46.アルコール
・前回のあらすじです。
『エバがユノの幻覚を解く』
ユノはハッとした。ずっと眠っていたような、まだるっこさが全身にまとわりつく。
「エバ。ボク、ひょっとして寝てた?」
「すみません。時間がないので、私の質問にだけ答えてください」
薬のアルコール分で気が荒くなっているのもあって、エバは一気にまくしたてた。
勢いに押されて、ユノはうなずく。
「ユノさんは、なにか強力な魔法とか、アイテムを持ってますか。ふつうの【ジェム】の威力を遥かにしのぐような……」
「あ……。エクスカリバーっていう、伝説の武器を使ったことはあるんだけど」
「持ってるんですか!?」
「今はない、かな。セレンさんにあずけちゃって」
色めきたつエバに、ユノは冷や汗をかいて目をそらした。
がくーっ。
エバはガッカリする。
「で、でも、ボク【気術】はなんとか使えるよ。まだ本調子じゃないけど。やろうと思えば、かなりのチカラは出せると思う」
「気術……契約した妖精にもよりますよね」
「そうなのかな。【オッツの根跡】にいた妖精をおぼえてる? あのひと――セレンさんっていうんだけど、妖精の族長やってるみたいで。ボク、その人に術をもらったんだ」
「族長だったら不足はないかと……」
エバの顔に汗が浮いていた。
解呪の魔法はもう長くもたない。先ほどオブジェクトの影が見えた方角に 彼女はユノをせっついた。
「なるべく最大のちからで、【気術】を撃ってください」
うなずき、ユノは両足を踏んばって左手をまえに構える。
ふと気がついて、地面にへたりこんでいる少女におっかなびっくり問うた。
「えっと、でも大丈夫かな。誰かいたら危ないんじゃ……」
エバの魔法は切れかけていた。彼女はユノにさけぶ。
「このままだったら私たちもあぶないんですよっ。おねがいですから、はやく撃ってください!」
あわててユノは集中をはじめた。
あの、意識をにぶらせる、甘ったるい香りが鼻孔をくすぐる――。
・投稿ずみのエピソードと食い違う内容を修正しました。
修正前→『今はない、かな。こわれちゃって』
修正後→『今はない、かな。セレンさんにあずけちゃって』