57.なだれ
・前回のあらすじです。
『ユノが回復のアイテムを取りにいく』
屋敷の裏手に小屋がある。
ふたりはそこにやってきた。
小屋のランプに、エバがマッチをすって火をいれる。
「うわあ」
ぽうとした明かりに、なかのようすが映った。
「ごちゃごちゃ……」
山となったかげを見あげる。
「変にさわったら、くずれてきそうですね」
「慎重に見ていくしかないね」
ユノが言った。
てきとうに放りこまれたテーブルや、ソファの家具類を横目に、エバがすすむ。
「あ、スツールあった。画家さんとかが使う感じの」
「折りたたみ?」
「はい。これでいいですよね」
隙間から入って、木と布で作った折りたたみのいすをエバがひっぱり出す。
ぐらぐら。山がゆれる。
「これは……あー!」
ドーン!
戸口のほうに山がなだれる。家具の波が、悲鳴をあげるユノを押しながす。
エバは壁際にしゃがみこんでいたため無事だった。
「ご、ごめんなさい」
「ううん……平気だから」
左手を出して、ユノはひょこひょこ動かした。
「すぐどけます」
エバは椅子を置いた。せっせと両手で上からものをどけていく。
きらっ。
「これ?」
エバは、奥から突き出た長物をつかんだ。
ランプの光にかざす。
ブロード・ソードほどの刀身をおさめるサイズの、金具と宝石で補強された鞘。
「どうかした? エバ」
ヒョッコリ。ユノは家具の下から出てきた。
くずれた道具がうまく噛み合ってできたポケットに、逃げこんだのだ。
「これ。すごい魔力を感じる」
陶然と、エバは手にしたアイテムに見入った。
「マーリンさんの言ってた”エクスカリバーの鞘”って、これのことだと思いますよ」
「どうやって使うんだろ?」
ユノはかさなり合ったがらくたから這い出した。
エバから受け取る。かるく、振ってみる。
鞘は発動しなかった。
「持ってこいって言ってただけだですから……とりあえずは、その通りにしたほうが」
エバはごちゃごちゃの山からゆっくりどいた。
ユノも、戸口へとさがる。




