13.パーティ
・前回のあらすじです。
『異世界の未来を、ユノがセレンからたくされる』
〇モブキャラクターのほうに視点がうつります。
※まちがってほかの連載小説にのせるエピソードを、こちらに掲載してしまいました。誤って投稿した分は削除ずみです。ごめいわくをおかけしてしまい、申しわけありません。
〇
【秋の月 第十七日】。
王城前広場での一件があった、次の日である。
冒険者ギルドは、朝早くから開いていた。
受け付けの職員が、クエストの貼り出しや換金の作業に追われている。
冒険者――お宝を求めて色んなところを駆けまわる、『盗掘屋』にして町の『便利屋』たる彼らは、【パーティ】を組むとき、おおまかに分けてふたつの方法をとる。
ひとつはギルドを仲介しての提携。
欲しい人材をギルドにあらかじめ伝えておき、めぼしい能力や技術――時に外見――を持った人が来たときに、最寄の事務所から連絡を受け、当人と交渉するというやり方だ。
もうひとつは、出先で見つけた逸材に、冒険者が自ら声をかけ、仲間に引き込むという方法である。
どちらも、報酬の分配やパーティ内での役割については、当事者同士で相談・決定することになっている。
冒険者ギルドはあくまで紹介を手伝うのみ。
だが――。
「【レールノザ】までくっついて行かせてほしいって?」
皮の鎧を身につけ、曲刀を腰帯にさした男が、待合い席で胴間声をあげた。
ジョージ――ベテラン冒険者チーム・【黄金の羊団】を率いるリーダーである。
パーティメンバーの弓使いや槍戦士が、「危険だなあ」とつぶやきあう。
彼らの前には襤褸をまとった子どもがいた。としは十に届くか届かないか。饐えた臭いを小さい身体から発していて、近くにいる他の戦士らが、忌まわしげに鼻を押さえている。
長い髪はぼさぼさで黝んでいるが、元は栗色だろう。顔も垢にまみれていて、ひどい体臭とあいまってしこめと錯覚しそうになるが、磨けば光る上玉だ。
朝っぱらからかるく飲酒していたせいで、男――ジョージの頭は多少ぼやけていた。が、理性を失うほどむちゃな飲み方はしないと、故郷の妻子に誓っていたので。
「よそへ行きなお嬢ちゃん。ここはガキの来るところじゃねえや」
「でも……ここくらいしか人を募れないし。ギルドでだめなら、どうやって学都のほうまで行けばいいのか」
――魔王はいなくなったとは言え、モンスターが人の住み家から消えたわけではない。
魔界との境がなくなる前に、自分たちの本来の場所へと帰ったものもいたが、住み慣れた方を第二の故郷と定め、こちら側に残った個体もいる。
現在、冒険者たちのもっぱらの仕事は、そうした『残党狩り』だった。
悪は滅び、モンスターも以前よりは大人しくなったものの、共存できるほどには世は穏かではなかった。




