被って表情は見えないが、どうやら落ち着けと伝えたいらしい。
それにようやく落ち着きを取り戻し、深呼吸するレイ。
今はまだ戦うべき時では無い、そう自分に言い聞かせる。
落ち着いた所で改めてルエルを見ると、しかし彼はこちらを見つめ、そしてニヤリと笑みを零す。
「突然の事で皆様困惑されている事でしょう。私もこの様な事態に陥るとは思ってもみませんでした。しかし、事が事なだけに大会運営に変わり、この私が事態の説明をさせていただきたいと思います」
宰相の突然の登場に、会場のざわめきが増す。
どうやら観客にも、この状況の説明はされていない様だった。
「さて、では結論から話しますと。今、この場にテロリストが混ざっている事が判明しました」
ルエルの言葉に会場が騒然とする。
それを気にせずルエルは続けた。
「それにいち早く気付いたゴルディ選手が果敢にもテロリストに挑むも、勇戦虚しく返り討ちにされ、帰らぬ人となったのです」
そんな話は寝耳に水のレイ。
道理で参加者が1人足りない訳だ。
尚もルエルの言葉は続く。
「私はとても悲しい。ここまで勝ち進んだゴルディ選手が、この様な結末を迎える事になるとは。しかし彼の勇敢さに報いる為、一刻も早い事態解決を目指すのが私の役目だと気付いたのです!」
大仰な身振り手振りで観衆を煽動する様に、演説を続けるルエル。
「私は考えました。彼が何故、テロリストの正体に気付いたのか。彼は先程の3回戦後に正体に気付き、行動を起こしました。ならばそこにヒントが有るのではないかと。そして気付いたのです!かつて最悪の大罪人達の生き残りが、今この場に居る事に!」
マズイ……
事ここに至って最悪の展開になりつつある事に気付き、剣を抜こうとしたレイ。
しかし時既に遅く……
「そう!12年前に滅びた筈のエレナート王国の生き残りが、3回戦で正体を表したのです!」
その言葉に各所で悲鳴が上がる。
それなりに時間が経過したとはいえ、あの事件は世界でも大々的に報道された。
未だにそれを記憶し、恐怖を抱く人間は居るだろう。
「皆様がご存知の方も居る通り、私も彼らを裁く為にあの戦争に参加しました!私も生き残りが居るとは露程も思って居なかったのですが、特徴的な見た目で思い出しました!かの国の王族は薄紫色の髪をしていたのです!」
それに会場中の視線がレイへと注がれるのを感じる。
今のレイはフードを脱ぎ、その髪色が顕となっている。
そう、薄紫色の髪の毛が。
「そう!そこのレイと名乗る女がエレナート王国の生き残り!彼女はかつて自分の国を滅ぼした私を殺し、その後、この国を滅ぼす為にやってきたのです!」
「ち、違……」
咄嗟に否定しようとするレイだが、その前に観客の怒号にかき消されてしまった。
各所から畏怖の念と嫌悪の視線が集まるのを感じる。
「彼女はこの大会で私に近付く算段だったのでしょう。しかし図らずもスノウ選手の働きにより彼女の計画は頓挫したのです!この機を逃せば彼女が逃亡するのは明白!故に今ここに!彼女の公開処刑を執り行う事を宣言します!」
今度は会場から歓声が沸く。
流石はこの国の宰相、一瞬にして民衆を自分の味方にし、レイの逃げ場を絶って来たのだ。
堪らず唇を噛み締めるレイ。
「これは私の落ち度であり、故に私自らの手で引導を渡すのが筋でしょう!しかし!この国を守る為、大罪人を世に出さない為に!どうか私に力を貸していただきたい!」
その言葉で試合場に居た選手達が一斉に武器を構え、レイを睨みつけてきた。
どうやら既に手は回され、選手達もルエルの支配下に置かれている様だ。
1体1ならまだしも、人数でも不利なこの状況では逃げるのも不可能だろう。
一体どうすれば、そんな考えを巡らせている時、横からニイルが話し掛けてきた。
「ふむ……これは私の判断ミスですね。些か相手を侮り過ぎていました。まさかこれ程早く、派手に動くとは思いもよりませんでしたよ」
何を呑気な、と言いかけたレイを遮り、ニイルは続ける。
「しかしこの程度ならどうとでも出来ます。貴女が一旦撤退したいのであれば、逃がす事は可能です」
あまりの驚きに、思わずニイルを見つめるレイ。
この状況を前にして、逃げる事が出来る?
周りは実力者に囲まれ、民衆迄もが敵。
それでも尚、この状況から逃れる事が出来ると?
思わず縋るような目でニイルを見てしまう。
「しかし逃げたところで変わりはしない。貴女が世界から拒絶されている現状に、変化は起きない。問題を先延ばしにしているだけで、この先状況が好転するとも限らない」
フード越しに真っ直ぐ見つめてくるニイルの眼。
その眼は深淵のように黑く……
「この計画のメインは貴女だ。故に私達は貴女に手を貸し、力を貸し、協力を惜しみませんが、結果を他人の手に委ねてはいけない。良いですか?これは貴女の自己満足、エゴの結果だ。なら貴女の手で終わらせなさい。これは、貴女が始めた復讐劇なのだから」
そして優しい眼差しをしていた。
その眼に、そしてその言葉にレイは気付かされる。
そもそも自分が復讐なんてしなければこんな事にはならなかった。
これは全て自分が行った行動の結果で、ニイル達はそれに付き合ってくれているのだと。
どうやら心の奥底では甘えがあったのかもしれない。
自分が無理でもバケモノが仇を取ってくれるかもしれない、と。
それに気付いたレイは、自嘲気味に笑いながら前に向き直る。
そしてルエルに剣を突きつけ大声で叫ぶ。
「何を勘違いしてるの?何度も言ったでしょ?逃げるなんて事はしないって。アイツは私の獲物よ。ここであの悪魔を討ち滅ぼし、復讐を果たしてやるわ!」
それにフッと笑いながら、ニイルは被っていたフードを脱ぎ捨て言う。
「よろしい。貴女が自分の意思で戦うならば、私達も貴女の力になりましょう」
そう言うとレイの前へと出る。
そんなニイルを見た観客席から、レイよりも悲鳴が上がる。
「く、黒髪だ!」
「不幸の象徴!」
「災厄の化身!」
等の声が聞こえてくる。
ニイルを目にし、聞いていたレイの仲間の特徴と一致した事からやはりな、と、ルエルは笑う。
「皆様ご覧下さい!エレナート王国の人間はこの様に!魔人族と手を組んでいたのです!彼らは結託し、この国を、いや世界を!滅ぼすつもりなのです!」
ルエルの煽動に口々に罵倒が飛ぶ。
それを意に介さずレイは不敵に笑いながら言う。
「安心しなさい?2対1なんて卑怯な真似はしないから。貴方の相手は私一人で十分よ!」
「小娘が……」
その言葉に苛立ちを覚えるルエル。
「さて、少し早いですが貴女の力を見せる時です。死ぬ気で頑張りなさい?」
「当然!私の全てを奴に叩き込んでやるわ!」
こうして意外にも早く、最後の相手との戦いの火蓋は、切って落とされたのだった。
いかがでしたでしょうか?
まさかの最終決戦突入です笑
意外と思ってくだされば嬉しいです!
さてストック無くなりました!泣
なので次回更新は未定となります!
あ、それはいつも通りですか…
申し訳ございません、いつも無計画で…
またいつもの様に長い目で見ていただければと思います。
それではまた次回!




