表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バケモノが愛したこの世界  作者: 一一
第2章 序列大会編
14/79

幕間〜暗躍する闇〜

はいどうもニノハジです〜

今回から第2章始まります!

新たな敵、そして伏線が出てきます!

前章は完全にプロローグだと思っていただければ幸いです。

ではどうぞ!

聖暦1590年


「ではこれにて失礼致します、陛下。」


 ここはセストリア王国の首都セスト、その中心にそびえ立つ王城。

 その奥、厳重な警備が敷かれた執務室からこの部屋の、というよりこの王城の主に挨拶をして出ていく金髪の男の姿があった。

 何故謁見室では無く、こんな私的な部屋に呼ばれているかといえば、国の細かい作業の殆どをこの国の王はこの男に一任しているから、というのが理由である。

 大人数の前では、あたかも優れた為政者として振舞っては居る王だが、実際はもう国のほぼ全ての決定権を握っているのは、この男なのである。

 故に、第三者の目が届かない場所での会議は、常に執務室(ここ)と数年前から相場が決まっていた。


 10年前のあの日、男が連合軍を率いて、かの悪逆非道の国を滅ぼしてから徐々に信頼と実績を重ね、こうして現在この地位にまで上り詰めた。

 今では王は思考するのを止め、男の言いなりとなっている。

 有り体に言ってしまえば……

「傀儡だな」

 と、吐き捨てるように男は呟いた。


 いくら男が望んだ事とはいえ、流石にここまで来ると苦労が絶えない。

 かつて、最も厄介なのは賢者な敵では無く愚者な味方である。

 と、言っていた偉人が居るそうだが。

 全くもってその通りだと首肯せざるを得ない。

 今では国政のみならず、小さないざこざ、果ては国王(かれ)の夕飯に迄意見を求め出す始末。

 これではまるで赤ん坊の世話ではないか。

 いや、もう高齢だと考えると老人介護が妥当か。


 などと下手をすれば極刑物の不遜な事を考えつつ、そうして溜飲を下げながら、急ぎ足で自室へと戻る男。

 彼は今、そんな些細な事に(わずら)っている暇は無いのだ。

 そろそろ、自分が1番信頼を置ける部下からの報告が来る頃なのだから。



「もう一度、言ってくれますか?」

 自室に戻り、早速やってきた自分の()()()部下に、怒りを抑えながら言う男。


「で、ですから。遺物調査に向かっていたベルリ様とザジ様が死亡、ダル様が一命を取り留め、回収されました」

 その様子に、恐怖で震えながら報告する部下を尻目に、報告内容を反芻(はんすう)する。


 意味は分かるが理解が出来ない。

 そんな報告内容に苛立ちを募らせる男。

 そもそも失敗どころか、死ぬ事すら有り得ない様なメンツだったのだ、特にベルリは。

 男の直属の部下の中で、1番の実力者であり、そして信頼を置ける者だった。

 表立って動けない男にとって、裏工作や暗殺等、汚い仕事を数多く任せたが、彼がミスをする所を見た事が無い。

 恐らく、この国1番の実力者と名高い騎士団長と戦っても、彼は勝利を納めるだろう。

 それ程迄に彼には信頼と、それに見合うだけの実力を持っていたのだ。

 そんな男が死んだ?


「死因は?生き残りは何と言っていましたか?」

 唯一可能性があるとすれば事故死だが、そんなヘマをする様な男では無い。

 となれば誰かに殺されたかだが、それこそ1番有り得ない。

 そう思っていた男に告げられた内容は、その1番有り得ない物だった。


「冒険者の手によって殺されたそうです。ザジ様は魔剣士の女に。ベルリ様はその女に辛勝するも、仲間の男に殺された、との事です」

 との報告に男は思案する。


 ベルリを殺せる者等、そうそう居はしない。

 それが殺されたとなれば恐らく()()であろう。

 男と反りが合わない連中の中で、ベルリと対等に戦える女、そしてその後、ベルリを殺せる力を持つ男。

 そうなれば必然的に数は限られ、そしてどの派閥が手を結んでいるかは想像がつく。


 そこまで考えたところで、続く報告に驚きのあまり思考を中断し、意識を現実に引っ張られた。

「それと、にわかには信じられませんが……ベルリ様は最後、遺物を使ったそうなのです。しかしそれが破られ、最後は遺物と共に塵になったと」

「な!?」


(有り得ない!)

 過去の遺物は現代の技術では複製も、解析すら出来ない時代錯誤遺物(オーパーツ)である。

 彼には、いざという時の為の保険として、盾を生成する遺物を渡した。

 その特性故に、誰にも破られる事は無い筈である。

 そんな事は()()にも出来はしない。

 いや、もしや情報が流れていないだけで、この男以上に遺物を調査している派閥が有るというのか。

 それならば、あの盾の解除方法を知っていてもおかしくは無い。

 いや、しかし……


 そこまで考えた所で、男は部下に別の質問をした。

「他の派閥がこの国に侵入した形跡は有りますか?」


 その質問に、部下もすぐに思い至ったのだろう。

 一瞬の思案の後、ハッキリと答えた。

「有りません。彼らの動向は重点的に監視しています。その目を盗んで動く事等ほぼ不可能。よしんば出来たとしても、遺物を破れるだけ(それだけ)の大物は動かせない筈。となれば……」

「その程度の小物には不可能な芸当ですね」


 そもそも自分以上に、遺物を保持している派閥が有るとは思えない。

 もし仮に有ったとしても、遺物を解明出来ているならば、今頃派手に動いているだろう。


「ただ……」

 と同じ考えに至ったのであろう、部下が興味深い報告を上げてきた。

「全く新しい派閥の介入かもしれません」

「ほう?その根拠は?」

「ダル様の報告には、その魔剣士が魔力枯渇に陥った際、髪の色が変化したらしいのです。恐らくは偽装魔法を掛けていたのかと。その見た目が薄紫色の髪と目をしていたらしいのです」


 その報告になるほど、と思う。

 その特徴的な見た目は、かつて滅ぼしたエレナート家特有の物だ。

 魔法大国と言われたかの国が、魔法では無いにしろ遺物を調査していたとしても頷ける。


 更に部下が続ける。

「そしてベルリ様を殺害した男ですが、白が混ざった黒髪と黒目の男だったそうです」


 これにはまたしても驚かされた。

 黒髪に黒目、その見た目は()()()特有の物だろう。

 今では知る者も少ないが、かつて人間は魔人族と戦争をしていた過去が有ると言い伝えられている。

 その戦争は人間側の勝利で終わり、魔人族の生き残りは果ての南の地へと追いやられたと。

 しかしその魔法技術は、かの魔法大国をも上回る程だったそうだ。


 これで合点がいった。

 今回の敵は、エレナートの生き残りと魔人族の生き残りであろう。

 彼らが手を組み、この国に攻め込む為の尖兵として送り込まれたのだ。

 となれば……

「奴らの狙いは私の命、延いてはこの国か」

「はい?」


 小さく呟かれた声は、誰にも届かず霧散した。

 しかし敵の狙いが分かったならば対処は容易い。

 男は立ち上がり部下に指示を出した。


「至急、我が部隊に通達。今回の犯人をなるべく生きたまま捕獲、抵抗するならば死体でも構わん。ここに持ってこい。そして()()として全軍に通達。国家転覆を目論む賊がこの国に侵入した。怪しき者は我が部隊に知らせ、残りの者達で王城の守備を強化せよ、と」

「ハッ!」


 敬礼の後、部下は部屋から飛び出して行った。

 国外に迄逃げられれば難しいだろうが、この短期間でそこまで移動出来ない筈だ。

 そしてこの国の力を使えば、逃げようとする逆賊共を捕らえることは造作もないだろう。

 そうなれば。


「私の野望の為に、生き残り共(あなたたち)も役立ってもらいましょうか」


 と、ルエル・レオ・ナヴィスタスは呟くのだった。

という訳でいかがでしたでしょうか?

今回は1章と2章を繋ぐお話を入れさせて貰いました。

次回から本格的な2章が始まりますので是非楽しんでいただければ幸いです!

ではまた次回!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ