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非モテの俺がメスガキの世話をするようになった話  作者: 鬼子
第一章 『たった1人の』
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1 「女の子」

 真っ暗な視界に太陽の光が差し込む。

 カーテンは締め切っているはずだが、自然にはやはり勝てないのだろうか。


「人間は弱いな・・・だが俺は負けない、意地でも二度寝をしてやる」


 誰にも聞こえない独り言を呟き、布団を頭までかぶる。

 視界は闇に遮られた。

 息苦しく、暑苦しいが、寝るにはこれしか手段がない。


「妥協だ。人間何より妥協が大事。完璧なんてないし、完璧を求めるから心身ともにズタズタになるんだ。 地球も妥協して光を弱くしてくれないかな・・・ん?妥協するのは太陽か?」


 そう呟いていると、突如腹部に衝撃が走る。


「グェ!」


 鈍痛と言うのだろうか。

 少しの重みが体にのしかかる。


「ここ兄ぃ! おーきーてぇぇぇ!」


 そんな少女の声に俺はゆっくりと布団から頭を出す。

 視界に飛び込んできたのは黒髪の少女だ。

 彼女は犬神 結嬉(いぬがみ ゆき)中学1年生の女の子だ。


「結喜さんや。ここ兄ぃは土曜日なので寝ます。重いから退いてください」


 そういうが、彼女は俺の上で体をグラグラと動かしている。


「女の子に重いって言うから友達いないんじゃないの?」


「いや待て。それを言っても居なくなるのは女友達で、男友達は体重を気にしない」


「じゃあ、男の友達ならいるの?」


 結喜にそう言われ、俺は黙る。

 あれ、おかしいな。普通の子の陰口や悪口なんて言ってないのに、なんで友達がいないんだろ。


「いないことはないぞ」


「その台詞はいない人がいう台詞だよ。行けたら行くくらいに信用できない」


 このメスガキ!

 痛い所をしっかりと掘り返してくるじゃないか、誰の真似だ?


「てか、ここ兄ぃ今日私とお出かけじゃん」


 まずい。

 そんな約束もした気がしないでも無い。

 ま、忘れてるだけか。


 取り敢えず話題を移さなくては、瞼を突き破る太陽の下でショッピングとか言う運動会を開催させるわけには行かない!


「えー・・・あ。結喜髪伸びた?」


「かなりね!前は肩くらいだったけど、今は胸くらいまで伸びたぁ!」


 一瞬話題がそれたが、結喜の目が鋭く、俺を睨みつける。


「ここ兄ぃ、お出かけは?」


「今度じゃダメ?」


「それ何回目だと思ってるの!」


 そう叫びながら結喜はうわぁぁぁと暴れる。

 動く彼女に合わせるように、体の骨が軋む。


「痛い。結喜、痛い」


 突如、グラリと結喜の身体が揺れ、バランスが崩れる。


「うわぁ!」


 俺はすぐに身体を起こし、結喜の身体を抱える。

 間一髪。


「あっぶな・・・」


「あ、ありがとう。ここ兄ぃ」


 ゆっくりと身体から手を離す。

 ふわりと甘い香りが漂い、腕に当たる髪がくすぐったい。


「気をつけろよ」


「ここ兄ぃが素直に起きてればこうはならなかったけどね」


 ああ言えばこう言う。

 このメスガキはどうしてやろうか。


「てか、お出かけ!」


「一人で・・・」


 俺は言いかけてやめた。

 彼女は1人で出歩けない。


「いや、行こうか」


「うん!」


 身支度を済ませ、玄関の近くにある倉庫からあるものを引っ張り出す。

 

「頻繁に使うし、奥にしまうのやめようかなぁ」


「んー?でも大きいじゃん」


 そう、俺がもつ『あるもの』はかなりサイズがある。


「ま、散歩しながら考えるか」


 そう言って外に出てあるものを展開する。


「結喜、座っていいよ。あ、気をつけろよ!」


「わかってるよ!毎回毎回心配しすぎぃ」


 結喜はそう言って『あるもの』に座り込む。

 その『あるもの』とは、車椅子だ。


「足乗せるぞぉ」


 そう言って彼女の義足に触り、車椅子の足掛けに足を乗せる。


「これでよし!」


 俺は後ろに周り、ハンドルを握る。


「あ、タイヤのロック外し忘れた。結喜、ロックロック」


「はいはーい」


 カチャンとロックが外され、俺は歩き出す。

 

「暑いね」


「まぁな。 何?帰る?」


「帰らないわ!」


 俺のボケに結喜はしっかりと反応してツッコミを入れた。

 できた子だ。

 俺は空を見上げて、目を細めた。


 本当に暑いな

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