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おっさん、呆れられる


「にゅあああああああああああああああああああ!!」

「な、なんですの……シア?」

「どした、急に大きな声を出して」

「あの荷馬車の娘、おっさんに抱き着いた! 

 ボクだってずっと我慢してるのに……

 ズルい! ズルいよ!」

「そんなことを言われましても……」

「文句なら無自覚タラシのガリウスに言ってほしい」

「だって絶対いい匂いしてる!

 何なら一日中だって嗅いでられる!

 濃密で濃厚で甘く酸っぱい楽園の園なのに!

 ああ、羨ましい……妬ましい。

 ボクも抱き着いて堪能したいよ……(ハアハア)」

「……まだガリウス様と別れて半日も経ってないのに……

 これから先、本当に大丈夫なのかしら……」

「禁断症状?」

「でもそんな時はこれ――

 こっそり拝借したおっさんの靴下(三日もの)!

 これを嗅げば――ほらね、手の震えが止まるんだぁ~」

「もう手遅れ……ですわね」

「中毒……重度の」

「? 何でそんな可哀想な眼でボクを見るの、二人とも?

 あ、駄目だよ?

 パンツはメインだから譲ってあげないからね!?」

「いやいや、そうではなく」

「こんなのが勇者とか……この国の未来は昏い……」

「む~そういうリアだってさっき何か魔術使ってたじゃん」

「そういえば何か唱えてましたわね」

「あれは必要な処置。

 スリープの呪文をあの娘に使った」

「なんで?」

「ニット帽で隠れてるけど……特徴的な長い耳。

 さらにこの神秘的な魔力は間違いない。

 あの娘はエルフ、しかも恐らくは神代に連なるハイエルフ」

「うえ?」

「あら、本当ですの?」

「ん。確証がある。

 どういう経緯であの老爺と一緒にいるかは分からない。

 けどおっさんと絡んだら絶対面倒事になると推測。

 その為に強制的に睡眠状態にして排除した」

「ナイス対応!」

「またトラブルになるところでしたわね」

「仕方ない。

 ガリウスは自身をトラブルシューターだと自称するけど――

 どう好意的に捉えてもトラブルメイカー体質。

 こういった事はこれからも……って、ちょっとヤバい」

「あ、ボクも察知した!」

「この邪悪な気は何ですの!?」

「ま、マズいかも……

 あのエルフ幼女を狙って、遥か遠方から妖魔が狙ってきてる。

 しかもこいつは……おそらくペイルライダー!」

「――強いの?」

「あたし達三人が手を組んで何とか互角。

 パッと見はゴブリンライダーっぽいけど、その実力は蟻と竜くらい違う。

 違う地方じゃ死神とも称されるほど。

 安っぽく見えるあの大鎌に掛かれば一流冒険者ですら命が危ない」

「法力による結界を無視して侵入できるくらいですしね。

 S級……いや、規格外のEXクラスの脅威度」

「い、今からでも遅くないよ!

 おっさんを助けに行こう!」

「その必要はない」

「――ええ」

「なんで!?」

「ガリウスは強い。

 同じ前衛職のシアが一番分かってるはず」

「英雄の器ですわ」

「けど……!」

「黙って見ているのも絆の強さ。

 ほら……始まった。

 ああ、おっさん初っ端から無詠唱魔術してるし」

「いつも簡単にしてるから忘れがちですけど……

 本来は大賢者クラスの秘儀なんでしたっけ?」

「詠唱により因果を歪め自らが望む理を導くのが魔術。

 ガリウスはその原則を無視するのでなく裏道で擦り抜ける。意味不明」

「あ、出たよ必殺の魔現刃マギウスブレード

 おっさんに教えてもらってボクの魔法剣マテリアルソードの基になった絶技♪」

「一撃、でしたわね……

 災厄クラスの妖魔が……」

「基本魔術<火焔>とはいえ、一点に50もの同時発動で重ねた魔力の刃。

 局所的とはいえ焦点温度は戦術級魔術に匹敵する……」

「ホント何をやってるんだろう、おっさん。

 二重詠唱でも凄いのに同時に50だよ?

 大好きだけど相変わらずマジ既知外だね。

 ああいうとこ、密かに狂ってるな~チートだよチート」

「本人は謙遜でなく、まだまだだな俺も――

 と思ってるでしょうけど」

「何をさせても優秀なのがあの人。

 けど唯一へっぽこなのは鑑定スキル。

 きっと今のペイルライダーもゴブリンライダーと勘違いしてた。

 だからこそあたし達が介入する余地がある。

 よってこれからもこんな感じでフォローを続けたいと思う」

「賛成~」

「異議なし、ですわ」


 ヴィジョンの魔術に浮かぶおっさんの顔を肴にあーだこーだと話し合い、ボク達は改めて誓い直すのだった。

 

 

 



 日間ランキングコメディ部門15位!

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