おっさん、哀願される
「ふう……
中々キツイな」
密室空間。
熱い吐息と運動に伴う汗の芳香が漂う。
俺の前でイケメン顔を晒すウォルターが眉に皺を寄せ哀願する。
「ああ、どうかそこは慎重に。
もっと――優しくお願いできますか、ガリウス様?」
「――すまない。
慣れてないせいか、どうにも手間取って」
「いいえ、構いません。
誰しも最初は初心者なのですから。
でもこのままでは埒が明きませんね。
多少強引でも良いので――
一気に入れちゃって下さい。
私がこうやって拡張している間に」
「分かった――俺も覚悟を決める。
一気にイクぞ!」
「お願いします!」
そうして俺は――
倉庫の高棚にある隙間へと強引にパラソルを突っ込むのだった。
――ん?
はて、何だろう?
どこか遠くでフィーとカエデの絶叫とツッコミが聴こえた気がするが……
まあ、気のせいだろう。
俺とウォルターは借りてたレンタル品を収納する為に倉庫に来ている。
物品を適当に置いてくださいと言うウォルターだったが、倉庫は雑多な物で溢れかえっていた。
ある程度は区分けをされているが――重い物や高台にある物などは完全な整理が及ばないのだろう。
なので倉庫に来たついでだし棚整理を申し出たのである。
しきりに恐縮するウォルターを説き伏せ作業に取り掛かったのだが……
棚整理というのは思いの外、重労働なものだな。
これを一人で管理しているというウォルターを改めて尊敬する。
「よいっしょ、と。
こんな感じでいいか?」
「ええ、助かりました。
汗を掻かれたでしょう、ガリウス様。
ひと風呂を浴びて頂き冷たいビールでも召し上がって下さい」
「そいつは最高だな。
労働の後の一杯はまた格別だ。
しかし随分と物があったが――いったい何に使うんだ?
ガラクタ同然とはいえ中には魔導具もあったが」
「ああ、それはですね。
新しく来られた方々が毎日倉庫を使用されるので整理整頓が追い付かなかったのです。
ダンジョン探索から帰られる度に倉庫に物を置いていかれるので」
「新しい方々?」
「おや、まだご説明してませんでしたか?
ガリウス様達<気紛れ明星>の他に、もう一組当別荘を拠点として動いていらっしゃる冒険者チームがいるのですよ。
残念ながらもう一組の方々はここ以外に拠点を構えたようですが」
「そういえば伯爵から説明があったな。
信頼するA級、S級合わせて二組のパーティに依頼している、と。
ちなみに別荘にいるパーティのパーティ名を聞いても良いか?」
「勿論です。
共に組む事もあるかもしれませんからね。
その方々の名は――」
俺にそっとパーティ名を告げるウォルター。
その名称に俺は驚きを隠せない。
彼から聞いたパーティは旧知の仲だったのだ。
シア達と組む前、一時期共に組んで過ごしたこともある。
執事の仕事があるからと一礼し去っていくウォルターを見送り思案する。
そうか、あいつらがここに来てるのか。
懐かしい顔を思い浮かべながらも若干焦る俺。
リーダーを務めるあいつと俺はまさに火と油。
水と油でないとこがポイントである。
話してる内、俺にその気が無くてもいつもヒートアップさせてしまう。
過去も幾度かそれで酒場を出禁になった苦い思い出がある。
マズったな、今からでも拠点を変えるべきか。
そんな事を真剣に思い悩んでいると――
「貴様はガリウス!
何故ここにいる!?」
聞き覚えのある――凛とした声が廊下に響き渡った。
ふう、危なかった……
危うくBLタグを加える羽目になるとこでした。
恐るべきは腐の力ですね。
「深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いてるのだ」
常に意識しないと。分野が違う小説に(汗




