表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

95/405

おっさん、依頼される


「いや~巷で魔神殺しなんて噂されてるしさ――

 どんだけ厳ついおっさんなのかと思ったけど……

 めっちゃシブいし、優しそーだしで、ぶっちゃけちょータイプ♪

 まだ独身? なら、あーしと仲良くしてほしいな☆」


 清純そうな見た目に反し、かなり軽い口調と雰囲気で迫るレイナ。

 矢継ぎ早に言葉を繰り出す様はさながらの連射式弩弓のごとく。

 あまりの積極性に固まる俺に物怖じをしないのは若さ故か。

 予想外の邂逅と展開に理解が及ばずフリーズする俺。

 え~と……俺達はハイドラントの依頼で、逆さ魔城に関する事を彼の主とやらに訊きに来たんだよな?

 それが――何でこんなことになってるんだ?

 巫女装束ごしにグイグイ押し付けられる感触に思わず現実逃避。

 彫像のように固まる俺へのお喋りが止まらないレイナだったが、いち早く正気に返ったシアが絶叫を上げるや否や割って入って来る。


「ぬああああああああああああああ!

 さっきから黙って見てれば、いったい何をしてるんだよ!

 は、破廉恥過ぎでしょ!」

「――はあっ?

 何よ、あーたは」

「――ボク?

 ボクは何と……おっさんのフィアンセなのだ!」


 怪訝そうな顔をするレイナにシアはドヤ顔で左手の指輪を見せる。

 通常であれば決定的な場面。

 しかしレイナは鼻で笑うと嘲る様に胸を張る。


「で――それが何?

 何の法的根拠もない装身具じゃん。

 っていうか~たかが婚約でしょ?

 まだ結婚に至ってないし。

 なら、あーしにもチャンスがあるっしょ」

「――うえ?

 いや、そんな事は――」

「ないって言い切れる? マジで。

 だってあーしが本気で迫ったら、おっさん絶対陥落だよ?

 そもそもさ……あーた、ぶっちゃけ――ヤッた?」

「し、してない……けど」

「ほーら。

 ならまだまだ望みがあるじゃない?」

「でも、ボクとおっさんは精神的プラトニックな結びつきが――」

「はあ~?

 男の人なんて絶対エッチしたいに決まってるし。

 身体の結びつきが心の結びつきっしょ。

 実際シタ事ないと分からない事とかもいっぱいだし」

「ふ、二人で培った年月が愛を――」

「愛には貴賤も無ければ歳月もカンケーないじゃん。

 大体それって年月しか自慢できるもんが無い奴の台詞だし」

「ぷっ、ぷぎゅるるるるるるるるるるるる!!」


 ああ、ついに人語で反論出来なくなったか。

 両頬を膨らませ豚みたいに抗議の声を上げるシア。

 勝ち誇るレイナを恨みがましく睨んだ後、俺の方へ哀願の目線を投げてくる。

 俺に振るな、頼むから。

 どう答えてよいか困り果てる俺だが、助け船は意外な所からきた。


「いい加減お黙りなさい」

「ふぎゃっ!」


 ――ごすっ。

 いつの間に回り込んでいたのだろう? かなりいい感じの音を立て、レイナの頭頂部に振り下ろされるハイドラントの手刀。

 悶絶するレイナは涙目になりその場に蹲る。

 変わらず無表情なハイドラントだったが、主であるレイナの哀愁漂う姿に深々と溜息をつくと俺達に向け頭を下げる。


「我が主が大変失礼しました。

 皆様に御無礼がない様、よく言い聞かせていたのですが――

 調きょ――礼節が足らず、申し訳ございません」

 

 今――さらりと、調教って言い掛けなかったか?

 主を主とも思わぬ態度にドン引きする俺達。

 さっき言い掛けたのは主に御無礼が無いように――ではなく、主が俺達に対し御無礼をしでかさない無いように――だったとは、まったく予想が付かない。

 だがどう対応したものか。

 無言のまま流れる居たたまれない空気に――敵対関係にあるシアはともかくリアとフィーが捨て置けずフォローに入る。


「ガリウスに目を付けるとはお目が高い。

 彼は確かにいい男」

「――ええ、まったくです。

 それにレイナ様の仰ることも全面的ではないにしても正しいと思いますわ。

 やはり――人は弱い者。

 闇夜に寄り添い合う、燈火の様な温もりが欲しくなるのも当然です」

「ん。同意。

 言葉でなく行動――行為が欲しい。

 年頃の娘としては肉体を持て余す」


 ちらりちらりと、俺を見ながらレイナを励まし合う二人。

 やめろ二人とも……その言葉は俺に効く。

 ただ、いつまでもこうしてはいられまい。

 咳払いをした俺はしゃがみ込みレイナと目線を合わせると、改めて尋ねる。


「それで俺達に何の用事があるんだ?

 やはりそれは――あの逆さ魔城に関する事なのか?」


 俺の真摯な質問にレイナは頷き応じる。


「うん、そう。

 依頼したいのはまさにその事。

 この都市は本来魔城を封印する目的で建設されていたの。

 循環する精霊の力と人の清き願いでダンジョンを含む封印の強化を図りながら。

 しかしそれも――もう限界。

 ダンジョンで得られる財宝目当てで集まった人々の我欲――

 魔神共の暗躍のせいで、封印空間を乗り越え魔城が危険な域まで具現化してる。

 このままだと魔神皇が復活し精霊都市に致命的な破壊を招くのは間違いない。

 猶予は――およそ一ヶ月。

 その期間内に、地下ダンジョンと対を為す封印区間の要――

 天空ダンジョン【降魔の塔】を攻略してほしい」


 先程までのギャル口調はどこへいったのか?

 あれはそもそも俺達を謀る演技だったというのか?

 打って変わって真剣な貌をしたレイナは――畏敬さえ纏った神秘的な面差しで、無理難題を依頼してくるのだった。

 




すみません。

急な仕事が入り更新が遅れました。

お陰様でもうすぐ50万PV達成です♪

これからもよろしくお願いします。

面白いと思ったらお気に入り登録と評価もお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] シアがかわいすぎます。 新たなミッションですね。 更新ありがとうございます。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ