おっさん、出番なし
「アレクシア・ライオット15歳です!
ボクの目標は、英雄になる事です!
だからクエストの依頼をください!」
カウンターに身を乗り出しながらボクは元気よく告げる。
その勢いに押されたのか、受付のおねーさんは驚いたように身を引く。
周囲に並んでいる人達も何故かドン引きしている。
実は14歳なのに年齢詐称してるのがバレた訳じゃないらしいけど……
いけないいけない。
やる気ばかりじゃ駄目だね。
礼儀正しいとこもアピールして見せないと。
ボクは慌てて身体を元に戻すと、きちんとアタマを下げ様子を窺う。
困ったような顔をしていた受付のおねーさんだったが、ボクに何かを確認するかのように優しく声を掛けてきてくれる。
「え~っと、アレクシア様?」
「アレクでいいですよ」
「ではアレク様……
まず、ここがどういったところなのか――ご存知ですか?」
「はい、冒険者ギルドです!」
「ちゃんと認識なされてるのですね?
それならば良いのですが……
ここは言うなれば仕事の斡旋所。
その為にはギルドに所属して頂かないと」
「あ、有名なライセンス取得ですね!
はい、どうすればいいんですか?」
「簡単な審査の後、銀貨5枚で発行できますが……」
「ええええええええええ!
お、お金が掛かるんですか!?」
「はい――
冷やかし防止の為の規定でして……申し訳ございません」
「うう……困ったなぁ。
ボク、田舎から出てきたばかりでそんなにお金がないんです」
裕福でない田舎の農家出身のボク。
ギルドのあるこの街に来るのだって、一生懸命バイトして貯めたお小遣いをやりくりして来たのだ。
ライセンスの発行代金は高価でないとはいえ、余分なお金はない。
どうしよう……こんなはずじゃ……
スタートダッシュから躓き困り果ててしまう。
そんなボクを見兼ねたのか、受付のおねーさんが助け舟を出してくれた。
「そうですか……
再度確認しますが、アレク様は金銭に余裕がないのですね?」
「うう、その通りですぅ……」
「なら――
一つ、提案がありますけど」
「――え? 何々?」
「ここに未消化の依頼があるんですが……
これをお手伝いしてくれたら――
特別に、今回の発行費用は免除します」
「――やりますやります!!
やった~嬉しいな~♪
どんな依頼?
ドラゴン退治!? 悪い魔法使いを成敗する!?」
「いいえ――
街路脇のドブさらいです」
「……えっ?」
「街の皆様が困っており、領主様が出された依頼なのですけど……
苦労する割に報酬が安いと不評な依頼でして――誰もやってくれません。
ギルドとしても困ったものなので……
是非、アレク様にお願いしたいのですが」
「そ、それは……」
「まさか未来の英雄ともあろう御方が――
苦しむ衆生の願いを無碍にされる訳はございませんよね?」
――笑顔の圧力。
受付のおねーさんが放つ謎の迫力に、ボクは首をガクガクさせ頷くのだった。
いつも応援ありがとうございます!
本日も日刊ランキングコメディー部門2位になりました!
感想も頂いたので、これからも頑張って更新していきますね。
さて三人娘の大取り、アレクシア。
彼女は果たしておっさんとどんな出会いをするのか?(今回出番なしですが)
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