おっさん、守護られる
「どうですの?」
「ん。無事、村に入った。
今はガリウスの歓迎会が始まるとこっぽい」
「ふう……良かったですわ。
嬉しそうなあのお顔を見るだけで今までの苦労が忍ばれます。
やはり最終目的地はここでしたのね」
「まだ駆け出しのころに依頼で携わった村。
あたし達にとっても感慨深い」
「――ええ、本当に。
ああ、ほら見て下さいな。
あの時の子達、あんなに大きくなって!
月日が経つのは早いものですわね」
「同感。
それにおっさんが変わらず慕われているようで安心」
「この一週間、随分と難儀しましたからね……」
「街や村で渦巻く数々のトラブル処理。
妖魔軍団の大暴走。
邪神教団の暗躍劇。
御家騒動の後始末など……
細かいものを入れれば枚挙にいとまがない」
「動きづくめでしたわね……
何だか修業時代の過酷な日々を思い出します」
「……フィーのとこの神様、ホントに健全?」
「ところで!」
「遮るんだ」
「こっちの方は――何とかなりませんの?」
「肉体的にはフィーのお陰で万全。
ただ精神的には駄目。
心の芯が折れ掛かっている」
「ほら。言われてますわよ、シア。
いい加減、不貞寝から起きて下さいな」
「……おっさん」
「え?」
「おっさんに会いたい。
おっさんに抱き着きたい。
おっさんにいいこいいこしてほしい」
「……まともな会話が出来なくなってません、この娘?」
「仕方ない。
シアは重度のおっさん中毒。
禁断症状もその分酷い」
「そんなガリウス様を依存薬物みたいに……」
「ん。大丈夫。
国際法的にもおっさんは合法。脱法じゃない。
用法用量をきちんと守ればばっちりキマる」
「貴女の説明だと益々いかがわしく聞こえますわ。
それに何だか幼児退行してますし」
「それも許容範囲内に収まってる……はず」
「おっさんがね、かわいいっていってくれるの。
おっさんがね、よくやったってほめてくれるの。
シアね、だからゆうしゃーがんばれるんだ……」
「許容範囲?(ギロリ)」
「む。これはマズい。
とりあえずお薬投下。
ほい、シア。取ってこ~い」
「うきゃああああああああああああああああ!」
「……何を投げたんですの?」
「おっさんの汗だくシャツ。
宿屋に泊まった際、こっそり同じものとすり替えた。
疑われない様に複製するのは手間が掛かるのでこれしかない、レアもの」
「貴女を敵に回したくありませんわね……」
「誉め言葉と受け取っておく」
「おっさんおっさんおっさん!!(クンカクンカ)
いい匂い、いい臭いたまんな~い……って、ハッ!
ボ、ボクはいったい何を……」
「正気に返りましたか?」
「生還おめでとう。
シアはおっさん力の暗黒面に陥っていた」
「ご、ごめんね心配かけて」
「お互い様ですもの」
「あたし達が耐えきれなくなった時はシアに任せる」
「うん!
しかし――やっぱここに来たんだ」
「パーティの思い出の場所ですもの」
「辛い時に支えとなるところがあるのは幸せ。
字は似てるけど意味は反対」
「前からスローライフに興味あったもんね、おっさん。
ここだとおっさんも安全だろうし……ボク達もしばらく休養しよっか。
前に来た時、近くの山で温泉を見つけたんだ~」
「ああ、いいですわね」
「不眠ではないが不休の日々が続いた。
魂の安息の為にもリフレッシュ休暇は重要」
「じゃあ行こう。
おっさんのこれからを護る為に!」
「は~い」
「賛成。異議なし」
過酷な日々で疲弊した心を癒す為、ボク達は温泉へと向かう。
これからもおっさんに降り続けるであろうトラブルを防ぐ、活力を養う為に。
ば、馬鹿な……
まだ数値(PV)が上がるだと!?(ボンっ!)
更新するたびにドキドキさせられるのは作者冥利に尽きます。
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