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バケモノが愛したこの世界  作者: 一一
第4章 ???編

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100/100

新たなる領域

はいどうもニノハジです〜

なんとこの回で100話目となります!

ここまで応援していただき、本当にありがとうございます!

引き続きよろしくお願いします!

 ――負けたくない。


 次第に音が聞こえてこなくなってきている事に気付かず、レイは(おも)う。


 何故負けたくないのか。

 これは決闘であり、負けても死にはしないのに。

 ――私の目的を達する為に、ディード(かれ)は越えなければならない壁なの。


 目的とは何か。

 ――全てを奪った『ルエル(アイツ)』に復讐する事よ。


 家族(いきるいみ)は出来た筈。

 ならばもう忘れて良いのでは?

 ――他の誰が忘れようと、これは私の願望(エゴ)で、絶対に果たさなきゃならない渇望(かて)なの。


(だから私は……)

 レイの視界から色が消えていく。

 最早限界なのだろうか、そんな折れそうになる心を叱責する様に叫ぶ。

「ここで彼に勝ちたい!」


 その答えに満足する様に。

【ならどうすれば良いかは、もう視え(わかっ)ているでしょう?】

 そんな誰かの声が聞こえた気がした……



 気付けばレイの視界に映る全てのモノが、スローになっていた。

 実際にそうなっている訳では無い。

『雷装』によって強化された知覚能力が、ゾーンに入った事により極限にまで引き上げられた事による現象だった。


 海で入ったゾーンよりも、更に深い集中状態。

 故にレイには全てが視えた。

 彼我(ひが)の距離。

 相手の視線。

 微かな筋肉の動きから、呼吸のタイミング。


 それだけでは無い。

 地面の状態や、戦闘に利用出来そうな周囲の状況。

 身体の構造が分かるのなら、相手の疲労度も理解出来て当然。

 つまり、次にディードが行うであろう動きが、手に取るように分かってしまって。


 そして未来が視えても、その動きに現状はついてこれないと言うのも解ってしまった。


 なのでそれに対応出来る様に身体が、脳が、意識する前に行動を開始する。


 今まで不可能だった、『雷装』の瞬時出力変更。

 今までどうやっても改善出来なかったその魔法陣の問題を、脳内で一瞬の内に解決する。

 どうやったのか、自分ですら理解出来ない。

 しかしこれにより、ラグ無しで出力の調整が可能となった。

 そうして出力をすぐに『100%(リミットカット)』に上昇。

 拳が来るであろう場所から予め移動し、魔力の吸収を防ぐ為出力を10%にまで下げた。

 そして予測通り拳はその場所へ向かい、虚しく空を切る。


 ディードにとって完全に想定外の動き。

 そうでなくても、その刹那の動きは今のディードには対応出来ない。

 一瞬だが、完全に無防備な状態になってしまうディード。


(その瞬間を!待っていた!)

「『制限解除(リミットオーバー)』!」

 レイの叫びと共に、全身から魔力が雷となって溢れ出す。


「っ!」

 ディードの本能が、今までに無い程の警鐘を鳴らす。

 それに従い『神性(アルカヌム)』を全力解放。

 回避行動と防御に全神経を注ぐ。


 だがその動きは、既にレイには視えていた。

 故に、その動きの先へと向かって剣を向ける。

 絶対に避けられない位置に、絶対に防げないタイミングで。

 そして、確実に溜めた魔力が無くなるであろう威力と数を。


「ハァァァァ!」

 レイの剣が、(またた)きの間に幾重(いくえ)にも振るわれる。

 全身全霊の攻撃は、今までの人生の中で1番迅く。

 その剣筋は『電磁加速魔弾(レールガン)』の速度を超え、ニイルでさえ捉えきれない程。

 周囲が視認出来たのは、薄紫に輝く剣閃の残像。


 そう、レイの異名たる『紫電』の煌めきのみだった。


 遅れてやってきた音と共に、全身を切り刻まれながら吹き飛ぶディード。

 またしても結界へと接触し、『神性(アルカヌム)』で吸収したのか、その場所に穴を開け更に飛んでいく。


 木々を薙ぎ払いながら視界から消えるディードに、全員が勝敗は決したと確信する。

 しかし、レイだけは苦い表情を浮かべていた。

 レイには視えていたのだ。

 未来予測よりも疾い動きで、いくつかの攻撃から免れた事を。


 恐らく『神性(アルカヌム)』の影響だろう。

 レイの『神威賦与(ギフト)』には、神性が含まれるモノは視えない。

 その所為で、想定より強化された肉体の動きが、予測を上回ったのだとレイは理解していた。


「ハァ……ハァ……クソ!」

 そう呟き、雷と成ってディードの後を追う。


 一同が呆然と立ち尽くすが、いち早く正気を取り戻したニイルが声を上げる。

「ハッ!?私達も追いますよ!」

 その顔は少々の焦りと()()、そして何よりレイの成長に対する喜びが浮かんでいた。


 それで全員の意識が現実へと引き戻されたのだろう。

 一同が移動を開始する中、1人だけ。


「不味い……あの方向は……」

 そう呟く長老に、誰も気付く事は無かった。



「ハァ!ハァ!クソ!やっぱアイツは楽しませてくれるぜ!まさかここまでやるとはなぁ!……ガフッ!」

 血を吐き出しながらも、楽しそうに笑うディード。

 全身は斬り刻まれ、致命傷もいくつか確認している。

 しかし脅威の再生力が絶命も、気を失う事すら許してはくれない。

 傷が治癒されていくが、完治するまで痛みは残り続ける。

 そして、その速度が今までより格段に遅い。

 もう、喰らった魔力が尽きかけている証拠だった。


「だが、俺はまだ戦えるぜ?テメェもそうだろ!?なぁ!」

 痛みに表情を歪めながら、眼前へ向けて吠えるディード。

 途端、その場所にレイが姿を現す。

 レイも似た様な表情を浮かべている事に、一際(ひときわ)愉快そうに笑いながら尚も続ける。

「テメェも限界が近いんだろ?ならここからは我慢比べといこうじゃねぇか!」


 回復した状態を確かめる様に、体を動かすディード。

 外見上は完治した様に見えているがその実、生命活動に支障の無い傷は治癒出来ていなかった。

 重大な致命傷を優先して治療した結果、そこまで魔力が回らなかったのである。

 つまり、完全に魔力の貯蓄が無くなったのだった。

(まぁ正確には()()()()し、これからの戦闘で増えるだろうが……)

 しかし大した量は吸収出来ないだろうと、ディードは考えていた。


(何せアイツの雰囲気が今までと段違いだ。あの威圧感は本気の『柒翼(おれたち)』並かそれ以上……そんなヤツ相手に楽観視は出来ねぇ)


 事実、その『柒翼』の一角であるディード自身が、これ程までに追い込まれている。

 他の『柒翼』と()()()()()()()()()()が、それでもここまで追い込まれたのは、彼の人生でも初めての経験だった。


(俺との戦いが、本物のバケモンにまで育てちまったらしい。これは()()()かもなぁ……)

 そこまで考えて()()()()()、ディードは更に荒々しく笑う。


「こんな楽しい事!止められる訳無ぇよなぁ!?」

 全身に力を込めつつそう叫ぶディードに、呆れながら剣を構えるレイ。

「私は別に戦いを楽しんでいる訳では無いわ。ただ、貴方を()()()()強くなるだけよ」

「言うに事欠いて『暴食(おれ)』を喰らうたぁ!よく吠えたぜ!レイミス・エレナート!」


 瞬間、ディードの姿がレイの視界から消える。

 今までより格段に遅い筈の動きで、そんな芸当を可能とした理由。

 それはレイと同様、移動の瞬間にだけ『神性(アルカヌム)』を発動させ、更にレイの死角へと飛び込んだからであった。


「ふっ!」

 当然、レイはその動きも視えている。

神性(アルカヌム)』の効果で、速度までは解析出来ないが、それでも軌道は分かるのだ。

 そこに、今までの戦闘から得た経験を元に予測を立て、剣を振るう。

 狙い違わずレイの剣はディードの拳を捉え、激しくぶつかり合う。


「ハァッ!」

「甘ぇ!」

 そのままその拳を弾き、今度は逆にレイが姿を消し、死角からディードを襲う。

 しかし並外れた感覚と直感で、レイの攻撃を防いだ。


(やっぱ全然吸収出来ねぇな。これだけの至近距離にも関わらず、俺の速度がまるで上がらねぇ。辛うじて吸収出来た魔力も加速と硬化でほとんど無くなっちまう。決め手に欠けるぜ)

 激しい攻防の応酬が続く中、ディードは思考を続ける。


 だが、ここでディードがとある事実に気付く。

 戦闘に夢中で気付かず、無意識に行っていた事から今に至るまで気付かなかった事。

(そういや俺も、『喰らう冥犬(ベルゼブブ)』の出力をこんなすぐに変更出来なかったな。アイツに影響されて俺も成長してるって事か?)


 どうやらレイの戦い方を見て、無意識的に学習していたのだろう。

 驚異的なセンスを持つディードだからこそ、なし得た技だった。


(なら、打つ手も有るってもんだ!)

 とある作戦を組み立てながら、ディードは内心でほくそ笑む。


 こうして、お互いを高め合いながら進む決闘は、遂に最終局面へと至るのだった。

如何でしたでしょうか?

盛り上がりも最高潮で遂に決着も間近という所で、100話となります!

色々語りたいこともありますが、ここでは語らず活動報告の方にしたいと思います!

よろしければそちらも是非!

読んでくださっている皆様、いつも本当にありがとうございます!

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