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非モテの俺がメスガキの世話をするようになった話  作者: 鬼子
第一章 『たった1人の』
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3 「あの日の記憶」

 あの事故がなければ、きっと結喜は歩いていたかもしれない。


 あの事故がなければ・・・


 数ヶ月前・・・


 俺は高校の入学式にいた。

 受験は難しくはなかった。友達がいない・・・少ない分勉強に時間を使えたからだ。


 偏差値はそこそこ

 高すぎず、驚かれるような学校じゃないが、低いか高いかで言えば高い方だろう。


 場所は東京都と千葉県の間あたり、千葉の赤いマスコットの顎の下あたりの微妙な空間を少し埋め立てて街を形成したもんだから、住んでる人間も都民か県民か分からなくなる。


 いや、正確には千葉県らしいのだが、見栄を張って東京都と言い張る輩もチラホラといる。

 実際のところはどうでも良い、千葉にある夢の国の名前には東京とついてるし。


 俺はそこにある、千葉県立の高校に通っている。

 

 入学式が終わり、俺は帰路に着く。

 近所に住む犬神の娘もきているようだった。


 俺の学校の前には横断歩道がある。

 そこで事故が起きた。


 俺は校門を出て信号が青に変わるのを待つ。

 その日は雨が降っていて、道路の路面状況が悪かった。

 いや、運転手の過失だろうか。


「ここ兄ぃ!」


 そうだ。

 犬神の娘、犬神結喜は横断歩道の向こうで傘をさしながらこちらに手を振っていた。


 信号が変われば結喜はこちらに来ていただろう。

 だが、それは叶わなかった。


 車道の信号機が黄色に変わり、赤に変わる瞬間、無理やり渡ろうとしたバイクが結喜の方に突っ込んで行った。


 黄色だからギリギリ渡れると、アクセルを全開にスピードを出したは良いものの、渡れないとわかり急ブレーキ、道路にあったマンホールにタイヤが取られ・・・歩道に突っ込んだ・・・らしい


 バイクを操縦していた男性は死亡し、実際の彼の心境やバイクがどうなって歩道に突っ込んだのかはわからない。


 そこに残ったのは、多量の血と、バイクの残骸だけだった。


「結喜!」


 信号が青になるのを待てない。

 事故が発生したばかりでどちらにせよ車は動かない。


 俺は傘を放り出し、走り出す。

 結喜に近づくと既に膝から下が無く、血が溢れ出ていた。


「ゆ・・・結喜・・・」


 すでに結喜の意識はなく、倒れてる結喜を見つめる。

 結喜の周りにいた人間も何人か巻き込まれたらしいが、この時点ではそれに気づかなかった。


 突如シャッターを切る音が響く。

 雨が降っているのに、その音はしっかりと聞き取れた。


 俺は振り向き、スマホを構えて写真を撮る人間を見つめる。


「そ・・・そうだ。救急車・・・」


 焦っていて気が回らなかった。

 だが、スマホを見たことで思い出す。


 カバンをおろし、チャックを開けてスマホを取り出す。

 電源を入れると、画面が明るくなりロック画面が映し出された。


 雨の水滴が画面に付着し、タッチが上手く効かない。


「クソッ! ロックが・・・反応しない!」


 スマホは反応せず、雨で滑り手元から離れる。

 無慈悲に地面に落ち、音を立てる。


 そこで俺の心はぽっきりと簡単に折れてしまった。

 直後に救急車のサイレンが鳴り響く。

 雨で濡れた地面や建物の壁に赤いランプが反射し、それを見つめていた。


 それ以降は覚えていない。


「ここ兄ぃ?目なんか瞑ってどうしたの」


 そう言われ俺はゆっくりと目を開ける。


「いや、少し前のことを思い出してた」


「何?重要なこと?」


「まぁそこそこな」


 そう話し、ゲームセンターを出る。


「もう少し遊びたかった!」


「ダメだ、ゲームセンターは目的じゃないだろ」


 そうだ。

 まだ目的を聞いていなかった。

 いや、言っていただろうか。あの事故から俺自身ショックが大きかったのか、記憶の維持が出来なくなっている。


 それに、結喜の言う通り感情がわからない。

 喜怒哀楽は失われたような気がする。


 今は、真似をしている。

 喜怒哀楽は他者を見て、それっぽく再現しているにすぎない。

 バレてないのだから・・・多分大丈夫だろう。


「で、真の目的は?」


「洋服買いたい!」


「なら服屋だな」


 結喜の提案に乗り、服屋を目指す。

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