ポーションは万能ではないので、改良する!
通常のゴブリンより3倍ほど大きい巨体な体を持ったブラックゴブリンの猛攻が弱まってきた。
その様子を見て、間合いを取りながら戦う女拳闘士マオが叫んだ。
「あとちょっとでモンスターを倒せる! でも……」
マオの考えていることは分かる。
決め手に欠ける。
あと少し強い攻撃力があれば、ブラックゴブリンを倒せるのに……、
その時、俺はマオから出発前に渡された新ポーションのことを思い出した。
剣を左手で強く握り直し、右手でポーションが入った薬瓶を手に取る。
「俺に任せろ」
そう言って、俺は薬瓶の蓋を開けた。
「アイン、待って! そのポーションはまだ試作品だよ。また倒れちゃったらどうするのよ」
「ここで奴を倒せなかったら、どうせ俺たちは助からない。ここでやるっきゃないだろ」
俺はマオの制止を聞かずに、ポーションを一気に飲む。
ゾクッ
体の熱が一気に上昇し、枯れかけの魔力が体中を駆け巡った。
俺は剣に炎を纏わせ、奴に斬りかかった。
「これでとどめだあああ!!!!」
奴の体を斬った感触がある。剣から発せられたメラメラと立ち上る熱が奴の体を焼きつくす。
【ギャアアアアアアアアアアアアッ!!!】
奴から耳を潰すかのような大音量の断末魔が聞こえ、ドサッと倒れ伏した。
奴が倒れたのを確認した瞬間、体から力が一気に抜ける感覚がしてその場に膝をついた。
ポーションを飲んだ後の副作用が出てきたようだ……。
……なんとか倒せたなあ。
そう思った瞬間、俺の頭に拳骨が飛んできた。マオが自慢の拳闘術で容赦なく殴ってきたようだ。
「あんた、運が良かったからいいけど、もし倒せなかったらどうするつもりだったの?!」
絶妙な強さで繰り出される拳が痛い。俺は冷や汗をかきながら、弁明を言った。
「いや、多分倒せると思ってさ」
「多分ほど恐ろしいことはないわよ。アインは本当に勇者のパーティーにいたの?!」
マオは信じらんないという顔でこちらを睨みつけてくる。
そう俺アインは、かつて勇者パーティーに所属し魔法剣士の役割を担っていた。
しかし、半年前。
とある事件がきっかけで、勇者のパーティーを抜けることになったのだ。
そして目の前にいる銀髪のショートへアで拳闘術を駆使して戦い、薬師でもあるマオと俺は旅をしている。
これはポーションと体があわず勇者のパーティーを追われた魔法剣士アインが再起するまでの物語。