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非モテの俺がメスガキの世話をするようになった話  作者: 鬼子
第一章 『たった1人の』
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5 「恨み言」

 結喜の名前を呼んだのは学校のクラスメイトだった。

 普通・・・ではなく、一般的に身体に不自由がある人間は特別支援学校と呼ばれる学校、または学園に入学する。


 だが、これはあくまで推奨されるだけで、普通の学校に行っても問題はない。


 それに、結喜の場合は事故。これについては、支援学校がどんな対応をするか分からない。

 事故前からの友人はサポートもしてくれる、だから結喜の両親は普通の学校に通わせているのだ。


「げ」


 結喜はそう呟いた。

 クラスメイト、万が一嫌いなやつだとしても・・・第一声がそれなのは少し不味くないか?

 そう思ったが、実際両親と買い物中に友人に見つかったりすると気恥ずかしさというか、独特の恥ずかしさがある。


「なに?犬神も買い物?」


 少年はそう呟いた。

 結喜が車椅子に乗っていることに対して違和感を持たずに話すということは、彼は普段から結喜を見て、知っているのだろう。


風切(かざきり)も?」


 なんとか振り絞って出した言葉は、きっと彼の名前だろう。


 風切・・・珍しい名前だ


「ちょっと!未来(みらい)、これでいいの⁉︎」


 そう言って死角から飛び出してきたのは1人の女性だ。


 おそらく、風切の母親だろう。


「なんでもいいよ、母ちゃん!」


 そう言った風切を見つめ、先程思った事を再度頭に浮かべる。

 

 うんうん、両親、特に母親と買い物をしている姿を見られると少し恥ずかしいよな。お兄さんはわかるぞ。


 自身の考えに何度も共感しながら頷いていると、風切の母親と目が合う。


「あ、すいません・・・お友達?」


 風切の母親は姿勢を低くして、未来に小さく話しかける。


 頷いた未来を見て、母親は姿勢を正しこちらを見つめた。


「未来の母です。いつもお世話になっております」


 そう言って母親は頭を下げた。

 突然のことに一瞬時間が止まる。


「あ・・・」


 俺は何か言わなきゃと、喉から力無く出たのはそれだけだった。

 焦るな。友達がいなくても、挨拶くらいはしろ。


 胸を撫で、心を落ち着かせ、口を開く。


「結喜の・・・」


 俺は結喜のなんなんだ、兄・・・では無い。友達・・・では無い。親ではないし・・・保護者・・・?とも違うか・・・。まぁいい、俺が何を言おうと相手はこの場では確認できない。

 嘘連ねて、何もなく終わるならいいか。


「結喜の兄です。こちらこそ、結喜がお世話になってます」

 

 そうして、俺も頭を下げる。


 頭を下げた拍子に少し結喜の顔を覗き込むと、顔が赤くなっていた。

 ごめんね、恥ずかしいよね。もう少し頑張ってね。

 俺も帰りたいから


「お兄さん・・・?」


 そう言ったのは、風切未来だった。

 なぜか怪訝そうな顔をしている。


「・・・犬神って兄弟いないって言ってたよな?」


 ・・・世界が静寂に包まれる。

 しくじった。そんな話をするのか、今の中学生は・・・


 母親までも俺の顔を見つめる。

 面倒を回避するつもりが、面倒を呼んでしまった。

 でも、まだ行ける!


「そうなんですか?・・・あぁ・・・実の兄では無いので、結喜自身恥ずかしくていないと言ってしまったのかもしれません。申し訳ない」


 そう話すと、母親の方は何かを察したような顔をする。


「いや、でも!」


 話そうとした未来の口元を抑え、母親は何度も頭を下げている。


「じゃあ・・・すいません!私たちはこれで」


 わざとらしく腕時計を確認し、逃げるように去っていく。


「仲良いのか?」


 俺は結喜に聞いた。何気ない質問だ。友達がいれば仲がいいのか確認。当たり前のことをだろう。


「まぁ。前はね、今はあまり話さないかな」


 結喜はそう話す。

 前は・・・脚をなくす以前の話だろう


 あの事故から環境が変わった。

 それも恐ろしくだ。


 今でこそ話すが、事故に遭って数日・・・いや、もっとか。

 結喜は身内、俺とも一言も話さなかった。

 

 彼女が普通に話し始めるようになったのは最近だ。

 だが、どのくらいの期間かは覚えていない。

 そんなことを気にしている余裕はなかった。

 俺も普段と変わらないように接しようと必死になり、策を弄した。

 それが結果を実らせたかは・・・今だにわからない。


 恨むのは運命か・・・神か。

 実際に運命があるとて、その運命を神が采配しているのだとしたら・・・恨むのは神だろう。


 結喜も、結喜を轢き、脚の欠損を招いた男性・・・両者ともだ

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