7.城内
・前回のあらすじです。
『ギロチンにかけられたユノが、いのち拾いする』
・・・・・・
(まるでペテンね)
囚人と次女のいなくなった刑場――
市民が三々五々散っていく広場を一瞥して、アテナは城内に移った。
(あの状況で、手なんてあげられるわけがないのよ)
兄のあとにつづきながら思う。
廊下をいくマルスが首をかしげる。
「どうかしたの」
「やりかたがセコイなって」
「まあ、あれくらいでなきゃ妖精とは渡り合えないしな」
青い目をマルスはうえに向けた。
飾り気のない――しかし贅をこらしたドレスにアテナは手をあてる。
肩にとまった白い鳩イリスが、きょときょとと主人の服をつっついた。
「本意じゃなかったのかい?」
「だったらフローラに手紙なんかやりません」
「じゃあ不服はあえて呑んだらどうだい」
「もうすこし品のあるやりかたをしてほしかったのよ。なのに……あんな、誘導なんて」
「二度はしないさ。彼女もああいうやり方は嫌いだからね」
妹の背をかるく押して、マルスは前にうながした。
なだめるようにつづける。
「なんにせよ僕にとってはよかったよ。ユノ君にはもうすこし、やってほしいことがあったから」
「魔王もいなくなったのに?」
形のいい眉をアテナはひそめた。
うん、とマルスはとうなずく。
「その分出てくるいざこざもある。まだ大きな動きにはなってないけど」
「戦禍ですか? そこにほうりこむの? 勇者とはいえ……負傷した戦士を」
「すぐじゃない。けど確かに、利き腕がないっていうのは大変だろうな……」
胸のまえに腕を組んで、マルスは不鮮明な声を出す。
数秒。
同じように黙考して、アテナがつぶやいた。
「……私に、あてがあります」