表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/68

14.シャムシール




 ・前回のあらすじです。

冒険者ぼうけんしゃギルドで、子どもが保護者ほごしゃを求める』


 ・モブキャラクターの視点してんから始まります。



 角刈かくがりの黒いあたまを抱えて、ジョージは子どもに訊いた。


学都(がくと)なんかに行って、なにしようってんだ?」

「べんきょう」


 襤褸ぼろをまとった子どもが答える。男たちは開いたくちが(ふさ)がらない。


「学校に行ってか? 入学(にゅうがく)テストがあるって聞いたがな。難しいらしいぜ――いやおれもじつはよく知らんが」

難関なんかんみたいだぜ、ジョージ」

 仲間の(ゆみ)使いの男ヨーゼフが、よこからリーダーに助けぶねを出す。


「うちの()()()のセイランが、家庭教師(きょうし)雇って(もう)勉強したけど、四回落ちたって」

 居心地(いごこち)悪そうに、もじもじと子どもは立ちつくす。

「お願いします、おじさんたち。あのあたりに連れて行ってくれるだけで良いんです。ガッコには行けなくても……先生を見つけられれば」

「だめだ」


 間髪かんぱついれずにジョージが断り、


「けちっ」

 子どもも遠慮えんりょがなくなってブウれた。


   〇


 ギルドへの再登録がわった。


 元死刑囚(しけいしゅう)なので受け付けを拒否(きょひ)されるかと心配したが、冒険者(ぼうけんしゃ)稼業(かぎょう)は、元よりすねきずのある者が集まりやすい。


『あんた【英雄(えいゆう)】だったんだってね』


 と突っこまれはしたが、ユノが返事に困っていると、『あれ? 人違いだったのかな』と、相手(あいて)鼻白(はなじろ)んで事務的な対応にもどった。


 強さが数値(すうち)化される、ギルドのバングルを、職員に手伝ってもらって左の手首に()める。

 最初に発行されたものは破損(はそん)してしまって、受け付けの人が回収かいしゅうしていった。


 待合まちあい席の(すみ)に設置された、杯状(さかずきじょう)の大きなオブジェにユノはかう。


 神秘(しんぴ)の水を(たた)えた水鏡(みかがみ)に腕輪をかざす。

 飾りの宝石ほうせきが輝いて、中の数字(すうじ)が動いた。


 戦闘の経験が、この世界ではそのまま肉体を(きた)える。全身に(きざ)まれた戦いの記録が、神聖な水面(みなも)に照らすことで計測され、ギルドの石に(うつ)される。


 あくまで目安めやすとしての数値すうち化なので、更新はしなくても、肉体的な変化は起こっているのだが。


「おい、そこの坊主ぼうず


 ぎょっとしてユノは辺りを見回した。

 待合まちあい用の団体席に、いくつかのグループがある。


 スタンダードな木の椅子いすに掛けている三人のパーティから、曲刀きょくとう――シャムシールをベルトにした二十代(にじゅうだい)後半ほどの男が手を挙げていた。


 おそるおそるユノは自分をゆび差す。


「ボクですか?」


 ちょっとあから顔の、酒の皮袋をたずさえた男が、大きな手をもどかしそうに動かして、「来いっ!」と振った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ