49.反抗
・前回のあらすじです。
『ユノたちが、月桂樹の少女と交戦する』
ユノは走った。
横から、上から叩きつける、宝石の根に打たれながら。
「エバ……」
もんどりうって、エバの元にたどりつく。
「エバ!」
回復の魔石を鞄から取り出し、ちからを込める。
白い石はすぐに砕け散った。
魔法の光が粒子となって、エバにまとわりつく。
――光は消滅した。
エバの傷は治らない。
それは死体に回復魔法を使った時と同じ現象だった。
(……そんな)
ぼうぜんとするユノに、月桂樹の少女は攻撃をつづける。
打ちかかる貴石の根に、ユノは【気術】を放つ。
ガクン。
と体力が、根こそぎ奪われる。
カッ!
左手から、一条の閃光が奔る。
烈火の光線は、根やツタの向こうに立つ少女に直進した。
少女がなにごとかをつぶやく。
機械的な音声で。
『あたらシイ……――を、検知』
どおおおおおん!!
木が展開したバリアが、ユノの白い熱波を防ぐ。黒煙がたちのぼり、あたりが焼け野原になる。
彼女の触手は、高温の嵐に焼けおちた。
が、一言ですぐに再生する。
旋回する根が、いくつものドリルになって、ユノに飛来する。
どばっ!
にぶい音がした。
エバに覆いかぶさっていたユノは、おそるおそる、目を開く。
痛みはない。
ぱたっ……。
熱で乾いた地面に、赤いしずくが落ちる。
――自分の?
ユノは額をさわった。
……なにもない。
「ククク」
と声がした。
怒りを必死にこらえているような。圧し殺した声。
「この私の美貌に傷つけるとは。エラくなったものね。ダフネ」
女性だった。
ハスキーな、おとなの女性の声音。
ユノは顔をあげる。
長い金髪。金色の眼。身長の高い身体に、遊び好きそうな服と、学者めいた外套をまとった女が、ふたりのそばに立っていた。




