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おっさん、盛大に指摘


 ミコンこと【黒帝の竜骸】を無事手にした俺は、しきりに恐縮するアマルガム翁へ丁重に礼を述べた後、地上へ戻りパーティの皆が待つ王城の一室へ向かう。

 今回【封印の間】へ一人赴く事に反対はなかったが……随分と心配はされた。

 確かに賢王の采配とはいえ、歴代継承者以外はリタイヤ者が続出した悪名名高き伝説級の武具である。

 俺ならやれると信頼してくれるとはいえ、気持ちは別物なのだろう。

 早く無事な姿を見せてやらないとな。

 この【黒帝の竜骸】を身に纏った姿を見たらあいつらは驚いてくれるだろうか?

 そして何より紹介してやりたい者もいる。

 俺は小動物よろしく俺の服の袖を摘まんで後ろを歩むミコンを振り返る。

 心細そうに俯いていたミコンだが、俺の顔を見ると可愛らしく小首を傾げる。

 極上の絹の様にサラリと流れる黒髪から覗く、幼少期特有の未完成な美貌。

 爬虫類の鋭さを残した黒曜石のごとき双眸は、見る者全てを魅了してやまない。

 うむ、可愛い。

 可愛いが過ぎる。

 控室に向かう通路をこうして共に歩んでいるが――出会う者が皆ミコンの容姿に驚き惹かれ、振り返ったりアレは誰だと議論し合っているのが愉快である。

 愛娘が出来たらこんな感じなのだろうか?

 早く紹介してお披露目してやりたいという欲求が昂る。

 ちなみに自由に自分自身の姿を投影できるらしいが――

 全裸はさすがに精神衛生上よろしくないのと、俺の社会的な死が確定するので嫌がるミコンを説き伏せ衣服を具現化して貰った。

 自前の鱗がある龍にとって衣服を着るという習慣はなかったらしく、不承不承であるが過去の所有者である大召喚術師ユーナティアのローブを真似したというその姿は彼女によく似合っていた。

 普段は騎士の詰め所にも使われているという控室が近付くと、深呼吸を一つ。

 不安そうに見上げてくるミコンへ安心させるように笑顔を向ける。

 道中自分には仲間がおり、皆にミコンを紹介したい旨は説明し了承を得ている。


「心配するな、皆いいやつだからさ」

「うん……でも不安。

 私、ずっと独りぼっちだったから」

「なんだ、世界を支えし龍の端くれなのにコミュ障なのか?」

「だてに引き篭もりはやってないもの。

 数千年の間に知り合えた人は……2人、しかいないから」

「うっ、それはツッコミ辛いな」

「邪神の脅威にでも立ち向かう方がまだ気が楽。

 実はさっきから足が震えているの……誰かと接するのって怖い」

「う~ん……俺には共感し辛い悩みだからな。

 なんともアドバイスがし辛い」

「そうなの?」

「ああ。

 初対面の相手でもすぐ仲良くなれるというのが俺の数ある特技の一つだ」

「なるほど……それで。

 きっと女性にも物怖じしないのね、ガリウスは(ふん)」

「ん~まあな」

「なら――私もタラシこまれたのね、きっと。

 貴方にとってはまるで赤子の手をひねるみたいに簡単だったのかしら」

「人聞きの悪い事を言うな!」

「純情で世間知らずな私を弄び手玉に――(ゴクリ)

 ガリウス、恐ろしい人……」

「ミコンの中の俺はどういった立ち位置なんだ、おい。

 ただ俺は人間関係に恵まれているだけだ!」

「ねえ、ガリウス」

「な、なんだ?」

「ガリウスって……リア充だったのね」

「いきなり何の話だ!」

「さっき聞いたパーティの娘達との事。

 婚約者が3人?」

「いや、それは縁があって――」

「リア充は死ねばいいのに」

「さりげなくどころかストレートに毒舌だな!」

「あ、過ぎ去った心の闇が目覚めそう。

 暗黒龍だった過去が私を苛ます――」

「随分と都合の良い発作だな!

 あの悲愴感ぶったキャラはどこへいった!?」

「嘘々。

 ガリウスはちゃんと私を救ってくれたもの。

 恩義は忘れないし感謝してる。けど――」

「けど?」

「モテモテ(死語)ね」

「な、何が言いたいんだよ?」

「ん~私も加入した方がいいのかな、って」

「あん?」

「ガリウスのハーレムファミリー」

「そんなもんを結成した覚えはない!」

「……え?」

「なんだ、その意外そうな声は」

「でもさっきから通り過ぎる人が「またハーレムの一員かよ」「〇ね」「モゲろ」って吐き捨てているから……そうなのかな、って。悪意には敏感なの、私」

「それは単にやっかみがてら、陰口を叩いているだけだ!

 俺自身はハーレムなんて興味ない! 本当だぞ?」

「ガリウス」

「何だ」

「残念だけど――説得力がないと思う」

「……多少は自覚している」

「あと――もう一つ」

「何だ?」

「マルチエンドとはいえ早く本命を決めないと、ルート攻略出来なくなる。

 これだけヒロインがいると好感度が下がりやすいわ」

「だから何で龍と云う神秘的な存在の癖にそんなに俗物的なんだ、お前!?

 っていうか、そんな知識どこから仕入れた!?

 本当に引き篭もりだったんだろうな、ミコン?!」

「全部父(創造主)からの受け売り」

「俺はお前の父というか、創造主とやらに俄然興味が沸いて来たよ……」

「ん――もういないの。

 遥か昔に――死んでしまった」

「あっ……すまない。

 言い辛い事だったよな。

 なのに俺は無神経にズケズケと……」

「他世界との交流会時、女神にお酌された際にテンション上がり過ぎて倒れたの。

 ミニスカメイド服の膝枕オプションが心臓にキタらしい、と後に判明したけど」

「さっさと殺しとけ、その老害!

 っていうか、何故に女神がメイド服!?

 他の世界なのにあるのか!?」

「メイドの存在は数多ある世界全てに共通らしいわ。

 私の前の所有者、ユナも熱く語ってた。

 この世界にも絶対普及させるって」

「確かに大召喚術師ユーナティアがこの世界にメイド喫茶を普及させたという噂を聞いたことがあるが……本当だったのかよ。

 この世界の行く末がマジで心配になってきた」


 魔神や悪魔は別世界からの侵略者だ。

 ミコンの言葉が真実なら奴等の世界にもメイドがいるのか?

 フリフリのメイド服を来たグレーターデーモンが愛想笑いを浮かべお辞儀する姿を想像し掛けた俺は考えるのを即座に止めた。


「まっ……戯言はこの辺にしておいて、だ。

 ――あいつらのいる部屋に着いたんだが、心の準備はいいか?」

「ええ。

 ガリウスとの雑談で震えはもう止まったみたい……ありがとう」

「ああ、いいな。

 ごめんなさいより――そうやって、ありがとうを言えるのは凄くいい。

 んじゃ、開けるぞ」

「うん、頑張る」


 フンス、と鼻息荒く拳を握るミコンを微笑ましく見守りながら――

 俺はノックに対する喜びに満ちた返答を待って扉を開けるのだった。








 国レベルで周知されていくガリウスのロリコン疑惑!

 やめて、ミコン!

 裸ローブというマニアックな服装がバレたら、もう言い訳出来なくなるんだから!


 次回、「おっさん死す(社会的に)」。デュエルスタンバイ!


 感想欄から頂きましたw

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― 新着の感想 ―
[一言] メイドな女神に冥土送りにされたんか(明後日の方を見ながら ゴシップ記事な新聞とかでロリコン疑惑広まっちゃうな 服を着る様に要求したことを 「ガリウス、幼女に趣味を押し付ける」とか 幼女を加…
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