新たなる門出
お待たせしました!
最終回です!
最後まで読んで頂くと色々と分かると思いますので是非お付き合い下さい!
ではどうぞ!
ベルリとの戦いから4日が経過した。
現在レイ達4人は、かつてザジとレイが住んでいた家に居る。
ザジが死んでから誰も手入れをしていなかったのだろう。
家具等は埃を被り、傷んでいる所も多数。
周囲も雑草が生い茂り、荒れ果てていた。
1日かけて4人で手分けをし、人が住める様になったのが昨日の事である。
そして今日、今まで居た宿から荷物を全て持ち出し、当分の拠点として一先ずの完成を見たのであった。
「さて、それでは今後の事について話をしましょう」
一段落し、ランシュが入れてくれたお茶を飲みながら、ニイルが切り出した。
それを受け、レイは何故ここに居るのか、その原因であるここ数日の事を思い返していた。
あの戦闘の直後、レイは魔力枯渇で意識を失い、いつもの宿屋に運ばれた。
治癒魔法にて体の怪我は治ったが、魔力の方は完全に戻らず、翌日も安静を余儀なくされたのだった。
その夜、合流したニイルがレイにこんな事を言ってきた。
曰く。
「この国、と言いますかルエルですね。彼が私達を探している」
と。
「あの時、あの周辺には私達しか居ませんでした。更にダンジョン外から中に干渉できる魔法は存在しません。盗聴や監視も出来ない状況で考えられる可能性は1つ、恐らくあの戦闘の生き残りでしょう。そいつが戻り、ルエルに報告したと思われます」
その言葉を聞き、レイは1人の可能性に思い至った。
それはあの3人の内の1人で、1番最初に切り伏せたダルと呼ばれた男だった。
確かに彼は、もう1人の様に『雷装』で倒した訳では無い。
強化魔法で強化していたとはいえ、普通に剣で斬っただけである。
完全に殺したと思っていたのだが、どうやら一命を取り留めていたらしい。
自分の不甲斐なさに唇を噛み締めるレイ。
そんな様子を見てニイルは言う。
「まぁ相手が宰相なだけに、遅かれ早かれこうなる事は予期していましたから、そこまで焦る事はありません。ただ今の貴女ではまだルエルには勝てないのでね。少しこの地を離れようと思います。幸いにも、私達はこの地での目的は一旦は果たしましたし、行先にも当てがある」
そうして昨日、魔力が完全に戻ったレイを伴ってここにやって来たのであった。
意外と早く帰ってきちゃったなと感慨深く思っていたレイの隣で……
「かなり早く戻ってきちまったな」
と、気恥しそうに小声で呟いていたニイルには気になったが。
「彼らの動きとベルリという名前が知れ渡っていない事実を察するに、彼はあの国に仕えているというよりルエル個人に仕えていたと考えて良いでしょう。つまり暗部の人間という事ですね。宰相権限で迅速に犯人を探す事は出来るが、国を挙げての大規模な捜索には着手出来ない。そんな所ではないでしょうか」
というルエルの言葉に、回想を打ち切り改めて思案するレイ。
確かにあのダンジョンで出会った3人は、見た目や言動等、貴族や国に仕える様な人間には見えなかった。
寧ろ盗賊やならず者だと言われれば、納得出来る人間達だった。
「つまりルエル個人の捜索となれば自ずと出来る範囲は限られてきます。テデア大陸まで捜索の網を広げる事はそうそう出来ないでしょうし、仮に出来たとしても時間が掛かると思います。一先ず、逃げるにしても戦うにしても時間が稼げたと考えて良いでしょうね」
その言葉にここに来た時の事を思い出したレイ。
まさか空間転移なる魔法が存在するとは思わなかったレイは、次の瞬間には師匠の家に居たという現実に、またしても意識が宇宙へと飛び立ってしまったのだ。
そんな事を思い出しつつ、それよりも。
「逃げるなんて有り得ないわ。そりゃ今の段階では勝てないでしょうけれど、それは諦める理由にはならないもの」
と、確固たる意志を持ってレイは言った。
そう、ようやく仇の1人を倒し、あそこまで本命に近付いたのだ。
ここで諦める様ならとっくの昔に自分で命を絶っている。
故に、レイのやるべき事は決まっていた。
「私はもっと強くなる。そして今度こそ、復讐を果たしてみせるわ」
自分にも言い聞かせるように、レイはハッキリと言った。
それに満足そうに頷きながらニイルは言う。
「では2年後に行われる序列大会に参加しましょう。あの大会の優勝者には貴族の地位や大金等、ある程度の願いを叶えてもらえるそうです。そこで優勝し、宰相との謁見を申し込めば良い」
レイも名前だけなら知っていた。
序列大会。
全国の有名な強者が集まり、最強を決めるという大会。
ここ数十年で勢力を拡大し、今やズィーア大陸最大の国となったセストリア主催という事で、様々な思惑が渦巻く、良くも悪くも有名な大会である。
「ルエルは宰相という事もあり、ほとんど王宮内から動かず手段としては暗殺か、正々堂々正面から国を相手取るかしかありません。今の貴女にはどちらも無理でしょうから、これが最大のチャンスという事ですね」
しかし、とニイルは続ける。
「次回開催される序列大会は、セストリア王国の建国300年記念という事で、かつてない規模で開催されるらしいです。故に、かの国は様々な強者を呼んでいるらしいですよ。貴女にはまず、そこで勝ち進んで頂かなければなりません」
それを聞いたレイは静かに闘志を燃やす。
こんなチャンス、今後二度と来ないかもしれない。
それを考えればそんな事で尻込みしている暇など無い。
レイの意思は決まりきっていた。
「やるわ。そこで立ちはだかる奴らを全て倒し、仇敵を討ち取ってみせる」
「国家転覆罪で追われるかもしれませんよ?」
「元々私は、世界転覆を目論むエレナート家の人間として狙われているんだもの。今更国家程度、なんて事ないわ」
と、笑いながらレイは言った。
「では決まりましたね。私達の次の目標は序列大会で優勝する事。その為にこの2年間で出来る限り強くなってもらいます」
と言うニイルに、しかしレイは別の不安を覚える。
「でも良いの?3人は別の目的があるんでしょう?私を鍛えてくれるのは嬉しいけれど、そっちを優先しなきゃいけないんじゃない?」
そう、彼等はとある目的の為に、この世界を旅しているのだと言っていた。
本来の目的の方を教えてはくれなかったが、そっちは大丈夫なのかと、不安になったのである。
そんな不安そうな顔をするレイの頭を、微笑みながら撫でつつニイルは言う。
「安心しなさい、約束通り貴女の面倒は見ると以前言ったでしょう?」
それに、と少し真顔になりニイルは続ける。
「復讐はあくまで貴女がするものですから、私達は手を出しません。しかし私達も彼には少し用事が出来ましたのでね」
とニイルは答えた。
それはあの戦いの時に見せた怒りの事だろう。
ベルリが過去の遺物を使った時、ニイルだけでは無く、ランシュやフィオですら激しい怒りを見せていたのだ。
結局、あの時の怒りの理由や遺物について、彼らの力や正体すらも聞けずにいる。
あの強大な力を前に、聞くのを躊躇っているというのもあるが、彼らがあまりその話をしたがらないように感じるのだ。
今まで過酷な環境で生きてきたレイは、他人の感情やその場の空気等を敏感に感じ取る。
そうしなければ、子供が1人で生きられないからだ。
なのでレイは、いつか3人が話してくれるまで待とうと決めていたのだ。
「じゃあこれからもよろしくお願いするわ」
話題を変えるつもりで、改めて挨拶をするレイ。
それに悪い笑みを浮かべながら。
「今まで以上に辛い修行になりますよ?貴女に耐えられますかねぇ?」
なんて脅す様にニイルは言う。
それに、あれ以上に辛いのかぁ……
なんて少し遠い目をしそうになるレイに、今度は真顔になってニイルは言う。
「貴女はバケモノに成る覚悟はありますか?」
その問にレイは不敵な笑みを浮かべながら答えたのだった。
「そんな覚悟10年前から出来てるわ」
こうして始まりが終わり。
そして新たなヒトとバケモノのモノガタリが始まるのだった。
第1章
人魔邂逅編 終
いかがでしたでしょうか?
という訳で前回から散々最終回って言ってたのは
第1章の
という事でした!
騙したみたいで申し訳ないです泣
でも一旦これで区切りだからこう書くべきかな〜って思ったんですよ泣
次回からは本当の最終回の時にしか言わないようにするのでそれでご勘弁を!
さてなのでこの物語はまだまだ続きます!
活動報告ではちょっとした裏話をしようと思っているのでそちらも是非覗いてくれると嬉しいです!
ではまた次回をお楽しみに!