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おっさん、信頼される

 

「おっさん……これはどう?」

「ああ、可愛いと思う」

「じゃあ――これは?」

「ああ、それも似合ってる」

「本当!? なら早速試着してみるね♪」


 もう何度めになるか分からないやり取りの後――

 満面の笑みで更衣室へ駆け込むシア。

 幸せそうなその後ろ姿を見ながら俺は思い悩む。

 ――どうしてこうなった?

 俺は事態の成り行きに思わず頭を抱えたくなるのを必死に堪えるのだった。








 お騒がせな師匠が去った後、俺達はまず冒険者ギルドへと赴いた。

 魔神の襲来と冒険者連続失踪事件の解決――何より入れ替わるように行方不明となっているメイアの情報を得る為でもある。

 魔神関連については隷属状態から解放された冒険者達が揃って証言してくれた為、すぐ信用してもらい俺達は事件解決の報酬を得た。

 S級が絡む案件でもあり、支払われた額はかなり莫大で――一年は遊んで暮らせそうな程である。

 まあ金銭を稼ぐことが主目的じゃないとはいえ、冒険を続ける上で潤沢な資金があるのは様々な選択肢を得られるので単純に嬉しい。

 気になるメイアについても存命で、偶々魔神襲来時に同席をしていた例の黄金姫一行と一緒に今は遥か北方にある魔導都市にいるのだという。

 魔神の執拗な攻勢を逃れる為の長距離転移に巻き込まれたらしい。

 幸い魔導都市にある冒険者ギルド経由で無事息災との安否連絡が付き、今は様子を見て精霊都市への転送を考慮しているとの説明を受けた。

 良かった。

 時間帯的に丁度ブッキングしてた為、万が一という事態も考えられたからな。

 ご丁寧に俺宛の伝達メッセージ届いており、何が書かれてるか訝しげに開封してみると「新しい恋見つけたかも♪」との内容だった。

 宿にいた者の話では結構恐ろしい目にあったと聞いていたのに……真剣に消息を心配した俺が馬鹿みたいだが――まあ、無事ならいいか。

 まったく……長生きするよ、あいつは。

 苦笑した俺は三人を交え今後の動きを検討した。

 やはり気になるのはもう一体この精霊都市に潜むという魔将の件だ。

 あの傲慢で陰険で疑い深い師匠を罠に掛けるという奴である。

 多少なりとも外道な手を扱う輩に違いない。

 何せよ今後とも情報が必要になるのは確かだ。

 なのでまずは二手に分かれ情報を収集する事になった。

 個別撃破される危険性を考慮し時間帯に応じ俺と誰か、残った二人でペアを組むという方式である。

 まず俺とシアがペアを組み盗賊ギルドへ。

 リアとフィーがペアを組み神殿へ赴く事になったのだが……

 ここで話は冒頭に繋がる。

 精霊都市の情報機関、盗賊ギルドにアクセスするのは大変面倒くさい。

 アクセスする方法は冒険者ギルドへのコネを使い教えてもらったが、その方法が篩っている。特定の店で買い物後、合言葉が必要らしい。

 なので俺達は今週の指定場所である服飾店に足を運んだのだが……

 こういったところに縁がないと思われたシアが何故か一番やる気を出した。

 次々と服を着替えて見せては俺に感想を窺いにくるシア。

 眼福だがなんか違う気がする。


「あれ? あれ?」


 そんな事を考えていると更衣室からシアの困った声がする。

 不思議に思った俺は尋ねてみた。


「どうした、シア?」

「ちょっと……

 う~んおっさん、お願いがあるんだけど」

「何だ?」

「少し手伝ってくれない?」

「ああ、構わないぞ」

「じゃあ……入って?」

「――えっ?」


 更衣室から伸ばされた手に、俺は強引に招き入れられる。

 そこにいたのは服をはだけた半裸のシアだった。

 暑い陽気のせいか、汗ばむ全身に恥じらいに潤む双眸。

 個室で二人きりというインモラルな雰囲気が俺を焦らせる。


「な、何を――」

「しー! 駄目だよ、おっさん!

 更衣室では静かに!」

「あ、ああ……すまん。

 ――しかしどうしたんだ、シア。そんな恰好で」

「胸のチャックがきつくて――喰い込んじゃったみたい。

 角度的にも視えないし……

 このまま強引に弄ると壊れそうなの。

 だからさ、おっさん……」

「な、何だ?」

「お願いだから――

 チャック外してくれる?」

「そ、それは……」

「お願い!

 おっさんにしか頼めないの!」

「……シアが言うなら構わないが」

「ホント!? ありがとう!」

 

 心底安堵した表情で顔を綻ばせるシア。

 全幅の信頼を寄せられているらしいが……これは責任重大だ。

 深呼吸後、俺は意を決すると震えるシアの胸元へと手を添えるのだった。







次回への引き。

良い所で終わるのが更新のコツですw

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