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バケモノが愛したこの世界  作者: 一一
第1章 人魔邂逅編

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12/87

師匠としての矜恃

はいどうもニノハジです〜

遂に決着となります。

まぁなんとかここまで書ききれて良かったなというのが1番の感想です笑

何度も言うように戦闘シーンは難しかったのですが、筆が乗り思いの外楽しみながら書けたなと思っています。

皆様にも楽しんでもらえれば嬉しいです!

ではどうぞ!

 ベルリが声のした方へ顔を向けると、そこには若い男が立っていた。

 白混じりの黒髪という珍しい髪色をした男で、全身黒の軽装をしている。


(どう見ても前衛職に見えない、魔法師か?)

 更に奥を見るとフードを被った2人組が控えている。

 こちらは完全に顔も性別も分からない。


(不気味だな)

 警戒しながらベルリはその3人に話しかける。

「なんだあんたら?今ちょっと忙しいんだ。すぐ終わらせるから用があるならちょっと待っててくれねぇか?」


 その言葉に中央のニイルが答える。

「いえ、私達が用があるのはそちらの娘でしてね?返してもらいに来たのですよ」

 そう言いながら青年が指を鳴らした直後、ベルリの足元に居たはずのレイが消え、後ろのフードの1人に抱き抱えられていた。


「は?」

「はい、ありがとうランシュ。さて、どうやら無事の様ですね?如何でしたか?強敵との戦いは」

 惚けるベルリを置き去りに、これまた惚けているレイに質問をするニイル。


「ニイル、なんでここに?」

 質問に質問を返してきたレイに、ニイルは呆れながら答えた。

「言ったでしょう?そちらに向かうと。我を忘れるから師匠の言葉も忘れるのです、この馬鹿弟子」


 その言葉にうっ……と唸りながら縮こまるレイ。

 そんな様子に苦笑しながら同じ質問を繰り返す。

「で、彼はどうでしたか?彼も復讐対象だったのでしょう?それと戦い、貴女はどう感じましたか?」


 その問に悔しそうに、涙を堪えながら、震える声でレイは答える。

「強かった。勝てなかった。悔しい……悔しいよぅ……」

「よろしい。ならばその気持ちと今日の反省点を一生忘れない様に。生きてさえいれば強くなりますよ。貴女はまだ人間なんですから」

 そう言って頭を撫でられ、堪えきれず涙を流してしまうレイ。


 この10年奴らを殺す為に生きてきた。

 この力が奴らに()()のは立証されたが、彼らを()()にはまだ及ばなった。

 それでも良いのだと言う。

 次に活かせと。

 私はまだ強くなれるのだとバケモノ(かれ)が言うのなら、信頼出来る。


「オイオイ!俺を置いてけぼりにしないでくれよ!そいつは俺の獲物だぜ!?返してくれなきゃ俺の気が収まらねぇよ!」

 そんな様子に、イライラとした感情を隠すこと無く露わにするベルリ。


「それとも何か!?お前ら全員の命を俺に差し出してくれんのか!?そうすりゃ許してやらんこともねぇぞ!?」

 なんて言い出してくる。


 それになんの感情も籠らない瞳を向け、ニイルは言う。

「レイ、よく見ておきなさい。師匠(わたし)の強さ、と言うやつを。まぁ、もうほとんど死にかけなので見る間もなく終わってしまうかもしれませんがね」

 そんな事を言いながらベルリに向かって歩き出すニイル。


「まずはてめぇからか!?こっちがボロボロだからって舐めてると死んじまうぞ!」

 そう言い、幻影を纏って斬り掛かるベルリ。

 それに、それは幻影よ!気を付けて!とレイが忠告する……暇もなく剣がニイルに届いてしまう。

 あまりにもあっさりとした決着に笑いそうになるベルリだが、剣をよく見てみると、剣の中程を親指と人差し指で摘まれていた。


「は?」

 有り得ないだろう、ベルリは純粋な剣の腕も達人級と自負している。

 更にそれが不可視となって襲って来るのだ。

 それを何故指2本で止められる?


「そんなものですか?この程度なら、仮に仕切り直したところで楽しめそうも無いですね」

「んだと!?一体どんなトリック……動かねぇ!?」

 挑発され剣を押し込もうとするが、摘まれた剣は微動だにしない。

 押しても引いても動かず、ベルリが強化魔法を使ってもそれは変わらなかった。


「なんなんだお前は!?」

「何と言われましても、私はあの子の師匠です」

 そう言いながら、あっさり剣を折ってしまうニイル。

 なまくらですねと吐き捨て、ベルリに近付いて行く。


「く、来るなぁぁぁぁぁぁぁぁ!『神性付与(ギフト)発動(オープン)』!」

 自身の内から沸き起こる恐怖を振り払うように、叫びながら『神性付与(ギフト)』を発動するベルリ。

 数多の魔法と幻影、そして重力魔法がニイルに襲い掛かる、が。


()()()()


 その一言で全てが掻き消えてしまった。


「嘘……だろ……?」

「その程度で神性付与(ギフト)などと笑わせる。高々数十年生きた位のガキが、どうして私に勝てるとお思いですか?」


 その言葉に先程のレイの言葉を思い出す。

 奴は確かに言っていた、自分をバケモノの弟子だと。

 それは何かの比喩だと思っていた。

 しかし目の前に居るのは本物の……

「バケモノだ……」

「おや、正解です。ですが気付くのが遅すぎましたね。さて、これで貴方の命は風前の灯だ。何か足掻くなら早めに行動する事をオススメしますよ?」


 その言葉に、ニイルと相対する迄感じなかった、圧倒的な死の恐怖が襲ってくるのを感じるベルリ。

 レイとの決着後、ここで死ぬと分かった時でさえ感じなかった恐怖が、生への渇望が、抑えられないほどに溢れてくる。


(嫌だ!死にたくない!死にたくない!死にたくない!死にたくない!死にたくない!ルエル様!)

 その時、思い出す。

 ルエルから授かった最終手段を。


「助けてくれ!ルエル様!」

 そう叫びながら懐から指輪を取り出し、天に掲げる。

 するとその指輪を中心に半透明な膜が広がり、ベルリを守るように展開した。


「ハハハハハ!やはりルエル様(かみ)は俺を見放さなかった!これはルエル様から授かった過去の遺物!この盾はいかなる手段を持ってしても破る事は出来ない!このまま逃げさせてもらうぜ!」


 そう、これは出発前にいざとなったら使えと渡された過去の遺物であった。

 聞いた話だが、効果はあらゆる物理、魔法の攻撃を無効化し、更に跳ね返す事が出来るのだとか。

 原理も構造も全く分からないが、なるほど確かに強力であり、現代では再現出来ない過去の遺物と言われるだけの効果だった。


 これなら無事、ここから脱出出来るだろう。

 吹き飛ばされたザジの荷物の中に、回復薬が有るかもしれない。

 それを使えば生きて戻れる。

 そんな淡い期待を抱いたベルリの希望は、しかし目の前の絶望に塗り潰された。


 明らかにニイルの様子がおかしい。

 彼の体から溢れる魔力が荒れ狂い、物理的な圧力となって全身にのしかかってくる様だ。

 この指輪のお陰で影響は無い。

 無いはずなのに、その事実を忘れる程の重圧(プレッシャー)が、ベルリに襲い掛かって来ていた。


()()()()の前で過去の遺物(それ)を使うとはいい度胸だ。それは()()()()()()()()が使って良い代物じゃあ無い」

 明らかに激高しているニイルが1歩近付いて来る事に、ベルリもまた1歩、後ろに下がる。


(こんな威圧を、恐怖を、発せれる人間がこの世に居て良いのか!?有り得ないだろ!?ルエル様ですら赤子に見えてくるレベルだぞ!?)

 最早この恐怖の前に、意識を保っている事の方が奇跡だった。

 指輪の効果が無ければ、とっくに意識を手放している。

 それは直接被害を受けていないレイも同じで、ランシュに抱き抱えられながら、恐怖で震えていた。


「褒めてやろう。俺の逆鱗に触れた事を。そして魅せてやろう。真の()()()という奴を。」


 そう言ったニイルの眼は。


「『神威賦与(ギフト)』」


 漆黒の光を、纏っていた。


「『発動(オープン)』」


 そう呟いた瞬間、

 ニイルとベルリの間の膜は塵となり、瞬く間に消えていく。

 そして。

「ぎぃやぁぁぁぁぁぁ!右手がぁぁぁぁぁ!」


 指輪も徐々に塵となり、その侵食がベルリの右手にも広がる。


「た、助け……!助けて!助けてく……!」

「そう言っていたエレナートの人々を、お前は助けたのか?」


 そうして全身塵と化したベルリは消え、静寂が戻り。


 ベルリとの戦いは呆気なく、幕を閉じたのだった。

いかがでしたでしょうか?

遂に(少しだけ)明かされたニイルの実力!

修行して強くなる王道も好きですが、俺TUEEEEも好きなのでこの作品は贅沢セットとなっております笑

さて、次回遂に最終回となります!

どんな展開となるか楽しみにしていただければと思います!

ではまた次回!

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