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バケモノが愛したこの世界  作者: 一一
第2章 序列大会編

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22/87

雷雪の行方

どうもニノハジです〜

最近筆が乗ってるので更新感覚が短くなってます笑

これがいつまで続くのか私にも分からないところが痛い所です。

頑張って書き続けますので呆れて見捨てないでください泣

では今回もお楽しみください!

 過去に類を見ない2人の激闘。

 白熱した戦いに、それを見守る観衆達。

 しかしながら会場の気温は、それに反比例する様に下がり続けていた。


「これはスノウ選手の魔法でしょうか!?相変わらず何が起こっているのか分かりませんが、突如生まれる氷が一瞬にして砕ける光景が続いております!そしてその影響か、会場内が少し肌寒く感じられます!」


 司会が実況してる間も多数の氷が生まれ、そして砕かれていく。

 2人の戦闘は相変わらず素人目には捉えられず、特に先程以上の速度で動くレイの動きを見切れる者は、ほとんど居なくなっていた。


(体温も下がって動き難く、床も凍りついて滑りやすくなってる筈なのに、鈍るどころか速度が上がってさえいる。一体どんな魔法なのよ!)

 切り札を使ったにも関わらず捉えられないレイに、内心で歯噛みするスノウ。

 実際には『+9(ブーストナイン)』を使って以降は、新たな魔法を使用してはいない。

 ただ単純に凍っていない場所を踏み、強化された身体機能で体温を下げない様にしているに過ぎない。

 つまりは寒冷地戦闘に適応しつつあるという証左なのだが、驚くべきはその短時間でそれを可能にするレイの戦闘センスであろう。


 どちらにせよ、スノウにとってジリ貧な現状に変わりない。

 このままでは魔力切れを起こし、敗北するのが目に見えている。


(一か八か……!)

 内心を悟られない様にしつつ、賭けに出る事を決意するスノウ。


 見える者が見たら優勢に見えるレイも、内心では焦りを感じていた。

 身体強化の重ね掛けは、当然ながら魔力を多分に消費する。

 更に魔法装填も維持し続けているので、その分の魔力も馬鹿にならない。

 節約して使いたいが、この高速戦闘下、更に下がり続ける気温の所為で、身体強化を解除する訳にもいかない。


(それに彼女には神性付与(アレ)が……)

 一刻も早く決着をつけたいレイ、その無意識の深層心理も相まってか、多少強引にスノウへと攻め込んだ。


「掛かった!」

「なっ……!」

 強引に切り込まれたが、ギリギリ追霜剣で防ぐスノウ。

 直後その剣が粉々に砕け散る。

 それは2回戦でダリウム相手に見せた、相手を凍らせる技だった。

 咄嗟に避けようとするレイだが、周りの砕けた氷剣の冷気も巻き込み、以前見た時よりも広範囲を凍りつかせ、レイも巻き込まれてしまった。

 驚いた顔のまま凍りついてしまうレイ。


「これで!」

 相手を殺害するのは禁止だが、生きてさえいれば治癒出来る。

 これで終わったと思っていないスノウは、凍りついたレイの手足を砕くべく氷剣を飛ばす。


(舐め……るなぁ!)

 スノウの判断は正しかったが一歩遅かった。

 レイの意識が氷に閉ざされる間際、魔法装填を全開放し、自分諸共辺り一面を雷で吹き飛ばす。


「あああああ!」

「ぐう……!」


 危機は脱したが雷の直撃を受けた様なものだ。

 多少スノウにも雷を浴びせ吹き飛ばす事に成功したが、ダメージの深刻度はレイの方が圧倒的に上であった。


「ぐっ……!ハア……ハア……!」

 肩で息をしながら片膝を着いてしまうレイ。

 対するスノウも、度重なる雷撃によりふらつきながらも立ち上がる。


 お互い疲労困憊といった様相だが、それでも笑みを浮かべスノウが言う。

「今のでも仕留め切れないなんて、貴女本当に人間?」

 それに呼吸を整えながら立ち上がり、レイが答える。

「お生憎様、私はバケモノの弟子なの。人間程度に負けてやるつもりは無いわ」


 お互いの軽口に笑い合う2人。

 ひとしきり笑いあった所で、お互い深呼吸し見据え合う。


「本当は使いたくなかったけど、そうも言ってられないわね。まだまだ未完成だから、上手く制御出来なかったらごめんなさい?」

 そう言うとスノウは目を閉じ、奥の手を披露する為の祝詞(のりと)(つむ)ぐ。


「『神性付与(ギフト)発動(オープン)』」


 瞬間、試合場が一気に吹雪に襲われ、あらゆる物が凍りついた。

 観客席にも影響が届いているのか、観客の吐く息が白い。

 間近に居るレイは更に酷く、身体強化すら貫通し体が凍え始める。

 段々と動かなくなってくる体、見ると既に足は床と共に凍りついていた。

 このままではマズいと簡単な炎魔法を略式で生み出すが、一瞬にして消えてしまう。


「無駄よ」

 その様子を見てスノウは答える。

「そんな生半可な炎ではすぐに消えて無くなるわ。この領域内ではあらゆる物が凍りつく。どんなに貴女が速かろうと、この中で私より迅く動く事は許さない」


 1歩ずつレイに向けて歩いてくるスノウ。

 その度に増す冷気により体が凍りつき、動けなくなっていく。


「最早喋れもしないでしょう?この距離では肺すらも凍り始めている。」


 ――1歩。


「最早降参すら出来ないでしょうから、諦めて凍りついてしまいなさい。綺麗に凍れば後遺症も無く済むわよ?」


 ――1歩。


「この技を使ったのは貴女が初めてよ。お父様からも()()()()以外の人間には使うなと止められていたけど」

 そして目の前に来る頃には……


 レイは氷の彫像と化していた。

「だから誇りなさい。私にこれを使わせた事を。そして安らかに眠るのね」


 それを見届け、試合場を後にする為振り返るスノウ。

 出口へと歩を進め能力を解除しようとした時、脳内に声が響いた。

(これで勝ったつもり?)


 驚いて振り返るスノウ。

 目の前の光景は相変わらず氷の世界と、そこに佇む彫刻と化したレイだった。

 しかし、その凍りついた筈のレイの声が脳内に響く。

(貴方のそれ、『神性付与(ギフト)』でしょう?)

「な!?」


 幻聴では無い、確かに聴こえてくる。

 それにも驚いたが何故……

「何故神性付与(このちから)を……!?」

(知ってるわ。私も前に出会ったし。だから使わせる前に倒してしまいたかったのだけれど無理だった。これじゃ()に怒られそう)


 言ってる事は分からなかったが、しかし確かな事は分かる。

 未だに彼女は生きていて、そしてスノウの、否、裏社会の秘密まで知っているという事。

 最早試合云々関係無く、ここで殺しておくべきだと判断したスノウは、レイの周りに氷剣を生み出す。

 しかしそれに構わずレイは続けた。

(でも結果的に良かったかも。これで勝てたら本気の貴女を倒したって事になるし。貴女には勝ちたかったから。だから……倒すわ)


 レイの話に耳を貸さず、すぐに始末しようと氷剣を動かす。

 しかしレイに剣が突き刺さる直前、一言声が響く。


(『雷装』)


 瞬間激しい雷鳴と共に、レイの周りの氷が吹き飛ぶ。

 それと同時に雷撃がスノウを襲う。


「くっ!」

 襲いかかる雷撃を避けレイの居た方向を見ると、全身蒼白く輝きながら佇むレイの姿が有った。


「『+10(フルブースト)(プラス)100%(リミットカット)』」


 これこそが、この2年の間で完成させた切り札の内の1つ。

 強化魔法を限界まで強化し、雷装の出力を最大に迄引き上げる。

 これまでの修行で鍛えた肉体と魔力で、100%の『雷装』でも4分間は自由に動く事が可能となっていた。


「やっぱり本物のバケモノじゃない」

 苦虫を噛み潰した様な表情で呟くスノウ。

 向こうにも奥の手が有るとは予想外だったが、しかし未だに自分に有利な状況が続いてる筈。

 そう判断し、冷気の出力を上げながらスノウは吼えた。

「ならここからはバケモノ退治と洒落こみましょう!何時だってバケモノは人間に退治される運命なのよ!」


 レイへと氷剣を飛ばしつつ、逃げられない様に凍らせるスノウ。

神性付与(ギフト)』の範囲内では、修得している氷魔法の魔力消費を10分の1で発動可能となる。

 更に威力もスピードも段違いに上がり、更に降り続ける雪や氷から、相手の位置も判明出来るという能力まで併せ持つ。

 故にレイがどれだけ速く動けるとしても、位置を常に把握しそれより速く魔法を発動する事が出来る。

 そして、最終的に寒さによって動けなくなった所を仕留める事が出来ると考えていた。


 しかしそんな考えは甘かった事に気付かされる。


 氷剣がレイを貫く寸前、足元が凍っているのにも関わらず、一瞬で消えてしまったのだ。


「消え……がふっ!?」

 範囲内の相手を感知出来る能力で、一瞬で自分の背後に回り込まれている事を認識したスノウ。

 そして認識した瞬間に背中にとてつもない衝撃が走り、前方に吹き飛ばされていた。

 吹き飛ばされながらもレイを凍りつかせようとするスノウ。

 しかしまたしても気付いた時には、今度は腹を思い切り殴られていた。


「ゲホっ!」

 たまらず蹲るスノウ。

 何が起こっているのか全く理解出来ず困惑している中、レイの声が頭上から降り注ぐ。

「地味に反応してるわね貴女。知覚能力も向上しているのかしら?でも残念。人間は、雷を知覚出来ても反応は出来ないでしょう?つまりそういう事よ」


 理解は出来るが納得出来るかと心の中で叫ぶスノウ。

 確かに雷の速度は人間の反応速度を超えている。

 そこに居ると分かっても、体が反応出来なければ意味は無い。

 つまり彼女自身が雷に成ったと言っているのだ。

 そんな魔法聞いた事も無い。

 自身を自然現象と同レベルにしてしまう等、それこそ今スノウが吹雪を引き起こしている様に、『神性付与(ギフト)』と同じではないか。


 そこまで考えたところで、逆に落ち着きを取り戻すスノウ。

 自身の体温が限りなく低くなっているのも有るが、相手が自身と同じ神性付与保持者(セルヴィ)だと思えば良いのだと気付く。


(こういう時、冷静になれるのもこの能力のお陰ね)

 内心でほくそ笑みながら、冷静にこの相手への対処を考える。


 立ち上がりながら相手の様子を観察するスノウ。

 この吹雪の中、今では寒さも感じていない様で、更に雪も彼女の体に届く前に蒸発している。


(凍らせても意味は無さそう。でも本来の雷は人間の形を成さない。なら……)

 思考をまとめた所で、レイの姿が消える。

 またしても知覚した瞬間に、今度は顔面を殴られていた。

(今!)

 衝撃に意識が飛かけるも魔法を発動するスノウ。


 吹き飛ばさながらもレイを見れば、殴った右手から血が滴り落ちていた。


「へぇ……」

 思わず感嘆の声を上げるレイ。

 まさかこの短時間に攻略方法を考えつくとは、思ってもみなかった。


「やっぱり……」

 立ち上がりながら確信を持ってスノウは呟く。

「人の形を成してて、こうして物理的に殴っているのであれば、常に雷な訳では無いと思ったんだけど当たりの様ね。攻撃する瞬間には実体化する。そこを狙えば良いだけだわ」


 つまりはカウンターで攻撃すると宣言しているのだが、これはほとんどハッタリである。

 実は先程の攻撃もたまたま上手く当たっただけで、殴られたと知覚してからのカウンターでは遅いのである。

 そして何より雷の速度で攻撃されている。

 その攻撃力は凄まじく、今意識があるのも奇跡だとスノウは感じていた。

 全て理解した上で言っているのでとどのつまり……


(負け惜しみね)

 なんて心の中で自嘲してしまう。


 しかしこの状況でも対抗手段を見つけた事は驚愕に値する。

 レイは素直に賞賛した。

「確かにその通りよ。私もまだまだだからカウンターが弱点なの。まさかそれを見抜くなんて、やっぱり貴女凄いわ」


 自分のハッタリが効いてる事に安堵しつつ、それ以外の攻略方法を見つけるべく、レイを観察する。

 しかしそれを警戒してか、すぐさま消えるレイ。

 カウンターを受けない様に工夫してくるだろう事は容易に想像できる。

 であれば。


「これならどう!?」

 自身の周りに大量の氷剣を作り出す。

 これで接近されても自ずと剣に突き刺さる筈。


 しかし目の前に突然現れたレイは、全ての剣をすり抜けながら手をスノウの胸に当てる。

「残念。当たる瞬間、インパクトの場所が実体化されるだけで、他の場所は実体化してなくても良いの」


 その言葉を最後に、スノウの体の内部から電撃が発せられ、あまりの衝撃に意識を失った。


 スノウが倒れると同時に吹雪は止み、辺り一帯の氷が砕け出す。

 こうして雷と氷の自然災害対決は、雷の勝利で幕を閉じたのであった。

いかがでしたでしょうか?

過去一長くなりました...

分けようかとも思ったのですがキリがいい所まで書かないと中途半端になりそうだったのでそのまま書かせてもらいました。

ここまで読んでもらえたら嬉しい限りです。

次回は多分これ程長くないと思いますので!

ではまた次回お楽しみに〜!

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