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非モテの俺がメスガキの世話をするようになった話  作者: 鬼子
第二章 『暗闇の中で』
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1 「触れるもの」

「ありがとうございました!」


 店員の声が後ろから響く。


「結局何も買わないのか?季節がどう、今しかないものもあるとか言っていたくせに」


「ここ兄ぃ。大事なのはね、季節じゃなく、今ある中で自分に必要か、そして自分が心の底から欲しいかどうかだよ」


「さっきと言ってること違くね?」


 そう言いながら車椅子を押す。


「さて、これからどうする?帰る?てか帰ろう。さぁ帰ろう。 帰る人ー!はーい!」


 俺はあまりにも帰りたいがために、自身に問い、その問いに自身で賛成する。


 車椅子を片手でゆっくりと押しながら俺は右手を天高くあげる。

 

 その光景を結喜は恥ずかしそうにみていた。


「やめてよここ兄ぃ。恥ずかしい。てかそんな帰りたいの?こんなに可愛い美少女とお出かけ出来るのに?」


「はっ!何言ってるんだ。100歩譲って結喜が美少女だとして、性格の悪さが地を這ってるだろ」


「はぁ?マジここ兄ぃ最低じゃん! 性格も良いですぅ〜」


 結喜はそう言って俺に舌をだす。


「知ってるか?結喜・・・人間は完璧じゃないんだぜ・・・」


「さっきの話しでしょ?それと私が美少女っていう事実にどう関係すんの?」


 結喜はため息を漏らしながら俺を見つめる。


「あぁ関係ある。神は二物を与えない。・・・これがどう言う意味かはよくわからんが、顔が良ければ性格が悪く、性格が良ければ顔が微妙って事だ」


「あ、言葉濁した。顔の部分は多方面に敵を作るかもしれないから逃げたでしょ?はっきり不細工って言えばいいじゃん」


 おっと。結喜ちゃん怖いこと言うね、今の時代ボコボコにされちゃうよ?


「だ・・だが。間違ってはいないぞ・・・顔は微妙でも化粧で可愛くなる。だがな、心は化粧出来ないぞ、ソウル傾向はお先真っ暗だ」


「ソウル傾向?またゲームの話?」


 と、これだからここ兄ぃは・・・と小さく呟きながら結喜は首を振った。


「はいはい。まぁいいや。帰ろ」


 結喜は呆れたようにつぶやいた。


「おい待て、結喜がそんな態度とると俺が子供みたいじゃんか」


「男はいつまでも子供でしょ?プラモとか、仮面ライダーとか、ゲーム。あと下品、ずーっとそれ」


「男はいつまでも子供?わかってないな、男って生き物は自身が楽しいと思う事をやっているだけだ、他者からの評価を気にせず強行・・・真の強者・・・あれ?ちょっと待てよ!」


 気づいたら車椅子が手を離れ、結喜は自身で操作し先に進んでいた。


 俺は小走りで車椅子を追いかけ、帰路につく。

 夕方にはなっていない。


 時間は・・・14時か・・・


 帰ってゲームでもするか。

 カラカラと車椅子を押しながらそんなことを考える。


 コンクリートの道をただ、車椅子を押しながら歩いている。


「帰ったら何するの?ここ兄ぃは」


「ゲームかなぁ」


「またぁ?」


 そんななんでもない話が心地いい。


 そんな時、目の前にある少女が見える。

 壁に手をつき、杖で地面を叩きながら歩いてくる。


 別にそれだけなら気にはしないのだが、綺麗な顔立ちに銀髪。

 日本人とはかけ離れた容姿に目を惹かれた。


「あ!哀ちゃん!」


 結喜がそう呟いた。


「え?哀ちゃん?どれ?」


「前の人前の人」


 そう言って結喜は前にいる少女を指差した。


「あれ?結喜さんの声?」


 そう言いながら少女はキョロキョロと頭を動かす。


「目が見えないのか?」


「言ったじゃん」


 結喜にそう言われた。

 言われたっけ?うーん・・


 俺は店での会話を思い出す。


「真っ暗な世界で生きるのは大変だもん」


 回想の中で結喜がそう話す。


 え?

 あれか?比喩じゃなくて、ガチ真っ暗?


「説明不足にもほどがあるだろ!」


 そんな話をしてあると、少女の白杖が車椅子に当たる。


「あ、あ、ごめんなさい!」


 謝る彼女に結喜は話しかける。


「こんにちは、哀ちゃん。どこ行くの?」


「少しお散歩です。 家の近くをウロウロとしているだけですよ?」


 そう話していた。

 だが、1人でウロウロとするだろうか。


 そういえば・・・目の見えない人はどうやって道を覚えているのだろう。


「結喜さんは?」


「私は買い物ー。近くのお店に行ってたんだ」


「もう少し詳しく説明してやれよ」


 俺がそう話すと、哀ちゃんと呼ばれた少女は体をびくりとさせた。


 そうか。

 結喜だけがいると思っていたのか。


 確かに、そうだよな。

 声がしなければ1人だと思うよな。


「あ、え?男の人もいるんですか⁉︎ 結喜さんの彼氏さん⁉︎私、邪魔ですよね!す、すいません!」


 先程までの清楚な感じがすべて何処かに吹き飛び、顔を赤ながら足早に横を通る。


 ゴツン・・・


 鈍い音が響き、後ろを見ると少女は電柱のそばでしゃがみ込んでいた


「あぅー痛い・・・」


 電柱に頭をぶつけたのだろう。

 焦ったとはいえ危ないな。


 俺は彼女にゆっくり近づく。


「大丈夫? 別に彼氏でもないし、焦らなくていいよ?」


「え、あ。そうなんですか?・・・良かったですぅ」


 そう言って少女はゆっくりと立ち上がり、確かめるように俺の腕を触る。


「あ、ありがとございます!」


「うぃ。哀ちゃん?だっけ。 俺は鳴海心。よろしくね」


「あ、私は鳳山 哀歌(とりやま あいか)です!よ、よろしくお願いします!お兄さん!」


 そう言って、哀歌は頭を下げた。


「で、ただ散歩じゃあれじゃない? どこか行きたいところあるなら、結喜と一緒に行こうか」


「い、いいんですか?」


 哀歌はそう言って少し考えたあと・・・

 口を開く。


「なら、近くの大型ショッピングモールに行きたいです!道を覚えたいので・・・」


 哀歌はそう話した。

 大型ショッピングモール・・・


 今そこから帰ってきたけど・・・

 仕方ない。提案したのは俺だ。


「お、オーケー・・・」


「よろしくお願いします!」


 哀歌は再度頭を下げる。

 頭を下げた少女とは反対に、俺は空を見上げた。

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