8.花
・前回のあらすじです。
『アテナ王女とマルス王子が、ユノの今後について話をする』
・・・・・・
ユノの処分は追って修正するということになった。
刑場となった広場から助け出してくれた姫と共に、ユノは城に引っこむ。
上階の席からエントランスに下りた王や兵士たちが、なにごとかを忠言したが、彼女――第二王女は聞かない。
囚人用の粗末な服をつけ、はだしのまま、ユノは白い衣装の少女についていく。
廊下や階段を複雑にまがる。
ちいさなドアの前に立つ兵士に王女は挨拶をした。
それから中へ入る。
彼女の私室には、季節の花を編んだリースや観葉植物が飾ってある。
「あぶないとこだったわね」
くだけた口調をかけられて、ユノは戸惑った。
あたりを見まわすも、室内には自分とフローラ王女のみ。
扉は閉じて、外の物音は聞こえない。
「わっかんないかなー。私よ、わ・た・し」
ヴェールの下から、粗野な台詞がした。
「え……」
それはつい先ほどまで貴人然と民衆に語りかけていた、第二王女その者の声なのだが。
ユノはにわかにへっぴり腰になる。
少女の頭のてっぺんから、足の先までを検めて、
「その、お姫さま――ですよね? ボク、初対面だと思うんですけど」
「んもーっ、鈍いわねー」
王女は頭の飾りをもどかしそうに取っぱらった。
顔を覆っていた薄布がなくなる。
「あっ」
ユノは相手を指差した。
銀色のおかっぱに、青い瞳。十四、五才ほどの、悪童然とした微笑。
まとっている衣装には不似合いな、安っぽい髪飾りが、一房の銀髪の垂れる耳元に光っている。
「ローラン!」
銀髪の少女の名前をユノはさけんだ。
思わず抱きつきそうになって――そんな根性は無いので、両手を広げたものの固まってしまう。
「……ほんとにボクの罰、どうにかしてくれたんだね」
「あったりまえでしょ」
やり場のなくなっていたユノの手をしっかり握って、フローラ王女――ローランはウインクした。
「どうにかしてやるって、言ったんだもの」