演技
「雪色、かわいいね」
日がすっかり落ちて、三日月が出てきたころに俺は南萌さんと演技する。
腕を組んで二人で歩いている。
「和源さん、そ、そういう冗談はやめてくださいよ、照れてしまいます〜」
雪色は少し頰を赤色に染める。
多分演技だろう。
ちゃんと話したことは覚えているみたいだ。
「つまり、さも幸せのカップルを演じたい?」
「そうだ」
俺と南萌さんは片手にジュースを持ちながら
話していた。
「犯人はどうやら周りから見て幸せそうな人を襲ったみたいなんだ、だから警察はその関連性に気づいていないんだ、いや気づいてもありえないと否定するだろう、だからこの犯人の事件は迷宮入りが多いんだ」
「多い?」
「よく気づいたな、犯人は何件か起こす度にダイングメッセージ的なものを残す、それで警察側が意識するんだ、連続殺人犯を逮捕しないと、そんな意識が…すまん話から逸れてしまった、つまりは俺らは幸せなカップルなふりをして犯人が次に起こしそうな場所に向かい、演じる、だ」
「もし本当に犯人とあってしまったらどうするんですか?」
「それなら犯人から逃げればいい」
「逃げる?」
「ああ、犯人は簡単にいえば非リア充だ、だから襲っているんだと思う、迷惑なことに、逃げればなんとかなるはずだ」
なぜか南萌さんは考えているの顔を少し下の向ける。
そして数分後には俺の方へと向いていた。
「私はここまでなんとなく来ていますが、私の両親が亡くなったように他の人にも危害が及ぶので、北限さんのことを手伝います」
「わかった」
そうして二人は会計をしてから外に出た。
不穏な存在が聞いているのも知らずに。
ふと思い出していると南萌さんの顔が近づき小声で言う。
「誰かにつけられてはいませんか?」
そう告げられた。
確かにその通りだ、後ろの電柱から隠れて、俺たちを見ている一人の不審者がいる。
他に人がいないことから不審者が俺たちのことを狙っていることは明白だ。
「ああ、でもあの事件の犯人という可能性はあるが確定ではないからまだ様子を見るしかない」
「はい」
小声で会話して再び仲が良いカップルのふりをする。
「雪色、明日どこ行く?」
「そうですね、えっーと…」
と南萌さんがあたふたしていると後ろから走ってきている音が聞こえた。
南萌さんも危険を感じたのか逃げようとするが不審者は俺たちを抜かす。
そして少しして俺たちの前と止まり、
「話が聞きたいんですけどいいですか?」
そう聞かれた。
しかし犯人らしくはない。
「急なことですみません」
不審者は俺たちが警戒しているので被っていたフードを上げる。
「私の名前は加賀正楽と言います」
そういい、丁寧にお辞儀をしてきた。
「正楽ちゃん!?」
南萌さんは面識があるのか驚いてしまう。
つまり俺への挨拶ということか。
「俺の名前は北限和源です」
俺も挨拶をする。
南萌さんはハッとして加賀さんの方に近づき、
「北限さん、この子は私の友達であの事件を起こすような犯人ではないですよ?」
南萌さんは加賀さんのことを庇う。
別に犯人ではないと分かっている。
「大丈夫、加賀さんはありえないから」
「それは北限さんが犯人ではないからですか?」
「「は?」」
南萌さんと俺は驚く。
まずそもそも俺が犯人ならいちいち南萌さんを連れ回す意味がない。
「正楽ちゃんどういうこと?」
「まず私が聞きたい話がその事件のことなんですよ、雪色ちゃんの両親が亡くなった事件です、私はそこからとあることが気になり出してあなた、北限さんに話を聞きたいんです」
「なるほど、ここでの立ち話では長引きそうだからどこかに入ろうか」
俺はそういい、スマホを取り出して検索をかけようとするが、
「なら今の時間でも開いてる店知ってるから連ついてきて」
加賀さんがそういい歩いていく。
俺は検索することをやめ、ついていく。
「こんなところがあるんだ」
店前に着くとついつい言ってしまう。
こんなにも洒落ているカフェがあるのだと。
「ここは人の通りが少ないから、知る人ぞ知る名店だよ」
「そうですよ、私もここに来たことあるけど良かった」
南萌さんもここのカフェに来たことがあるみたいだ。
そして入ることにした。
席に案内され、メニューを頼むことにした。
「なにがいいのかな?」
俺は疑問に思う。このカフェのメニューは多くて迷う。少なくしておかないと太ってしまうから。
「がっつし食べたくないならって、飲み物だけでいいのでは?」
「そうだった」
完全になにか食う気でいたわ。
そして飲み物だけ頼んだ。