200年前のクズ男
予定より早く書き終わりました。
急いでダリルの執務室から先生の待つ教室に向かったが私は結局先生にこっ酷く遅刻を叱られた。けど先生の温情で授業が延長されることはなく終わた。そして私は1冊の本を抱え図書館にいた。
我が国の王宮図書館は子供が読む物語から学者の論文、王宮魔術師が読む高度な魔術師書等幅広い年齢や職業のものが読むことが出来るジャンルが揃えられていた。はっきり言って「こんなものまで!」と思う様なくだらない本もある。そしてその蔵書量は国内随一を誇る。
その為その膨大な量の本を管理する為に、城門の中に王宮とは別に専用の離宮が図書館としてあるのだ。また王宮と離宮を繋ぐ中庭は庭師により見事に手入れされた花々が咲き乱れており庭園と呼んでも良いレベルの物の為に、中庭を観賞する為に訪れる貴族もいる程だ。
私は図書館で本を探すでもなく自分のよく知っている知人を探した。そして図書館の入り口付近にはいないと判断すると奥の専門書があるエリアに移動した。すると書棚の前で台車に載った大量の本のタイトルを1冊ずつ確認している少年がいた。私は少年を発見すると迷うことなく近付いた。
「フィリップ今日は専門書の書棚にいたのね」
フィリップは私に声を掛けられると持っていた本を台車の上に置いて私に視線を合わせた。フィリップは私より2歳下の図書館職員見習いだ。艶の有る黒髪に黒目のフィリップは王宮図書館館長をしている父親の公爵に瓜二つの美貌を持った将来有望な少年だ。ちなみに先日行った貴族令嬢が主催しているお茶会では『アリステリア結婚したい貴族ランキング』で将来有望株として5位にランキングされていた。
「シェリル様こんにちは。今日は返却される本の数がいつもよりも多くて、いつもとは違う書棚に本を片付けていたんです」
「大変ね。それじゃあ今日は私は声を掛けない方が良かったかしら?」
「ちょっとくらい問題ありませんよ。僕もそろそろ休憩をしたいと思っていたんです」
仕事の邪魔をしてしまったかと思い申し訳なそうに話すとフィリップは全く気にしてしていないと首を振った。そういう所が乙女のハートに刺さるのだろう。しかも見た目も良くて将来は王宮図書館館長そして美貌の公爵家嫡男となればまだ15歳でも御令嬢方に人気なのも頷ける。
「そうなの?それじゃあサフィア様と話しがしたいんだけど呼んでもらえる?」
「また父上ですか」
フィリップは私が抱えている1冊の本に目を止めると、私が本について質問があって図書館に来たと一瞬で理解したのか大袈裟に嘆息した。
「たまには本のことなら僕に聞いてくださいよ。僕だって一応図書館職員ですよ」
「だってフィリップはまだ見習いじゃない。それにサフィア様は王宮図書館の事は誰よりも詳しいわ」
フィリップの言いたいことが分からないでもないが、私はフィリップの言葉を一蹴した。何故ならサフィアの方が詳しいのは確実だからだ。けれどフィリップは私がサフィアの素晴らしさを語ると瞬く間に尊敬する父を褒められたのが嬉しくてしょうがないと言う表情に変った。正直飼い主に懐く子犬っぽいと思う。けど私の考えなんてフィリップは何も気付かず笑顔だ。
「僕もいつか父上の様に誰よりも本に詳しい館長になってみせますよ。その時は僕を頼って下さいねシェリル様。けど今日の所はまだまだ僕は見習いですので父上を呼んで参りますので少々お待ち下さい」
フィリップは笑顔で頭を下げると台車を通路のわきに寄せ背を向け父親のいる執務室に向かったので、私はフリップの背中を見送ると近くにあった椅子に腰掛けた。そして机の上で持っていた本をパラパラと何となく捲ってみた。
フィリップが父親である館長のいる図書館内に有る執務室に行ってからさほど経たなかったと思う。フィリップが去って行った方向と同じ方向から1人の長身の男性がこちらに向かって足早に歩いて来た。脚の長さが異常に長い男性は長い黒髪を肩で緩く結び、黒い瞳はフィリップが大人になった姿を簡単に想像させる。
フィリップの父親であるサフィアだ。とても子供が2人いるとは思えない程の若々しさのサフィアは私に微笑むと胸元に軽く手を添え優雅にお辞儀をした。
「本日は我が図書館にお越し頂き有難うございます。シェリル様」
やっぱり何度見ても微笑みながらお辞儀をするサフィアは婚約者なんて欲しくないと思う私でもあまりの麗しさに見惚れてしまいそうで、アリステリア結婚したい貴族ランキングで妻帯者の為にランキング入りされなかったがランキング外で御令嬢方の人気が高いのも納得だ。確か某雑誌には『知的な横顔が素敵』『憂いを帯びた瞳にヤラれました』『愛人でもいい』等御令嬢のコメントがあった気がする。私はそんなサフィアを前に惚けてだらし無く口を開けたままになりそうな口を意識的に閉めると机にある本を閉じた。
「こんにちはサフィア。忙しいところ有難う。まずは席に掛けて頂戴」
私が机越しに正面にある椅子をサフィアに勧めるとサフィアはゆっくりと席に着いた。うん、座り方まで優雅だわ。
「有難うございますシェリル様。それで今日はどの様なご要件で?」
「今日はこの本について訊きたいことがあったの」
サフィアに私が持って来た本を差し出すとサフィアは本を捲り内容を簡単に確認し裏表紙の出版社等に目を移した。
「これは王宮図書館で貸し出している英雄譚ですね」
「ええそうよ。私が3日前にここで借りたものよ」
サフィアは裏表紙の内側にある王宮図書館所有の印を指でなぞる様に触りながら確認すると、私を正面から見つめその端正な唇を動かした。
「左様でございますか。私が拝見したところ別段おかしなところはありませんがいかが致しましたか?」
「本そのものにはおかしなところはなかったわ」
「では何故?」
サフィアは私の返答に僅かに眉を寄せたが、私は特に気にする事もなく話しを続けた。
「読んでいる時は気が付かなかったけど読み終わってから気付いたの。これはアリステリアのことがじゃないかって?この物語の中の国の風土も人々もアリステリアの人にそっくりだわ」
「物語の中の国が実在する国をモデルにされることはよくあることです」
確かにサフィアの話しは間違っていない。けれど私が言いたい事は違うのだ。私は首を横に振ると今度はもっと強い口調で口を開いた。
「違うの。この物語のアリステリアはアリステリアだけどアリステリアじゃないの。だって魔力のない王がいるの」
サフィアは眉一つ動かさず話しを聞いている。その表情からは感情の色は伺えなかったが私は構わず続けた。
「今まで沢山の本を読んだわ。その中には沢山の歴史書もあったけれど魔力がない王がいたなんて記載はなかったわ。けど本当は魔力のない王がいたんじゃないの?」
私が読んだ物語の中のたった数行の文章だったけれど、そこには確かに魔力のない王がいたと書かれていたのだ。そしてその文章を見た時から物語じゃないこの世界にも魔力を持たない王も存在していたのではないかと思えて仕方ないのだ。子供っぽい考えかもしれない。けれど私がなりたい存在がそこにはいたのだから夢見てしまうのかもしれない。それにもし私の考えが間違いだとしても今まで考えもしたことがなかったが魔力がない者が王になれない理由は何だろうと不思議で仕様がなかった。
サフィアは興奮気味に話す私の話しを最後まで聞くと数十秒何かを考える様に伏し目がちに机を見た。そして何かを決意したのか上を向くと周りに人がいないか確認して口を開いた。
「これは私のミスですね。確かに我が国には過去に魔力がない王がおりました。しかしその事実は隠蔽され全ての書物からも王の存在は消されました。ですがまさかこんな他国の本に記載されて王宮図書館にあるとは思いませんでした」
サフィアは苦虫を噛み潰したような表情で本の裏表紙を捲るとそこに記載されている他国の出版社名を指でなぞり嘆息した。私はこんなサフィアは初めて見る。
「やっぱり魔力のない王は存在したのね」
その時私は自分の考えが当たっていた事で魔力のない王への興味が最高潮に達しておりその頬は興奮で紅潮していたと思う。後から思えば聞かない方が幸せと言うこともあったかもしれないのに。
「そうですね。シェリル様は王族でありますし、何よりシェリル様の性格を考えますと、ここで私が話さないとご自身で調べられそうですのでお教えいたしますので他言無用でお願い致します」
(つまり私に調べられると面倒だと言う事かしら?)
サフィアの話し方に幾分か不満はあったけれど私はそこは我慢をする事にした。だって貴重な時間ですもの。抗議をしたせいで話しが途中で終わったりしたら困る。なのでサフィアの今の一言はなかったことにしてはっきり言った。
「勿論誰にも話さないわ」
「200年程遡る話になります。当時は魔力が有る者しか王になれないという法はなかったと言われておりました。しかし王家の直系血族は魔力がない者の方が珍しく、魔力がない者が王位に着いた記録はございません」
私はサフィアの言葉に幼い日の自分を思い出した。
サフィアの話す通り王家の直系血族は魔力持ちで生まれるものが非常に多く、それを証明する様に私のお父様も亡くなったお祖父様も従兄弟までも皆魔力が有ったのだ。そして私の様な魔力がない者は稀にしか生まれず影で出来損ないと言われていた。その為、私は幼い頃は何故自分だけ魔力がないのだろうと思いお父様に何度も何故自分だけが魔力がないのかと質問し困らせていた記憶がある。あの頃の自分は今思えば可愛かったと思う。
「ですので当時の第1王子も第3王子も魔力持ちだったと言われております。ですが第2王子は魔力がなかったと言われています」
「そうなの。けど第2王子じゃ王位継承権は2位だから王にはなれないわよね」
サフィアは私の言葉に頷くと直ぐに残念そうに言葉を続けた。
「左様でございます。ですが第1王子が病気により亡くなってしまわれたのです」
「それで第2王子が王になったのね」
今では考られないことだわ。現在も魔力がなくても王位に着く事が出来たらと思うと私は第2王子が羨ましかった。私が渇望する地位を第2王子は自分の兄が亡くなってしまった為とはいえすんなりと手に入れたのだ。
「はい、その為当時の王の死後に王位に着いたのは第2王子です。しかし第2王子は王位について半年後に殺害されたのです」
「殺害ですって」
私はあまりにも予想外の言葉に思わず目を見開いた。王族の暗殺騒動等は何処の国でもある話だが、自分が聞く話しだとは思わなかったからだ。けれどそんな私をサフィアはそれを意に介さず話しを続けた。何処までも冷静な男だ。
「ええ、シェリル様もご存知でしょうが、我が国は魔力を持つ者が魔力を持たざるものを虐げるのを禁じています。ですが現状は魔力を持つ貴族の中には、魔力を持たない者を見下し差別する者もいます」
私はサフィアの言葉に頷いた。アリステリアは魔力を持つ者が魔力を持たない者を虐げるのを禁じている。だが貴族の中には魔力を持たない者を奴隷の様に扱ったり痛ぶる者もいる。その為、不定期に王宮騎士団が奴隷商を摘発している。だが貴族は権力を使い法を掻い潜っているの者が多く中々魔力がない者への差別がなくならないのが現状だ。
「そして当時もそんな貴族にとっては魔力のない王は許せなかったのでしょう。だから魔力を持たない王を殺害した」
自分の君主を殺害とは恐ろしい話しである。けれど魔力を持たないとそれだけで敵が多いのが現実だ。事実、私を良く思わない貴族も多いからしたくもないが殺害されたと言う言葉に私は納得してしまった。
「ですがそこで終わらなかったのです。魔力がない王が亡くなった直後に、第2王子は魔族と契約し第1王子を殺害したのではと何処からか話しが広がったのです」
「……なんて言ったの今?」
いつもの様に静かに話すサフィアの言葉に私は理解が追い付かず聞き返した。
「ですから魔族と契約したと申したのです」
「魔族との契約は犯罪よ!」
私は表情も変えず話すサフィアの言葉に衝撃を受けると思わず立ち上がった。魔族との契約は大罪である。魔族との契約は魔力を持たない者でも強力な力を得る事が出来るがその代償は大きい。契約者の人格を破壊したり、自分に近し人が無惨な死に方をしたりとその代償の範囲も広く計り知れないと言われている。それを魔力なしとは言え仮にも王族が知らないはずがない。
「落ち着いて下さいシェリル様」
「え、ええ、ごめんなさい」
僅かに眉を寄せたサフィアに小さな声で謝ると私は再度椅子に座った。いくら過去の事とはいえこんな話しを平然と話せるサフィアもどうかしている。
「話しを戻しますがシェリル様のおっしゃる通り魔族との契約は大罪です。ですが噂話は恐ろしい速さで広まりました。第2王子は王になりたかったが第1王子がいる限り王にはなれない。だから魔力を持たない非力な王子は、魔力を持つ王子を殺害する為に魔族と契約したと」
「そんな…」
サフィアの言葉に口を半開きにしたまま私は固まった。いくら王位が欲しくてもやってはいけないことはある。私でもその分別はあるつもりだがその一線を超えた王族がいるとは信じたくなかった。だがサフィアの話しはそれを許さなかった。
「実際魔力を持たない者が戦闘で魔力を持つ者に勝利するのは非常に難しいのです。しかも王が魔族と契約していたなどあってはならない話しです。その為その話しを消すために王の遺体に鑑定魔術をかけて王の無実を証明しようと議会はしたのです。そしてその結果、残念な事に王の遺体には魔族の魔力の残滓が発見されたのです」
私の身体中の血の気が引く音が気がした。それは初めて聞く事実は私の想像を絶するものだったからだ。悲しみと怒りとショックが混ざったグチャグチャの感情が胸の中でぐるぐる回り吐き気がしそうだった。
「そして魔族と契約した者を王にしてしまったなどあってはならない事実です。その為、第3王子と議会はその事実を隠蔽しようと国中に箝口令を敷いたのです。第2王子が魔族と契約していたと話しを一言でも口にすれば処刑されるのです。家の中で話しをしていても誰かに密告されれば処刑され、密告者には報奨金を出す始末ですから徹底した隠蔽ぶりです。そして家族の中でもそんな噂話をする者はいなくなりました。」
私はあまりに恐ろしい話しに何を言ったらいいのか分からなかった。家の中でも外でも誰かに聞き耳を立てられていて、常に自分が殺されるかもしれない状況など気が狂うかもしれない。しかもその状況が国中に蔓延していたのだろう。もはや国そのものが病気の様だ。
「中には嘘の密告をされ処刑された者もいるそうです。そしてその時に魔力がない者は魔族と契約する危険性があると言われ、魔力のない者は王位に着くことは出来ないと法で定められ現在にいたる訳でございます」
サフィアの話しは王族のスキャンダルなんてレベルではない。第1王子を弑逆することもとんでも無い話だが、その為に魔族と契約した第2王子は犯罪者だ。犯罪者を王にする国など何処にあるのだ。国内だけでなく他国にもその事実は知れてしまったらこの国はどうなってしまうのか分からない。だからその事実を消したのだろう。
サフィアは黙り込んでしまった私を暫く見つめるとその静まり返った空気を壊す様に右手の指でトントンと机を叩いた。
「どういたしました?シェリル様」
「えっ、何でもないわ」
私はサフィアが机を叩いた音に我に返ると大きく息を吸った。どうやら私は想像を絶する悪辣な話しを聞いたショックに意識が何処かにとんでいたらしい。
「聞かない方が良かったと思っておりますか?」
「そんなことはないわ。余りにも酷い話しでなんて言ったらいいのか分からなくて…」
フィリップとあまり年齢の変わらない私が心配になったのか、俯く私をサフィアは優しげに覗き込んだ。
「シェリル様が悩む必要はありません。これは200年も前の話しでございます。それに第2王子が王位に在席していたのは僅か半年だったと言われています。ですがこの様な事が有り魔力がない王族は王位に着けないとご理解頂けたでしょうか? 」
「ええ、分かったわ。有難う」
サフィアは普段は淡々と話すのに魔力のない王の話しを聞いて、同じく魔力のない私がショックを受けたと思って気遣ってくれたのだ。そんなサフィアの優しさが嬉しくて私は頭を下げて話しをしてくれた事への感謝の気持ちを示すと心配させない様に笑顔を向けた。
「私も同じ魔力がない王族として複雑な気分だけど、200年前のことなんてどうしようもないもの。それとこの本は直ぐに返さなきゃダメよね?」
机の上の本を手で押す様にして渡すとサフィアは本を受け取り頷いたが、その顔には先程の優しさは感じられるず既にいつもの感情の読めない顔になっていた。
「そうですね。今後シェリル様の様にこの本を読んで疑問を持つ者がまた現れる可能性もないとは言い切れませんし、図書館には置いておくことは出来ません」
「やっぱりそうなるわよね。いくら私が黙っていてもこの本があったら意味がないもの」
本には罪はないだろうに図書館からこの本が無くなることが私はなんとなく残念だった。それは単純に普通に読む分には面白かったからだ。
「はい、規則ですから。それに1度図書館の本の内容も確認しないといけませんね。他にもこの様な本があってはなりませんから」
「それってサフィアがするの?」
「隠蔽された歴史を知る者は極わずかしかおりませんし、王宮図書館では私1人しか知る者はおりませんからそうなりますね」
「地獄だわ」
広い王宮図書館で1人で膨大な量の本の確認するこを想像すると自分の事ではないのにゾッとした。いつ終わるとも分からない作業だ。
サフィアは青くなった私の顔を見ると不敵な笑みを浮かべて楽しそうにしている。普段は表情が読めないのにどういう事だろうと思っているとクツクツと珍しく笑っているから尚不思議だ。
「そうですね、シェリル様がその様におっしゃるなら次期館長としてフリップに手伝わせるのもいいかもしれませんね。歴史を隠す事を代々義務付けられている者として、問題の有る本を図書館に入れない様にフィリップにもそろそろこのことを知って貰わなければなりませんからね」
あぁ、そういう事なのね。私の一言でサフィアが可愛いい息子に作業を任せる事を決めたのね。フリップの話しだと普段は真面目なのにたまにフリップに無理な量の仕事を押し付けているらしい。けどフリップがギブアップする前には手助けするらしい。なんとも変った子供への愛情表現だ。私は心の中でフィリップに仕事を増やしてしまった事を謝ったわ。
「それじゃあこれから忙しくなるのね。仕事の邪魔をしてごめんなさい。私もそろそろ行くからサフィアも昼食にしてちょうだい」
「邪魔だなんてとんでも無い。また王宮図書館においでください。」
私が椅子から立ち上がるとサフィアも椅子から立ち上がり私に最敬礼をした。それに対し私も会釈を返しその場を離れると私の後ろ姿が完全に見えなくなってからサフィアは自分の執務室に戻った。
図書館を出た時には昼食の時間を少し過ぎていた。その為急いで食堂に向かったがあんな話しを聞いた後に普通に昼食を取る気分にはなれず、私は自分の為に料理を作ってくれたシェフに申し訳ないと思いつつも料理を残してしまった。
そんな私をエマは体調が悪いのかと心配してくれたが、サフィアとの話しをエマにすることも出来ずただ少し疲れただけだと首を横に振って誤魔化した。
唯一分かったことは私は200年前のクズ男のせいで王位を継ぐことが出来ないのだ。
自分が思っていたよりファンタジーぽくなってきた気がします。