5.王女
・前回のあらすじです。
『ユノの処刑が行われる』
巨大な肉切り包丁のように肉厚な、鉄の塊が振り落ちる。
ガンッ!
ギロチンの刃が硬い音をたてた。
ユノの首寸前で一本のレイピアを噛んで停止する。
カツカツ。
白いヒール。
豪奢なシルクのドレスに包まれた小ぶりな身体。
顔は薄いヴェールに隠れていて分からない。
紗幕めいたその頭飾は、ドレスの清楚さと調和して花嫁の衣装にも見えた。
「フローラさま……?」
観客席の市民がざわめく。
「第二王女さまだ」
「帰っていらしたのか」
ユノは前方からやってくる人影を見上げた。
木の枠に首がとらわれたままで、思うように動かない。
彼女――フローラと呼ばれたその人は、ユノのそばで止まった。
王城の特等席を振り仰ぐ。
「この国はいつから、救国の恩人にこのような仕打ちで報いるようになったのですか?」
「口を慎め、フローラ」
席上の王――アルトリウスは、よく通る声で少女を叱咤した。
広場の空気がどよめく。
「救国?」
「恩人?」
という単語が、そこかしこで飛び交う。
問うように――殺到する市民の眼差しに圧されるように、王は座席から立ちあがった。
ユノを視線で示し、
「その方は、我が国民を大量に手にかけた殺人者でもあるのだぞ」
「存じています」
「ならば。国法に照らし、罰を受けるのが道理だろう」
「特赦も考慮にも入れない父王に、道理を説く権利があると、本気で考えていられるのでしょうか」
「口が過ぎると言っている、フローラ」
王は手すりに前のめりになって唸った。
護衛の兵士たちがなだめようとしたが、腕を振って制す。
「その者の働きについては、私も重々わかっておる。斬首も……減刑しての措置なのだ。それが分からぬお前ではあるまい」
「死ねば同じです」
「だとしても、だ……」
王は金属質な瞳で市民を見渡した。
広場に押しかけた大衆は、壇上ではじまった親子ゲンカを固唾をのんでながめている。
国王の両脇で、第一王女は目を閉ざし、王太子もまた肩をすくめ。容喙は遠慮の体。
王は長)い息をついた。
椅子に腰をもどす。
「わからんかフローラ。ここでその者の罪を許しては、民に示しがつかぬのだ」
「では、問えばよいではありませんか」
ピッ。
と人差し指を立て、フローラは提案した。
ドレスを翻し、観客に向き直る。