34.にらめっこ
・前回のあらすじです。
『ユノがモルガンから、【魔法の薬草】と、まぎらわしい【毒草】について教えてもらう』
小さな花弁をいくつもつけた、ピンクの野草。
群生するそのなかのどれかが、【魔法】を授けてくれる薬草・【ミミル草】だという。
しかし、よく似た造形の毒草・【ルルル草】が、たくさんの花々のなかに混じっている。
ユノは考えあぐねた。
(そもそも、これが全部ミミル草ってこともあり得るんだ。……逆に、ルルル草ってことも)
洞窟のあちこちにユノは首をめぐらせる。
崖の足元や、陰にかくれた場所。
あっちこっちに同じような花が点在している。
エバもしゃがみこんで、ハーブとにらめっこしている。
「……レビテーション」
――モルガンが呪文を唱えた。
ふたりの冒険者のうしろで、彼はひとり、フワリと浮きあがり上昇する。
「あっ――」
ユノはさけんだ。
立ちあがり、頭上をおおう薄もやに消えていく少年を見上げる。
「そうだ、モルガンさんっ。飛べるなら、ボクらもつれてってくれませんか?」
モルガンは首を横に振った。ふたりに背を向けて。
「わるいな。こっちにも都合があって……。あんたらをつれて飛行を維持することは、できないんだ」
手を振って、モルガンはかすみのなかに、影のみになって遠のいていく。
彼は最後に、ユノとエバに忠告した。
「あんたらも、そこからはサッサとずらかったほうがいいぜ。モンスターがいつ戻ってくるか判らないからな」
モルガンの声が、灰色の霧の奥に溶ける。
ユノは、いつのまにか伸ばしていた手を下ろした。
薄紅の花々に視線をもどす。




