第1話 「狐-コン-」
※この物語はフィクションです。
実際の人物、団体とは一切関係ありません。
─ようこそ、ここは双狐神社、鳥居を潜りますか?─
▶▶ はい
▷ いいえ
あなたは信じた事があるだろうか。
人でも動物でもない、「妖怪」の存在を。
「印-いん-を授けよう」
さぁおいで。キミも今日から家族だ──。
風が吹いた。
春も終わりに差し掛かっていると言うのに、容赦なく吹き付けるそれは、僕の頬を撫でて通り過ぎてゆく
ここは双狐神社。
人と、そうでないものが入り組む場所。
だんだんと顔を出す太陽を眺めながら、いつも通り神社の掃除をしていると、フワフワとしたものに背中を撫でられた。
「おはよう、主殿♪」
フワフワとしたものの正体は、振り向くより先に僕の顔を覗き込んできた。
「白耀、挨拶は良いがイタズラはよせ」
「えぇ?つれないなぁ」
こいつは白耀。この神社に住む妖狐(狐の妖怪)だ。
イタズラ好きで楽観的。
基本的に神社の事は何一つ手伝わない。
奴いわく、「人間の為になる奉仕はしない主義」なんだそう。居候の分際で迷惑なやつだ。
「"主様を困らすな"と何度言えば分かる、無礼を働くな、白耀」
こいつは黒師。
白耀と同じく、この神社に住む妖狐。
白耀とは違って、神社の事を手伝ってくれるし、真面目で頼りになる。
「怖い顔しないでよ黒師、相変わらず寝起きは機嫌が悪いみたいだね?」
「一理も譲り無く貴様のせいだ。少しは態度を改めろ」
こいつらは双子の妖狐だ。
基本的に妖怪には「血縁」という概念がないが、こいつらは特殊な妖怪なんだと、兄さんが言っていた。
この2匹の妖狐は、はるか昔に、この神社に祀られた神を喰い殺した罪で罰せられ、この神社に封印されていたらしい。
そこを当時5歳の僕が、うっかり封印を解いてしまい、今に至る。
「主殿、時間、まずいんじゃない?」
「ん?………あああ!?!?」
白耀の言葉でふと時計を見上げると、時刻は「6時50分」
神社から学校までは遠い、電車とバスで約1時間。
遅刻は許されない。反省文なんか書いてたら、毎日の仕事に影響する。
「いってきます!!!!」
「いってらっしゃい、主殿」
一応の護衛のため、双子のどちらかは神社に残り、どちらかは僕について来ることになっている。
表向きはごく普通の高校生。
裏では、妖怪祓いの陰陽師。
決して楽しくはないこの生活を続けるのは、兄さんを助けるため。
そう、全ては、兄さんのためなのだ──。
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「陰少年と百鬼夜行」作者の天兎 えるです!
なろうサイトでの投稿は初めてですが、少しでも皆様の興味を惹ける内容になっていたら嬉しいです!!
▼次回▼
第2話 「兄-あに-」
近々更新予定です!!
次回もどうぞよろしくお願いいたします( . .)"