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おっさん、号泣される


「いや、何ていうか……

 皆、成長著しいな」

「うん、ボクもびっくりだよ」

「ん。ちょっと引く」

「いかに天空ダンジョンが高難度ダンジョンだったかが窺えますわね」

「わん!」


 俺が思わず洩らした言葉に一同は深く頷く。

 通常レベルというものは長い月日をかけて上昇していくものだ。

 妖魔などを討伐し得られる経験値や依頼の解決という名の業。

 これは魔力の様に自動的に心身に蓄積され存在の位階を引き上げる。

 つまりより強靭な存在へと自身を昇華させていくこと。

 これこそがレベルアップの正体だ。

 目標に対する困難の解消という、自身の物差しに依存する部分は確かにある。

 冒険者ギルドが各レベル帯に応じて依頼を振るのも無茶をさせない為だ。

 遥か格上に挑み続ける方がレベルは上がりやすい。

 だがそれでは毎回生き残れるか分からなくなってしまう。

 推奨されない方法として、高レベル冒険者の探索に同行し強引に止めを刺す事でレベルアップを図るという寄生と呼ばれるものがある。

 これは容易にレベルが上がるが、見てくれだけで中身(経験や技量)の伴わない冒険者となるのでお勧めはされていない。

 生死を懸けた実戦に置いて覚悟の無い者は役に立たないからだ。

 しかしそれ以外の通常の方法を取った場合、レベルアップのアベレージは適正な狩場で鍛錬し数週間で一つ上がれば良い方だ。

 20年近い年月を掛けて鍛えてきて、やっと届く頂きがおよそ80なのである。

 大概の冒険者はそこまで至らず死ぬか引退する。

 無常だがこれが世の常だ。

 俺の様にベテランの域まで生き残れるのは慎重か臆病、あるいはどちらもだ。

 シア達を鍛え上げるのに俺が効率さと秤に掛けた部分がそれである。

 素直なこいつらは厳しく細かい俺の指導に文句ひとつ言う事なく精進し、最速で上り詰めてきた。

 俺と違い才能に恵まれた三人の成長は年長者として伴侶として嬉しいものだ。

 さあ、まずは毎回時間があればやっているパーティ間の総評だ。

 個人のレベルアップを突っつき回すとしよう。


「それじゃ恒例のやつをいくか」

「は~い」

「ん。返事の良いシアからいっとく?」

「構いませんわ」

「あ、じゃあルゥもセットでね」

「わん!」

「鑑定スキルや冒険者証による簡易表示じゃない、スキル欄も含めた冒険者ギルド測定による全表示は久々だな。

 うっし。じゃあ再度皆で見ていくぞ」 



ネーム:アレクシア・ライオット

レベル:39⇒51

ランク:AAダブルAAAトリプル

クラス:勇者

称 号:魔剣使い 飛竜を屠る者 希望の担い手

身 長:158

体 重:56

ステ表:筋力B 体力B 魔力B 

    敏捷S 器用A 精神C  

装 備:魔杖刀<紅夜>(発動体・術式威力増強)

    騎士剣ナイトロア(体力値と頑強値30%上昇 恐怖耐性)

    真魔銀の鎖帷子(軽量化・防護強化付与済み)

    勇者用霊装衣(全耐性付与済み)

    従魔の腕輪【2】(契約妖魔:フェンリル)

スキル:魔法剣(属性剣術:マスター)

    全魔術(前衛戦闘型:アデプト)

    汎用型勇者セット(直観、瞬発、持久、韋駄天、堅牢、疾走等々)

加 護:光明神(旧神:アスラマズヴァー)全能力向上・異能生存体・魔王相克

    光精霊(上位:アラマズド)光学迷彩・回避率向上



「相変わらずバランスの良い成長だな、シアは。

 特に敏捷さが増したのがポイントだ。

 瞬間最大火力持ちが迅速で動けるのはパーティの生存率向上に繋がる」

「ん。やはり加護が大きい。

 勇者としてシアが契約した光明神は古くから【全てを見守りしもの】として名を馳せた存在。低レベル帯なのに全能力にブーストが掛かっている」

「今回得た精霊の影響も大きいですわ。

 光学迷彩により常にシアの存在に気を張らねばならない相手には憐みすら感じてしまいますもの」

「姿なき勇者。相手により魔法剣で弱点属性対応も出来るのがシアの強みだな。

 ご先祖様の遺した遺産も前衛にしては華奢なシアの弱点を上手く補ってる」

「おっさんが守ってくれた剣だもの。

 これからも大事に使っていくよ。

 あとボク個人としては従魔の腕輪のスロットが余ってるのが楽しみ。

 次はどんな子が仲間になるんだろう。

 ルゥみたいに素直で良い子だといいんだけどね」

「わん!」

「そうだな。

 堅牢なタンク不足とはいえ、回避盾として前衛を張れるルゥの存在は今後影響が大きい。新しく参入したカエデと共に新しいパーティのスタイルを探っていく事になるだろうな。じゃあ次はルゥだ」

「わん!」



ネーム:ルゥ・ライオット

レベル:1⇒25

クラス:魔狼 フェンリル

ステ表:筋力B 体力B 魔力C 

    敏捷A 器用C 精神C

特技欄:【天候操作】L2 周囲の気象を自在に操る(レベルに準ずる)

    【咆哮】  L3 精神以下のステータスを持つ存在に委縮を付与

    【噛み付き】L5 噛み付き攻撃の際、筋力値を一段階上げる

    【鋭爪】  L5 爪による攻撃の際、レベル分の装甲値を無視

    【剛毛】  L5 強靭な体毛により刺突ダメージ以外を軽減する

    【人化】  L2 人型への変化。高レベル帯になると尻尾と耳も人に

    【眷族召喚】L1 自身が属するレベル以下の眷族を任意召喚



「まだ幼生体だというのに……ルゥの成長幅は凄まじいな」

「もはやAクラス前衛に匹敵」

「スキルも順調に伸びてますしね」

「さすがは元階層主、ということか。

 戦闘に関しては固有スキル【眷族召喚】を覚えたのが一番の朗報だな。

 これは今後大きな波紋を投じる事間違いなし、だ」

「えへへ~そうでしょそうでしょう?

 もっと褒めて褒めて♪」

「わんわん!」

「何でルゥはともかくシアも嬉しそうなんだ。

 まあ、いい。次はフィーの出番だな」

「はい」



ネーム:フィーナ・ヴァレンシュア

レベル:65⇒73

ランク:AAAトリプル

クラス:聖女

称 号:慈愛を齎す者 主神の寵愛児 憂鬱の貴腐人 

身 長:166

体 重:49

ステ表:筋力D 体力B 魔力B 

    敏捷A 器用A 精神SS

装 備:銀冠スィルベンズ(視界範囲対象者への遠隔法術)

    洗礼儀礼済結界衣(軽量化・防護強化、対神的防御付与済み)

    想像神の御心聖印(不死者や世界外の害意に効果倍増・精神回復中位)

スキル:シャスティア流法術(法術:マスター)

    シャスティア流体術(護身:アデプト)

    汎用型聖女セット(説法、慈愛、浄化、常時回復、腐思考回路等々)

加 護:想像神(旧神:シャスティア)創造神の残滓 対異界防御 法術補助

    闇精霊(上位:エレニュクス)最上位精神防御



「レベル帯の伸び幅でいったらフィーが一番じゃないか?」

「ん。迷宮主への対応が魂に響いたのだと推測。

 甘美なる夢、離れがたい微睡みへの誘い。

 闇精霊の加護である最上位精神防御が無ければおそらく詰んでた」

「うん、同感。

 今回のMVPは間違いなくフィーだったと思う」

「わう~ん」

「あら、嬉しいです。

 でもわたくしが皆さんのお役に立てたのなら何より幸いですの」

「銀冠スィルベンズにより遠隔で法術発動可能になったのも戦術幅が広がった。

 元々創造神の残滓である想像神……人々の願いと希望が集まったかの神の加護を受けるフィーは対異界防御、法術補助に優れてるしな。

 そういえば以前から気になっていたんだが、称号の憂鬱の貴腐人とは――」

「あら、知りたいんですの?(うふふ)

 良かったらガリウス様にお教えしますわ……たっぷりと」

「い、いや……

 今はまだいい(何か嫌な予感がする)。

 さ、さて。気を取り直してリアいくか」

「ん。御開帳。ばっちこ~い」


 

ネーム:ミザリア・レインフィールド

レベル:72⇒75

ランク:AAAトリプル

クラス:賢者

称 号:真理の探究者 星々の招き手 境界を越えしもの

身 長:152

体 重:45

ステ表:筋力E 体力C 魔力SS 

    敏捷B 器用A 精神B

装 備:魔杖レヴァリア(封印術式の遅延発動 解放キー【エーミッタム】)

    学院支給賢者長衣(属性耐性・防護強化付与済み)

    知識のカチューシャ(術式構築補助)

    抗魔カウンター増魔ブーストの霊石

スキル:サーフォレム学院式魔導(魔術:マスター)

    全系統魔術無条件親和(後衛戦闘型:グランドマスター)

    並行演算促進回路形成(常在型)

    汎用型術師セット(魔力増幅・範囲拡大・持続延長、高速詠唱等々)

    汎用型賢者セット(魔術障壁、精神防御、意志高揚、高速読解等々)

加 護:嵐精霊(上位:ルドゥラ)最上位行動順位



「リアに関してはステータス上は完全にS級だな。

 魔杖レヴァリアにより詠唱時間という縛りが一部解除になった今、まさしく砲台という名に相応しい火力を持つに至った感じだ」

「あら、スキル欄も忘れてません事?

 リアは確かに天才ですが努力を怠る事のない秀才でもあります」

「そうだよ、おっさん。

 才能に胡坐をかいて失敗する奴が多い中、リアは常に自己の研鑽を怠らない。

 術師と賢者のスキルを両方上げるのって凄く大変なんだから」

「ああ、そうだな。

 リアの知識と術式にはいつも助けられてる。ありがとう」

「あ、あまり真顔で言われると……その、照れる」

「ツンデレ成分、頂きましたわ!」

「わん!」

「ああもう可愛いな、リアは!

 じゃあ最後はおっさんだね」

「ああ」



ネーム:ガリウス・ノーザン

レベル:78⇒82

ランク:A⇒AAダブル

クラス:戦士

称 号:魔神殺し 闇夜の燈火 死神に滅びを告げる者

身 長:182

体 重:79

ステ表:筋力A 体力A 魔力D 

    敏捷A 器用B 精神S

装 備:樫名刀<静鋼>(概念武装:退魔効果付与)

    真魔銀の鎖帷子(軽量化・防護強化付与済み)

    毒蜥蜴の硬革鎧(耐毒・耐麻痺・硬質化・品質保持)

    汎用収納道具袋(亜空間生成・重さ100kgまで)

スキル:ノルファリア練法(剣術:マスター)

    四大基礎魔術(見習い:アプレンティス)

    銀月流魔現刃(前衛戦闘型:地仙)    

    汎用型戦士セット(直感、瞬間剛力、反射即応、身体強化、戦術等々)

    汎用型斥候セット(探索、危機感知、情報収集、観察眼、罠解除等々)

    汎用型生活セット(調理、掃除、鑑定、集中、交渉、全感覚強化等々)

    英雄の運命【○○を以て〇〇〇に至る技法】(エラー:解析不明)

加 護:天琺輪(創成:アカシックガーディアン)収納⇒創成・抑止の守護者

    炎精霊(上位:フドウエンマ)絶対耐性:炎 親和属性:炎



「やっぱりカシナートブレードを手に入れてたのが一番大きいね」

「ええ。ガリウス様の技量に付いてこられる武具。

 これにより多彩なスキルとの併用が可能になりました」

「何より今回のレベルアップでついに80を超えた。

 あとはSランク認定さえ受ければクラスチェンジの儀に挑める。

 地力は元々高いガリウス、きっと凄いジョブを授かれる筈」

「確かに一つの節目を迎えた節があるな。

 これもお前達のお陰だ。本当に感謝している」

「それはお互い様だよ、おっさん」

「ん。同感」

「ガリウス様がいなければ、わたくし達はここにいませんでした。

 その恩義もありますが……今はこうしてここにいられる互いの奇跡にわたくし達こそ感謝したいくらいです」

「うん、ボクもボクも!

 おっさんがいなかったら、ならず者に殺されてたし」

「あたしも試験合格どころか命を落としていた」

「ほらね?」

「う~ん確かにリアの言う通りだ。

 照れるな、これは」

「わんわん」

「でもおっさんが精霊の加護を得たのは大きいよね。

 溶岩を泳いで踏破した時は絶句したもの」

「ん。同意」

「名案があるからというからお任せした結果がアレですから。

 ガリウス様がいきなり脱ぎだした時は何かの精神攻撃かと焦りましたわ」

「いや妙案だと思ったんだよ、あの時は」

「他にも気になる事がある」

「何だ、リア?」

「以前も聞いたけど……何故、天琺輪の加護を持ってる?

 天琺輪は学院で学ぶところの抑止力。

 世界を恒常的に支え守ろうとする存在――人が得られる加護じゃない。

 それに前から疑っていたけど、やっぱりガリウスの収納スキルはおかしい。

 通常は重さに関係なく魔術を収納することなど不可能。

 でも幾分か制限が掛かってるとはいえガリウスはそれを可能にしている。

 この表記でも収納でなく創成とある。つまりこれは――」

「……すまない、リア。

 それはまだ――話せない」

「――そう」

「ああ、勘違いするなよ?

 俺の事は何でもお前達に話すべきだと思う。

 ただ……

 一応一族の掟があってな。

 なので――もう少し時間をくれないか?

 俺の生い立ちとか故郷の事とか。

 お前達に話してない事はまだ沢山あるからな」

「うん。

 事情があるのは分かってるから大丈夫だよ、おっさん」

「無理強いはしない。

 ガリウスが話せる様になるまで待つのが良い女というもの」

「――はい。

 わたくし達はガリウス様の過去でなく現在に惚れてますから」

「そんだけ信頼されるとくすぐったいな。

 おっさんになると涙もろくなるんだからお手柔らかに頼むぞ。

 ――ん? さっきからどうしたんだ、カエデ?

 そんな固まったままで」

「ち、チート……」

「え?」

「こんなステータス、チート過ぎでござる!

 せ、拙者の半生を懸けた鍛錬はいったいなんだったのでござるか!

 わあああああああああああああああああ!」


 俺達のステータスを見て何か感じ入る事があったのだろう。

 ペタン、と可愛らしく座り込み号泣するカエデ。

 驚く一同。

 その後カエデの情緒が落ち着くまで俺達は彼女を慰めるのだった。

 






更新お待たせしました。

2話相当の文字数なのでいつもより読み応えがあるかと思います。

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