表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/68

17.生計


 ・前回のあらすじです。

『ユノが、パーティを組んだ少女エバに、いろいろ訊く』



「ゴミなんか(あさ)っちゃだめだよ」


 ユノはとりあえず少女に注意(ちゅうい)した。

 少女――エバは(かた)を怒らせる。


「それはゆたかな人の言い(ぶん)ですよ。こっちはそうでもして金目(かねめ)のものを探したり、物乞ものごいをするのが生計(たつき)なんですから」

「ねえ、でもキミは」


 ユノは客室(きゃくしつ)の窓から、手前(てまえ)椅子いすに移動した。

 すわってエバをのぞきこむ。


 大人(おとな)になったら、さぞや目のさめる美女(びじょ)になるだろう、きれいな面差(おもざ)し。


「賢いよね。喋りかたがしっかりしてるし、ほんも読める。ひょっとすると、誰かに(やと)われてたとか? 探せば(かか)えてもらえる、とかは」


 エバは首を横に振った。

「私はまだ子どもだし。それに【魔法使(まほうつか)い】だから」

「【魔族(まぞく)】の血がはいってるからってこと?」


 エバは微笑ほほえんだ。

 ユノは、これは訊くべきか迷ったが、結局(けっきょく)はくちにした。


両親(りょうしん)は?」

「わかりません」

「じゃあ、ひとりになる前は? キミはどこで、なにをしていたの?」


 詮索(せんさく)めいた問いかけに、ユノは自分(じぶん)自身ひるんだ。

 彼女)の、未成熟(みせいじゅく)だが確かな美貌(びぼう)にあてられたのか、相手のことがひどく気になった。


 エバは考えこむようにしてうつむく。


「それも知らないんです」

「じゃあ、記憶(きおく)喪失(そうしつ)?」


 それには(がえん)じず、エバははなした。


「さあ。気がついたら、汚い路地裏(ろじうら)にいて……その時は、」


 きょろきょろ。

 エバは入浴(にゅうよく)前まで着ていた襤褸ぼろをさがした。それは宿(やど)世話役(せわやく)がすでに回収(かいしゅう)したようで、部屋にはない。


「――あの服も、まだ普通だったんです。新品(しんぴん)ではなかったけれど」


 ユノは()を乗りだして問いただす。


「もしかしてキミは……()()()転移(てんい)してきたのかな。地球(ちきゅう)から」

「ちきゅう?」

「ボクがいたところ。エバは、例えばこっちにワープした時に、記憶きおく混乱(こんらん)しちゃったとか」


 エバはむねの前で腕を組んだ。

 気をまぎらわせるためか、彼女は分厚ぶあつほんをあけて、ぱらぱらめくる。そこに答えがあるわけでもないのに。

「……。自分のことを知るために、私はまなびに行きたいのかもしれないですね」

「適当だなあ」


 ある(しゅ)さとったように、ふっとエバはまぶたを伏せた。


魔法使(まほうつか)いとしての修業(しゅぎょう)をしているあいだに、今はわからないことも、段々わかってくるかもしれないし。すくなくとも、エバっていう名前(なまえ)は、このほんがぶつかったときに()ったから」

「そんなものなのかな」


 ユノはエバの過去への追及(ついきゅう)をやめた。


勉強べんきょうするって聞いたけど。先生の()()は立ってるの?」

「はい。学校(ガッコウ)は、おかねがないのでムリだけど。先生については、ちゃんと目星(めぼし)をつけてます」


 むらさき色の(ひとみ)に、興奮の輝きをともすエバに、ユノは「ちゃっかりしてるなあ」と言った。


「その人のんでる場所(ばしょ)もわかってるので。あとは、たのみこむだけ」

「うまくいくといいね」


 ぬるくなった紅茶(こうちゃ)にユノはくちをつけた。


「そう、ですね。話しには気難(きむずか)しい人って聞いてますから……。有名人(ゆうめいじん)なんです。『選定の剣(カルブリヌス)』や『神託(しんたく)銅板(どうばん)』を作った人で」


 カルブリヌスも神託(しんたく)銅板(どうばん)も、ペンドラゴン王家(おうけ)が所有・保管(ほかん)する宝だった。

 ユノが『勇者(ゆうしゃ)』として認められ、(おう)からおくり出されたのも、その国宝(こくほう)に選ばれたことによる。


(あれってちゃんと作った人がいたんだな)


 (おも)いつつ、ユノはエバの話を聞いていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ