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44. カロリナ、わらべ長者になっていた。

風の精霊との契約。

魔力の素養のないジクとニナが喜んだ。

生活魔法を教えれば、便利になること間違いない。

今は風の魔法が使えるだけで嬉しそうだ。


用事が終わったので風の精霊と別れて祠を出た。

コニは始終不機嫌そうだった。

納得がいかない、そんな感じだ。


「妖精族には人種を(さげず)む奴も多い。脅かして喜ぶ者もいれば、子供を攫ってい入れ替える者もいる。儂はお嬢様に付いてあちらの世界に住んでおったから人間に偏見はもっておらんつもりだ」


そう前置きを置いて聞いてきた。


「あの精霊石をどこで手にいれた?」


コニの視線がラファウに向いた。


「どこでとは?」

「人間界で精霊石はほとんど手に入らない。それを10個。どこで手に入れた。おまえは何者だ?」

「何を疑っているのかは知りません。どこで手に入れたかと言われればココです。何者かと問われれば、カロリナ様の忠実なる家来。コニさんが気に掛けておられる何者ではないでしょう。何を差しているかは知りませんが、普通の人種です」

「儂を馬鹿にするか! 普通の人が精霊石を10個も持っておらん」

「勘違いをして貰っては困ります。私が所有していた精霊石はついさきほどまで30個です。すべては聡明なカロリナ様の命で集めました」


今度はギロリとした視線でコニがカロリナを睨んだ。

もちろん、カロリナには身に覚えのない。


ここで私に振らないで!


カロリナは心の中でそう叫んだ。

だが、そこはお嬢様である。

どんな時も威厳を忘れない。

知らないことを言われても平然とし、優雅に振る舞うのが貴族らしい態度だ。


「しゃべって貰おう」

「何のことでしょう?」

「しらばくれるな」

「コニさんが怒っているわ。ラファウ、判るように説明をして上げないさい」

「畏まりました」


難しいことはラファウに押し付ける。

これに限る。


「コニさんはカロリナ様がただ食べ歩きを毎日されていると思われていたでしょう」

「それ以外にどう見えるのさ!」

「不自然さを感じさせず、気の向くまま、足の向くまま食べ歩きをしておりました。それはすべてカロリナ様の緻密な計算で行われた市場調査だったのです」


えっ~~~~、そうだったの?

カロリナは身に覚えのないことだ。

コニが焦って、カロリナを見た。

否定する訳にはいかないのでにっこりと微笑んでみせる。


「嘘だ! 信じられん。どう見ても楽しんでいた。あれが市場調査だったというのか?」

「通貨というモノが存在しません。物々交換です。品物を買って運ぶだけで多額の利益を得ることできるという情報です」

「そんな馬鹿な?」

「この装備は役に立ちました。人種である私達が妖精王に招かれた大切な客という証です。カロリナ様が派手に歩いて頂けましたので、交渉を拒絶する者はいません。そして、この世界に商人がいない」

「それがどうした?」

「これが一番大きいのです。欲しいモノを手に入れる為に欲しい商品を持っていないかを聞いていた」


そうでした!

カロリナはクゲルココの実と交換を進めるが、露店主の中には欲しいモノを持っていないか聞いてくる者が多かったのだ。

カロリナが親切にどこの露店で交換していたと教えても行こうしない。

どうやら嫌いな種族があるらしく、交渉以前に喧嘩になる。

王都で喧嘩はご法度。

感情を割り切って必要な商品を交換する商人がこの世界には存在しない。

とんがり帽子の小人族がその仲介役になっているようだった。

しかし、商人のように差益を目的としていない。

自分の用事の次いで、積極的でなかった。


「我々らが大量に物資を運ぶと重宝して貰えました」

「そんなことで精霊石が手に入る訳がない」


コニの言う通りだ。

食べ物の物々交換だけでは精霊石のような貴重なモノは手に入らない。


「露店では、火石、水石という属性石も交換されています。火系の妖精族は火石を多く持ち、水系の妖精族は水石を多く持っていました。火系の妖精族は水石1個を火石4個と、水系の妖精族は火石1個を水石20個と交換です。水系の妖精族の水石の価値の低さには驚きましたが非常に助かりました」


セーレン族は露店で魚を売っていた。

しかし、湖が近いので自分で魚を捕る種族も多く、あまり売れない。

売れないから貧乏であった。

たまには美味しいものを食べたい。

その願っている所にラファウとマズルがやってきた。


水系の妖精セーレン族は湖の上流の川に棲む種族らしい。

何でも家の外に落ちているのが水石であり、山のように存在する。

セーレン族にとってゴミのようなモノだ。


そのゴミをラファウとマズルは食糧や火・風・土・金(木)・光・闇の属性石と交換してくれる。

神様のようだ。

家に帰ってたくさんの水石を持ってきて交換してくれたと言う。

ラファウとマズルはこれを財源に多くの他の属性石を交換した。


「水石を欲しがる種族は多く、セーレン族は水石をゴミと思っていましたがそうではありません」

「当たり前だ。水石に魔力を込めると水を生み出す貴重な石だ。どこの種族でも重宝する」

「そうです。水は貴重です。ですが、水と供にいるセーレン族にとって水石は必要ありません」

「まぁ、そうだが!?」

「食糧1個と水石1個を交換して頂き助かりました」


あり得ない。

しかし、聞けば納得できる。

コニは頭が痛くなる。

このラファウはそんな単純なことで大量の水石を手に入れたのだ。


「ご記憶に残っていますか? セーレン族から魚を買われたのはカロリナ様です。そのとき、一緒に水石も買われていました。クゲルココの実1個と水石1個の交換です。もうお判りでしょう。すべてのヒントはカロリナ様が用意されていたのです」


ラファウの言っていることが半分くらいしか理解できない。

どうして交換する食糧と石が増えるの?

美味しいモノは食べるから減るでしょう?

どうして増えるかしら?

そんなカロリナは間抜けな顔で聞いていたので、コニが信じられないという顔で見ていた。

コニの観察力は正しい。


「さて、この水石ですが、種族のよって価値観は色々です。光石4個で魔法石と交換してくれる方もいれば、貴重な薬草と交換してくれた種族います。その貴重な薬草は精霊石を交換してくれる族長もおりました。たった1週間で精霊石30個、魔法石50個、各種属性石も50個以上(水石は500個以上)になりました」


胡椒袋1つで、一財産を稼いでしまった。

精霊石は人間界ではさらに貴重になる。

まるで『わらべ長者』だ。


「まさか、おまえが考えたのか?」

「いいえ! すべてカロリナ様がお命じになられたことです。王宮には珍しい商品が集まる。あそこに留まるだけで多くのモノを手に入れることができる。聡明なカロリナ様が考えられたのです」

「まさか!」


ぽん、カロリナは手を叩く、確かにラファウに命じた。


“(食事代を)どうにかならないのかしら?”


胡椒の代わりになるものを探して欲しいと願った。

カロリナが食べ歩きできる程度の額だ。

ラファウはこの市場価格を調べているカロリナを見て、まったく別のことを感じていた。


“(物価に格差があるわ! これをつかって)どうにかならないのかしら?”


物の差額を使って荒稼ぎするのはよくあることだ。

商人なら誰でもやっている。

しかもカロリナ達は魔法袋を所持していた。

これを使うと大量の物資を動かせば儲けることができる。


案内役のコニは言った。


この町には妖精の国中から物資が集まる。

カロリナ様が馬鹿な振りをして時間を稼いでいる間にできることをしなければ!

こうしてコニの苦情を余所に1週間を過ごした。

その時間を有効に使った。


「カロリナ様の名誉の為に言っておこう。カロリナ様は聡明な方だ。侮るな!」


コニは驚いた。

完全に騙されたと悟った。

騙されていません。

ラファウの妄想です。


「お嬢さん、心の中で馬鹿にしていたことを謝る。流石、妖精王が認めた方だ」

「コニさん、私こそ申し訳ありません」

「まぁ、いいさ!」

「流石、お嬢様です」

「当然よ」

「アンタって、時々聡いことをするわね」

「アザさん、アンタって誰のことかしら?」

「これは失言でした。カロリナ様」

「許しますよ。アザの口が悪いのはよく知っています」

「カロリナ様、凄いです」

「ニナ、私は凄いのではなく、ラファウやマズル兄ぃが凄いのよ」

「はい」

「俺、何も知らなくて!」

「ジクも護衛ご苦労様。とても助かったわ」

「はい」

「そして、ルドヴィクもありがとう。私の護衛という損な役目を引き受けてくれて」

「むしろ、光栄でございました」


なんとなく、流れに乗った。

見栄を張った。

知らないことで褒められるのは好きではない。

でも、馬鹿正直に話す気もない。

カロリナはちょっと嘘がバレないかドキドキだった。


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