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硝子の壁  作者: 佐倉 夕
1/1

序章:陽光

初投稿です。拙い所が多々あるとは思いますが、お付き合い頂けたら幸いです。









 絶対に割ってはならない硝子の壁。

 それに似た何かが、俺達を隔てている。









 ベランダの窓から、柔らかな朝日が差していた。

 パジャマから学校指定のブレザーに着替えた奈美は、胸元のリボンを整えながら、小さな欠伸を漏らした。

 眠気が緩慢に頭の中を蝕んでいて、気を抜けばつい微睡んでしまう。昔から、朝は弱かった。

 とはいえ、学生の身ではノンビリと朝を過ごしてもいられない。目尻の涙を指先で拭い、両頬をペチペチと軽く叩く。痺れのようなヒリヒリした痛みが、僅かに眠気を払ってくれた。


「ん、そろそろ……」


 リビングの壁に掛けられた時計が、七時半を示している。もう家を出る時間だ。

 足下の学生鞄を肩に掛け、ポケットの中の携帯電話と財布を確認する。準備が万端なのを確かめて、リビングを玄関へと横切ろうとした時、奈美はテーブルの上に置いてある物に気付いた。


「あ……」


 青のクロスに包まれた弁当箱。奈美のものではない。一つ年下の弟の忘れ物だった。

 確か、陸上部の朝練と言っていたか。普段よりも三十分ほど早く家を出た弟の様子を思い出す。遅刻しそうだと随分慌てていたようだから、うっかり置き忘れてしまったのだろう。


 まったく、もう。


 心の中で、そう呟く。


「届けてあげなきゃ……ね」


 昼休みにでも、彼の教室を訪ねればいい。鞄の中に、自分のものよりも随分と大きな弁当箱を入れながら、奈美は考える。

 過保護な姉が教室にやってきたら、照れ屋な弟はきっと恥ずかしそうにするだろう。顔を真っ赤にして、それでも「ありがとう」だけはきちんと言ってくれるに違いない。その場面が鮮明に頭に浮かぶ。


――本当に、まったく、もう。


 もう一度、胸の内で呟いてから、奈美は玄関に向かう。

 靴を履いて、ドアを開く。家を出る直前、奈美はチラッと玄関の姿見に目をやった。

 鏡の中の女の子は嬉しそうに笑っていた。大事な大事な、可愛い弟のことを考えながら。


おかしな点や疑問点がありましたら、どんどん指摘していただきたいと思っています。

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