3.独房
・前回のあらすじです。
『地下牢にいるユノのもとに国王がやってくる』
「明日だな」
独房の少年にアルトリウス王は言った。
白髪のまじった頭髪に、長いが奇麗にそろえたくちヒゲ。
王国の紋章が入った赤と金糸のマントを、老齢だがガッシリとした身体にまとっていかにも王者然としている。
明日。
断頭台に上る日。
どれくらいの時間がそれまで残っているのか。
地下に放られ、お天道様から隔離されたユノには分からない。
(晩ごはんはまだだから、半日くらいは先になるのかな)
分かったところでどうにもならないが。
ユノは計算するのをやめた。
灰がかった瞳から、王がふっと厳かな光を消す。
「私としても残念なのだ。本来ならそなたを救世主として、祝勝の宴に据えるのが妥当なのだろう。しかし」
重くるしい声を王は発した。
「ドレイ商、およびその警護にあたっていた者……そのほか、討伐の任を受けた少数の冒険者」
『討伐の任』というのは、『ドレイ商を襲撃する犯罪者の討伐』のことだった。
少数の冒険者は、【冒険者ギルド】から依頼を受け、ユノの首をねらった戦士たちのことである。
「そなたが彼らを斬ったのだったな?」
ユノは無言で頷いた。
涙が出そうになった。
斬ったことに対する後悔もあったが、それよりも――
「この国でも、人身売買は違法だって聞いたことがあります。なのにどうしてドレイ商が野放しに」
「彼らが扱っていたのはヒト型の――【魔族】だろう」
遮るように王は言った。
「魔族は人間ではない」
ぴしゃりと断じられ、ユノは言葉を失くす。
「……酷だとは思うがな」
王は話を戻す。
「罪人を、そうと知りながら逃がしては、民に示しがつかんのだよ」
わかってくれ。
と王は言わなかった。
「すまない」
目を伏せて、アルトリウス王は扉の隙間を閉ざす。
カタン、とスリットの蓋が落ちた。
独房はもとの暗さを取りもどした。
・・・・・・
翌日、ユノは王城前の広場に、死刑囚として連れ出された。