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黄昏の昊、蒼翼の鸞  【序章】


目の前に広がるのは、黄昏の空。赤い夕日が雲に映り、藍色の空に見事な色を描いている。

どこかからか、鳥の声と風に吹かれる木の葉擦れの音がした。

陽が沈みかけた黄昏時。夜の闇を一層感じる山の森の一角で、少年はソレと相対した。


「ーーー此処に迷い込むとは、生贄か、さては死にに来たのか?」


感情のこもらない、女性にしては低い声音。

傍目には、少々変わった格好をした妙齢の女性に見えた。その顔は作り物のように整って、感情のない無表情がさらに拍車をかける。もう日が暮れそうな山の中だというのにひらひらとやたらきれいな衣服をまとい、外だというのに足は素足。汚れもなく白い華奢な足首には、何やら金色の装飾品が付けられていた。肩には軽く外衣を引っ掛け、手には鮮やかな蒼い羽扇を携えている。旅芸人の舞台でもなかなか見ないであろう様相に、流石の少年も足が一歩後ろへと下がる。こんな山奥で、こんな実用的でない姿をしている意味。

そして、普通の人間にはありえない蒼く長い髪に、金色の瞳。

理屈ではなく、少年は頭で理解した。目の前にいる女性の姿をしたナニかは、人智の及ぶものではない。

人はそれを畏怖と呼ぶ。


この山は、人ならざる存在が住んでいると言われている。それこそ神仏や妖怪、神獣瑞獣凶獣などと呼ばれる存在が。人を喰らう化け物の中には、妖だけではなく神も存在する。

ひと目でいいからと少年は足を踏み入れた。よしんばいずれかの存在を目にすることができればーーーそれが瑞獣であればと願って足を踏み入れたのだ。かち、と自分の歯が噛み合わない音がした。


「まぁ、どちらでも構わないか」


少年の応えを最初から期待していない言葉に、ふわりと青い羽扇が風を孕む。

目の前にいる女性の姿をしたナニかは、神か、妖か。その中でもどのような存在なのか、少年の頭で思考がかける。何のために此処まできたのか!

少年はその場に膝をついて拱手の礼を取る。目線を逸らすことは恐ろしかったが、今回は向こうから話しかけて来たのだから大丈夫だろうと思い込む。


「あなた様は!如何様な存在であらせられますか!」


思った以上に大きな声がでた。喉は緊張と震えで調整が効かず、勢いのまま舌が回る。


「私は自身の願いのため、この山に足を踏み入れました!しかし、あなた様がどのような存在かは私には判断が尽きませぬ!しかし此処でお会いできたのも何かのご縁と思いますれば!私の話を聞いてはいただけないでしょうか!」

「悪いが興味無いな」


ばっさりと斬って捨てられた言葉に、少年は口を閉じた。勢いが半減されたものの、それでも腹に力を入れ直す。何のために此処に来たか思い出せ、自分の覚悟はそれだけか。


「お願い申し上げます!どうか・・・」

「くどい。此処は人の身で入るべき場所では無い。だが、身一つで此処まできたその覚悟だけは汲んでやろう」


その時、ふわりと柔らかい風が少年の頬を撫ぜた。これから夜に向かうというのに、柔らかく暖かな空気に驚く。再度縋ろうかとしていた口は、女性の持っている蒼い羽扇によって閉じさせられた。いつの間にか至近距離にいた女性に、少年は身を竦ませる。暖かな風に反して、黄水晶のような金色の瞳が冷徹に少年を睥睨する。

仮面のように整った美しい顔の赤い唇の口角が、くっと吊り上がったのが印象的だった。


(わたし)(ラン)ーーーそれこそ、縁があれば再び会い見えようぞ」


鸞、少年はその言葉がさすものに心当たりがあった。まさか、と思い口を開く直前に意識が飛ぶ。リィン、とどこかで澄んだ鈴の音がした気がした。




・・・


・・



・・


・・・




(ラン)とは、神霊が鳥の姿を象ったと言われている存在である。

人の世では鳳凰から鸞が生まれたとも、年を経た鳳凰が鸞になるとも言われている。もしくは同じ霊鳥が赤いと鳳凰、青いと鸞として呼び分けたという話もある。

しかし鳳凰にしろ鸞にしろいずれも瑞鳥であり、王にとっては天に賢王として認められた吉兆である。


少年が目覚めたのは、山の麓ーーー人里まであと一刻程度で辿り着けるだろう竹林の中だった。朝焼けの日の光が眩しくて、夜が明けたのだとわかる。夜明け、という事実に少年は跳ね起きた。がさがさと乾いた笹の葉の音がする。いや、自分は人ならざる存在に認めてもらうためにあの山に登ったはずだった。それが今、登っていた山から降されて麓にいる意味は。少年の頭にまさかという思いがよぎり、蒼い髪に金色の瞳の女性に会ったことを思い出す。胸元から、ひらりとナニかが落ちた。


掌に乗るほどの、小さな蒼い羽。脳裏に、あの女性の蒼い髪と羽扇の色が閃く。


(えん)があれば再び会い(まみ)えようぞ』


女性にしては低い声音で、最後に聞いた言葉が頭の中で繰り返された。それに、最後には笑みのような表情も浮かべていた。まさか猛禽類に捕捉されたわけではない、と思いたい。鸞にしろ鳳凰にしろ肉食では無いのだから。

少なくとも、少年の目的は達成できた。少年は懐の袋へ、丁寧に蒼い羽をしまう。これは無くしてはいけないと刻み込む。


少年は、有難いことだと竹林から抜け、人里へと歩みを進めた。あの鸞に見合う男にーーーこの国の将軍になる。この羽は、きっとあの山で出逢った証。自分が賢王に足りるようになれば、確かに再会できるだろう。


後に、少年は国軍に入隊し将軍となる。戦場では豪放磊落かつ、部下へは厳しくも懐も深く慕われた大将軍であった。自身が国王となることは無かったが、時の公主と恋仲となり、結婚。公主との間にもうけた娘を次期国王の后として嫁がせ、事実上の外戚となる。また、軍のトップとして国政に関わる。ともに戦場を駆け巡った皇帝との関係も良好で、その治世になくてはならない人物として歴史書に名を残す。

また、大将軍の逸話の中に少年期に崑崙山で鸞に出会っていたというものがある。実際に大将軍は懐に蒼い羽を常に携えており、再会を願っていた。大将軍の旗印は鸞に牡丹を組み合わせたものであったが故に、蒼翼の将軍と謳われる。




・・・


・・



・・


・・・




気が付いたら、異世界の女神様に「面白そうだから」と神霊の肉体に人間の魂をブチ込まれていた時の心境を述べよ。


どうやら元地球の日本産の魂とは異世界への適応・順応性が飛び抜けて高いらしい。地球の日本の神様はそうして、タイミングや魂の適性を見て異世界の神様に渡している()らしい。全て伝聞系なのは仕方ない。全て自分を作ってくれた女神様からの情報だから。

異世界の神様がなんてそんなことを?と思えば、どうやら自分の受け持っている世界への起爆剤に丁度良いとのこと。ある程度フランクに接することができ、意思疎通も可能で、器である肉体さえ用意すればおおよそ自分たちの言うことも聞いてくれる。めちゃくちゃ良いように使われてるじゃねーか、と言うのが初めて聞いた時の感想だった。ただでさえ日本人てワーカーホリックばっかなのに、死んだ後も働けとか神様は鬼か。いや神様もワーカーホリックだから人間も右にならえなのか、そうなのか。私は断固拒否したい。NOと言える日本人を主張していきたい所存。というか同僚とも言えそうな元日本人の魂たちも頑張ってくれ。異世界から異世界へ健闘を祈る。お互い逞しく生きようではないか。

ただ日本の神様もそうそう自分のところの魂は有限なのでぽいぽい譲るわけには行かない。なので希望を聞いて、該当する魂を探して、魂が渡せるタイミング(死んだ)でお渡ししてるとのこと。ぶっちゃけリクエストに該当する魂というのが見つかるまでどんだけの時間がかかるのか未知数だという。だろうなとしか言いようがない。異世界の神様達もお礼にって色々渡しているらしいが、役に立っているかどうかは不明。お礼の意味とは。日本の神様までワーカーホリックにならなくても良いと思う!神様働いてたら人間も休めないじゃん!異世界の神様から栄養ドリンク(霊薬、神薬の類)渡されたからって何してんの!というかワーカーホリック神にガソリンを渡すんじゃない!休めないじゃん!やめて差し上げろください!!!気遣い()とは!!!!


そして、私が渡された世界と言うのは、古代中国に似通ったファンタジー世界であった。


・・・正直に言おう、中国神話なんてさっぱりである。いやこの世界が地球の中国神話の世界かってわかんないからだけど。わかんないけどとりあえず自分の知ってる世界の過去ではない。異世界だって言ってたし、自分がこの世界を表現すると、古代中国っぽいファンタジー世界としか言いようがない。地理的には似通った点はあるし、名前とか文化とか食生活とか、中国っぽいな?って程度。ファンタジー?うん、神様とか神獣とか妖怪とかいる時点でファンタジーでいいと思う。ちなみに上空から見た限り日本列島は存在しなかった。この世は地獄が過ぎる。うそやん(白目)

そもそも日本の神話だって系統立ててアレコレするには話が多い。そこに持って来て日本より歴史の長い中国である。一体何回王朝が変わり、戦国乱世があったと思っている。純粋に地域を比較しても日本の何倍あろうかという国で、地域だ。それぞれに気候も風土も異なるし、土着信仰も多い。日本の妖怪だっていっぱいあるのに覚えられるか。そもそも漢字も読めない。日常で見ない使わない漢字ばっかりである。

それでも多少はマシになったと思う。一応。元人間といえど頑張ればそれなりになるもんだなぁとしみじみしてしまう。いや、むしろ百年いて覚えられないとか、頭の出来の方を疑われてしまう事態だ。それは勘弁してほしい。

ほら、一応生みの親()である女媧娘娘(ニュウァニャンニャン)に申し訳ないし。


この世界には、俗称として神域と呼ばれて言る場所がある、

いわゆる、人ならざるものが存在する場所である。そこには、神仙の類のみならず様々な妖怪、神獣が住う場所であり、人智の及ばぬ地。そもそも普通の人間にはそうそう行けないような場所である。正直青龍様とか玄武様の神域とか普通の人間には無理無理。端的に言って死ぬ。もし自力で行きたいとか言われてもとか全力で止める。命がいくつあっても足りないわ。マジでやめとけ。

そして、神域は人ならざる神々が人間界へ干渉するための門が設置されている場所である。日本で言えば神社や寺など、神様が祀られている場所が該当する。つまり、人が作れば神様が人間界に干渉することができる。

主だった場所としては、神の使いである四神の直轄地。四神は東方に青龍、南方に朱雀、北方に玄武、西方に白虎を置き、それぞれの一族としてそこに住む妖怪を統括している。

青龍様が治める東海の海の底にある竜宮城(ノンゴンチオン)。朱雀様が治める南火山(ナンフォシャン)からなる水都市(シュイドウシー)。玄武様が治める山岳地帯と大小いくつもの湖からなる北湖地帯(ベイフーディダイ)。白虎様が治める西方の砂漠とそのオアシスを囲う楽園砂漠(ラユエンシャムオ)

加えて西王母が統括する崑崙山(クンルンシャン)に、各地に存在する土地神というべき神、女神が住う地も同じく人智の及ばぬ神域である。

日本だってあちこちに神社仏閣あるし、似たようなものだろう。分社がないだけマシだ。

実体のある彼らは、周辺の民や国から信仰の対象となっていることが多い。特に朱雀様たちは気さくかつ享楽的な気性なせいか、ちょくちょく民に混じって楽しく過ごしているのだとか。フランクというかフレンドリーというか、良いのか神様的にそれで。対照的に玄武様なんて「いるの?」レベルで民に認知されていないというのに。なんとなくパリピと陰キャ感が漂うな、と思っている。言わんけど。

四神を筆頭に彼らがどうして人間界にいるのかと言えば、神域の門を守る門番だから。神の力を届けるための媒介であり、世界の均衡を守る楔の役割を与えられている。


その神域がどこに通じているかといえば、三皇五帝が治め、神々が存在する天上界(ティエンシャンジェ)

天上界の神々は、四神の治める神域を通じてその力を振るうのである。女媧娘娘(ニュウァニャンニャン)も影響力が強いため、なかなか出られないらしい。人間界の様子をみつつ、いろいろやきもきしていたそうな。その度に太皞神君(タイハオシェンジュン)に全力で止められていたらしい。グッジョブ!と内心で拍手喝采である。今後ともがんばっていただきたい。姉でも妹でも止める兄や弟は大変だと思うが、申し訳ないが自分では役に立てない自信がある。だって上司()には逆らえないでしょう!

そのため、女媧娘娘(ニュウァニャンニャン)は自分の手足として日本の神様から魂(私)を貰って、久々に作る肉体にアレコレと足したり混ぜたりして待ち構えていたそうだ。さすが元々泥から人間を作った女神様。時間が経っても昔とった杵柄は衰えてはいなかったようである。

太皞神君(タイハオシェンジュン)には哀れみの籠った眼で謝られた。畜生。


言いたいことは諸々ある。でも!だからって!これは無いと思うんだ‼︎‼︎



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