21.焚き火
・前回のあらすじです。
『【キイム】という町への道すがら、ユノとエバが、魔法の話をする』
〇
魔物との戦闘が多かった。
丘陵の勾配がキツくなり、道の険しくなったころから、怪物の数は目に見えて増加した。
日が落ちかかって来たのも手伝ったのだろう。
飢えた魔性の獣や猛禽類が、疲労の滲んだユノたちに襲い掛かった。
連戦を重ねるうちに、エバの魔力が底を尽く。ユノも体力を削られ、つづく緊張に神経をすり減らした。
低い岳を越えれば、キイムの町は目と鼻の先だ。
が、無理強いはいたずらに不幸を生む。
邪な野犬や、魔の狐との戦いを終えて、二人は野宿の場を探した。
ガケに空いた空洞に、今日の寝床を定める。なかの安全を確かめ、火を焚き、夜に備えた。
怪物は火を嫌う。
生物的な本能がそうさせるのか。めらめらと燃える炎にモンスターが近づくことは少なかった。
けれど奇襲の危険はゼロではなく、ユノは夜番を買って出た。
剣を抱いて、岩壁に身体をもたれさせる。
焚火の向こうで、薄いブランケットを巻いたエバが、すうすう寝息をたてている。
残暑があるから、薄手の毛布でもまだ夜を越せるが、気温がいよいよ低くなれば耐えられないだろう。
(また色々そろえないと)
昼夜を問わずに、最近、空気に湿っぽさを感じる。
雨が来るのか。――それが過ぎれば、本格的に寒くなる匂。
ユノはエバを一瞥した。正体の知れない、彼女のことを知る術……。
「セレンさーん」
手をくちの横にあて、妖精を呼ぶ。
この世界にユノを召喚し、魔王の元まで導いた彼女なら。あるいは……。




