表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

企画参加作品

老ドラゴンの後継

作者: 黒イ卵

老ドラゴンは後継を探していた。


当世の竜の巣には、(メス)ばかりが産まれ、このままでは種の存続の危機だった。


良質な強い(オス)を探す。

それを目的に、世界各地を旅した。


あいにくと、条件の合うドラゴンは、ドラゴン族の棲まう範囲内には見当たらず、老ドラゴンは焦った。


仕方なく、ドラゴンが住む山と、人間が住む地の境にある、鉱山まで翼を広げた。


その地は人間たちにより、かつて訪れたドラゴンの伝説が語り継がれ、鉱山の入口には、小さなドラゴンの像が飾られていた。


「まあ! ドラゴン様だよ、ドラゴン様!」

「おおい、みんなを呼べ! 祭りだぞ!」


宝石の山と呼ばれている鉱山では、紅玉、金剛石、水晶が採れた。

ドラゴン様のお力と信じられ、崇められていたのだ。


この鉱山なら、もしや、雄がいるやもしれぬ。

期待と共に、坑道の奥へと進む老ドラゴンは、入口を塞がれたことに気が付いた。


岩を使ったらしい。

人間の力で動かせる岩など、大したことではない。

不愉快ではあったが、仲間となる雄を探すことに専念した。


宝石のある場所は、人間で言う酒に酔うような匂いに溢れ、仲間の探索は、己の目に頼るのみだ。


しばらく奥へ進むと、鱗があった。

もう間も無くであろうか。


さらに下へ下へと降りると、やがてむわりと暑くなり、過ごしやすくなった。


だんだんと増える宝石の煌めきと匂いに、酔っ払った心持ちが楽しい。

ここは随分と暮らしやすそうだと、幾らか気分も良くなってきた頃、巨きな水晶の上に、ドラゴンの幼い雄が一頭、静かに眠っていた。


傍には、割れた卵があるが、親がいない。

また、他の仲間もいない。


どういうことかと思案していると、幼い雄が目を覚ました。


「ふわぁ〜あ、よく寝た。あれ? あなただれ?」


宝石の瞳、しなやかな体躯、虹色の鱗。

雌と言っても差し支えがないほどの、美しい、雄。


種の繁栄は間違い無いと、感慨に耽ると、幼い雄は翼を広げてこう言った。


「今度はあなたが、ボクの番になるの?」



ーー鉱山に来て、三年が過ぎた。

まさか、老いらくの身が、このようなことになるとは。

宝石の山のドラゴンは、力が強く、番った相手を宝石に変える。

釣り合った相手のみが、卵を産めるのだ。


「ふふ、もうすぐだねぇ。ボク達の卵♪」


老若雌雄孕ませられる、美しいドラゴンは、蠱惑的な笑みを浮かべた。















健全な作品です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] >宝石の山と呼ばれている鉱山では、紅玉、金剛石、水晶が>採れた。 >ドラゴン様のお力と信じられ、崇められていたのだ。 岩で入り口を塞いだことといい、本能的な部分で人間たちも真実の一端に触れ…
[良い点] ぞわっと薄ら寒く煌びやかにクールですね! 卵とはほんに奥の深いものですなぁ。 くろたまさまの創作の懐も。 ありがとうございました、堪能しました!
[良い点] ドラゴンが宝石に変えられるシーンを想像して楽しくなりました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ