56.エクスカリバーの鞘(さや)
・前回のあらすじです。
『エバがマーリンにいじわるされる』
「だったら……つれてってくれてもよかったじゃないですか!」
「だから都合があったんだって。ちゃんと言ったろ?」
モルガンは青い髪をかいた。またキッチンに入り、食器棚をがちゃがちゃする。
「席が足りないわね。椅子、あったかしら」
マーリンはユノたちに指を向けた。頭数を取る。
夕餉の音がする。スープと、肉のやけるにおい。
「ユノは右腕を治してほしいのよね」
ふたりの用事は、エバが目をさますまでにユノから聞いていた。
ユノはうなずく。
「納屋におあつらえ向きのアイテムをしまってたわ。イス取ってくるついでに、持ってきなさいよ」
「どんな道具ですか?」
「鞘よ。エクスカリバーの鞘」
”エクスカリバー”と聞いて、ユノはどきりとした。
マーリンはテーブルの席にもどる。聖書をめくって、くつろぎの姿勢。
「エバも行くのよ。世話になったんでしょ。ちったあ役に立ってやんなさい」
「……言われなくったって……」
「あん?」
「いいえ、なんでも」
プイッ。
エバはほっぺをふくらました。ユノが呼んで、裏口のほうへつれていく。




